大は小を兼ねるということわざがありますが、家の場合は一概に広ければいいとは言えません。
家が広ければ居住空間が増え、収納スペースを増やすことができますが、反面、固定資産税や光熱費などの維持コストが上がってしまいます。
お子さんの独立や家族の単身赴任などでライフスタイルが変化すると、今まで使っていた部屋が使われなくなってしまうことがあります。そんな時には、使わない部屋を減らす「減築」をしてみませんか?この記事では、家をダウンサイジングするリフォーム「減築」のメリットやデメリットについて紹介します。
そもそも減築って何?
リフォーム例をもとに紹介します
減築とは家をダウンサイジングするリフォームで、生活状況に合わせて、使っていない部屋を取り壊します。
子どもの独立や、家族の単身赴任、家族の構成人数が変わるなど、ライフスタイルが変わると今まで必要だった部屋が使われなくなってしまうことがあります。
部屋が余ると掃除も大変ですし、床面積が増えて固定資産税が増えてしまいます。使われなくなると部屋の痛みも激しくなるため、維持費用も高くついてしまうでしょう。これらのデメリットを回避するために、減築は効果的な手段です。
ここで減築の具体的な例として、古民家を改装した例を紹介します。この家の場合は、高齢で足腰が弱くなった家主のために家の二階部分を撤去し、平家にリフォームしています。
リフォーム後は二階に上がる階段もなくなり、バリアフリーにすることで居住性が上がったそうです。
つぎは減築をすることで、具体的にどのようなメリットが得られるのかを見ていきましょう。
減築することで得られる7つのメリット
1 固定資産税を減額できる
家にかかる固定資産税は、家の床面積が広くなるほど、税率が高くなってしまいます。減築をすれば床面積を減らすことができるので、税率も低下し、固定費を抑えることができます。減築の度合いによって節約できるお金は異なりますが、年数万円〜十数万円の費用を抑えることも可能です。
2 維持費用が安くなる
減築をすると、家の維持費用を抑えることができます。家は住んでいるうちに年々痛んでくるもの。外壁の塗装費用や、部屋の壁紙・床・壁の修繕費用は、家が広くなればなるほど高くなってしまいます。使わない部屋や二階部分を取り壊せば、不必要な修繕がいらなくなり、維持費用を抑えることができるのです。
3 光熱費が節約できる
家が狭くなると、光熱費を抑えることができます。効果がわかりやすいのが冷暖房。家が広いと空調の効率が悪くなり、その分電気代がかかってしまいます。また、照明の電気代も同様に必要になってくるでしょう。減築をして居住空間をあえて狭くすることで、光熱費を節約することができるのです。
4 家事負担(掃除など)が減る
放っておいても部屋にはホコリがつもりますし、窓ガラスも汚れていきます。掃除をした方がいいと思っていても、普段使っていない部屋の掃除は乗り気にならないものです。使わない部屋を取り壊してしまえば掃除の負担が減りますし、移動の手間も省けます。結果的に、時間の節約にもなるのです。
5 採光がよくなる可能性も
部屋を取り壊すと隣家との間隔が広まり、採光がよくなることがあります。また、二階部分を取り壊す際に、屋根に天窓をつければ光の通り道になり、部屋の中を明るく照らしてくれます。明るい部屋は照明を灯す必要がなく、光熱費の節約にもなります。
6 防犯性が上がることも
使われていない部屋に明かりを灯すことはありませんが、人の気配がない部屋は泥棒などの侵入経路として使われてしまうことがあるようです。家の面積を減らし、人目につく場所を増やすことで、防犯性を上げることができます。
7 老後の生活や介護がしやすくなる
高齢になると足腰が弱くなり、階段の昇り降りがつらくなったり、階段から転落してしまう危険性もあります。減築で二階部分を減らし、階段の昇り降りをなくせば、歳を重ねてからも快適で安心な家に住むことができるのではないでしょうか。
減築の3つのデメリット
ここまで減築のメリットを紹介してきましたが、次はデメリットを見ていきましょう。
1 工事期間中の仮住まいが必要になる
二階部分の撤去や壁を取り払う時など、大規模な減築をする場合は、工事中に住む借家やマンションが必要になります。リフォームの内容にもよりますが、その期間は3ヶ月程度。付随して発生する仮の住まいの家賃や、家財の移動費用などもデメリットと言えそうです。
2 収納が減る
減築をすると、物を収納する空間が減ってしまいます。このデメリットを回避する方法は「物を減らすこと」、そして「ロフトをつくること」が考えられます。固定資産税で床面積に数えられるのは1.5m以上の天井高を持つ場所。1.4m以下のロフトをつくってそこを収納にすれば、固定資産税を抑えつつ、収納空間を確保することができます。
3 費用がかかる
減築の一番のデメリットは、数百〜数千万円の費用がかかること。減築をすると、光熱費や税金などの維持費を大きく節約することができますが、節約を期待して減築をしてもリフォーム費用の方が高くなってしまうことも考えられます。かかる費用と、減築によって得られるメリットを天秤にかけたうえでリフォームをするようにしましょう。
減築にかかる費用はどれくらい?
先ほどリフォームの費用について少し触れましたが、その相場はどれくらいなのでしょうか?
リフォーム費用の基準となるのは、「面積」「補修の内容」「工法(鉄骨造か木造か)」など。面積が広くなり、補修の内容が多岐にわたれば費用はかさみますし、鉄骨造の場合は木造よりもコストが増します。ここに、解体した資材の撤去費用などがプラスされます。
内容によってその費用は大きく異なりますが、おおむね1000万円以上かかるパターンが多いそうです。
減築のなかには費用を抑えられるパターンもあり、平屋の一部を取り壊す場合や、二階建ての一部を取り壊す場合がこれにあたります。この時にかかる費用は500万円程度で済む場合もあるそうです。
また、リフォームが「建物の安全性を向上させるものである」と認められた場合、耐震補助金の対象となることもあります。建物の安全性を高めつつ、費用を抑えることができるので、見積もりの際に業者に相談してみてもよいでしょう。
維持費の節約や家事負担が減ることなど、多くのメリットがある減築ですが、リフォームにかかる費用は無視できません。でも、せっかくの機会なので、壁を取り払ってオープンな空間にしたり、床暖房を入れるなど、こうだったらいいな、と思っていたことを実現してみてもいいかもしれません。
いずれにしても、知識のある専門家へ相談するようにしましょう。思ってもみなかった減築のプランをもらうことができるかもしれませんよ。
Text 鈴木雅矩
ライタープロフィール
ライター・暮らしの編集者。1986年静岡県浜松市生まれ。日本大学芸術学部を卒業後、自転車日本一周やユーラシア大陸横断旅行に出かける。帰国後はライター・編集者として活動中。日本の暮らし方を再編集するウェブメディア「未来住まい方会議by YADOKARI」の元・副編集長。著書に「京都の小商い〜就職しない生き方ガイド〜(三栄書房)」。おいしい料理とビールをこよなく愛しています。