「土地探しからご一緒に」ということでお声掛けいただきました。建築家案件に特化した不動産探しをしてくれる「アラウンドアーキテクチャー」>に協力願い、2件ほど個性的な土地の紹介を受けましたが、あとちょっとのところで売買契約には至らず。3件目となるこの土地はこれまでの中でも最もユニークで、形状はうなぎの寝床のように細長いものの、南側隣地は崖下になっているため特に2階の南方向は都心部にもかかわらず大きな空が広がる…。「設計者として腕が鳴ります!」と施主に進言したところ、土地の購入を即決いただきました。
まず1階は京町家のようなシステム、土間ではありませんが「通り庭」的な長いギャラリースペースと、プライベートな個室が数珠つなぎに並びます。そのギャラリー上部は吹抜で、そこに2本のスケルトン階段が差し込まれ、立体的に回遊できる動線計画。一方2階は玄関上の北側床レベルが最も低く、南に行くにしたがって徐々にステップアップしていきますが、内部はほぼ壁が無いワンルームのため、2階のどこに居ても南側の空が望める関係。しばしば、眺めの良い一面を全開口にした住宅で、そちらに向かって間口や天井が広がっていると「メガホンハウス」という愛称で呼ばれることがありますが、この計画もその一例、ただし非常に長~いメガホンです。
もう一つの特徴は2階の勾配天井、北側の端から南側外部テラス上部まで、25m近く同一面で続きますが、この大面積を全て黒色目地底の木リブ天井としたこと。大工さんはいくら貼っても、塗装屋さんはいくら塗ってもなかなか終わりが見えない…、大変苦労されたと思いますがその甲斐あって、この住まいのアイデンティティとなるようなダイナミックな天井になったと思います。