木の温かみを感じられる工場/「ムサシ電子 板橋工場」

ムサシ電子という、国内外に9工場を持つ精密電子部品メーカーの工場です。近隣の戸建て住宅に対して、工場という大きなボリュームのため、
周辺環境に配慮した柔らかなファサード面を構成しました。
外壁材は亜鉛メッキ素地のガルバリウム波板鋼板を斜めに勾配をつけた鎧張りとし、
布をまとったような佇まいとなっています。

内部は、柱・梁・天井のH型鋼を現しとし、鉄骨造の柱のない空間とすることで、作業スペースを広く使えるようにしました。
天井からすべての作業台やコンセントなどを吊り下げ、足元は何もない完全にフリーなスペースとして、
作業に自由度をもたせるようにしています。

構造はCLTパネルと鉄骨のハイブリッド構造です。
CLTパネルが構造であり、内装材であり、重量棚であり、環境装置でもあります。
柱の座屈防止として水平力を一部負担すると共に、無機質な鉄骨フレームのインテリアに、木の温かみをもたらしています。
また、パネルの厚みを活かして、電子製品を収納する重量棚となり、
さらに、湿度のコントロールが重要な電子部品の生産現場において、木材による調湿効果が期待されます。

災害時には、工場と近くの本社に勤務する約100人の社員が、一時的にこの場所に集まることができるよう、
避難場所としての機能も持ちます。
工場という用途を周囲の住宅にも調和させ、地域の一企業が目指す、住民や住宅環境を守る一つの工場モデルです。
ここから生き生きとしたものづくりの空間が生まれることを願っています。

写真：中村絵

高池葉子建築設計事務所

高池葉子

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