敷地は自然豊かな丘陵地にあり、建物を建てるという行為自体が環境に対して後ろめたさを感じるような場所である。この豊かな自然を、施主からの要望であるコンクリート造の建物の中にできるだけ取り込み、幸せな生活がおくれる家が創れればと考えました。
配置計画としては、高さを出来るだけ押さえた平屋とし東西に伸びる配置としています。比較的交通量の多い接道側(西側)は限りなく閉ざし、プライバシーを保護すると共に騒音や西日も遮るようにし、南側は芝張りの庭に向けて開く形を取っています。屋内の仕上げに関してはコンクリートと金属やガラスというシャープな印象の素材だけでは、本能的に人間が欲する安らぎを満たすことは出来ないと考え『木』を使用することを提案しました。家族が集うリビングは、木造とし柱・梁(構造材)を露出させ全面ガラス(南面)と吹抜空間にすることで、アプローチ&エントランスから続くクールなイメージとは違う伸びやかで温かい空間を創り出そうと考えています。コンクリート打放しの内装であっても、光がふんだんに入るこのリビングは家族に安らぎと開放感を与えています。さらにリビングから屋外へ続く木製デッキを設けることで、屋内外の境界を曖昧にし、室内に居ながらも外に居るような錯覚=自然を感じてもらえるよう意図しています。キッチン部分にはガラスブロックのトップライトを設けることで天気や時間の移り変りを感じることができ、雨の日にはユラユラと水が揺らいでいるのがわかり五感の刺激を受けることができます。この家は雨の日でも昼間は全く照明が必要ないほど明るく・開放的であり、自然の変化を存分に体感できる家になっています。