《京丹後の民家》
明治15年に建てられました京丹後の民家の改修です。
美しく保たれた外観と前栽とが凛とした佇まいを見せるこの住まいは、南面して玄関~和室~座敷が一列に並び、その上部にはかつては養蚕に使われた2階が載っています。玄関と和室では養蚕室を支える豪壮な木材が天井にあらわしとなり、奥の座敷の床脇には見事な細工の書院障子が建てこまれていました。
一方主要な生活部分である居間食堂台所そして寝室は北側の増築下屋に配され、当初土間であった部分に床を張って設けられた食堂台所と他の生活部分とは30cmもの段差があるものでした。冬の寒さや耐震性にも不安のある住まいの改善を図るべく、改修計画は始まりました。
高齢のお母様と定年を迎えられたご夫婦は、これまでの長年の生活の作法習慣からの変貌を望まれず、動線・間取りなどはほぼ継承しつつ、改修の成果を見出していく作業となりました。
当初土間であった部分には太い差し鴨居や丸太梁が縦横に低く架け渡され、座敷と高さを揃えて床を張ることがかないません。格式高く保たれた二間続きのお座敷~和室には手を加えずそれらを上段の間とし、それ以外の日常の生活空間は防湿を施して設けた低い床のエリアとしてまとめることとしました。バリヤフリーとなった床に対して低い梁や天井を積極的に捉え、既存の高いあらわし天井などとの空間の変化や分節に活かしています。新たに加えた柱や組み込んだ建具が空間の区画の多様性に一役買っています。
既存和室との大きな段差に対しては充分な間口と奥行きの段床を設けることによって、より自然で空間的なつながりを得ました。
主要な構造木材には粘弾性のダンパーを設けて、壁によらない耐震化を図っています。
部屋の配置は変わらずとも、部屋と部屋とのつながり方の扱いによって、民家らしい大らかな繋がりの空間を取り戻しました。
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