愛知県豊田市に建つ、夫婦と小学生2人の子どもたちが住む家。
特徴は、内と外が移ろう通り土間と、4枚の屋根。
ご主人は、映画や音楽が趣味であり、音響空間を楽しむことができる「窓のないリビング」を望みました。窮屈な空間にならないよう、この部屋を「蔵」と呼び、趣のある空間として考え、映画鑑賞にふさわしい暗い色の左官壁で塗り込みつつ、小さな窓を一つだけ設けました。「蔵」は、土間を介してアクセスすることで、ほかのスペースとは独立させます。
設計の段階で、一番の楽しみは子どもたちとの対話でした。子どもたちから、こちらがはっとさせられるような意見が出て、その感性の鋭さに感心した。上の子は、家の中に自分の家があるような独立した空間を望み、下の子は、遊び心のある空間を望みました。子ども部屋へはテラスを介してアクセスするようにして、「子どもの家」として独立させるようにしました。これは、子どもに自立心を育ませたいというお施主様の要望です。
子ども部屋や蔵の間に挿入された通り土間の空間は、内と外が切り替わっていくことで、内と外の「間」の空間として体験でき、環境や個人のプライバシーを調整できる緩衝空間となっています。この家には、いわゆる「リビングルーム」はありませんが、大テーブルを設えたダイニングは、主婦と子どものための昼間の居場所、夜は家族の憩いの場になります。
前面に大きくせり出した庇の下の空間は、アウトドアリビングのように使うことができます。ここで餅つきやバーベキューを楽しんだり、子どもたちや飼い犬が走り回ります。4枚の屋根が寄り添う佇まいが、「個」のつながりという、この家族の形を表しています。
写真:中村絵
1. 大きな庇下のアウトドア・リビング
2. 内外を横断する通り土間
3. 木の外壁
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