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東京都目黒区 1963年築のRC造7階建て集合住宅の一室の改修である。

住人から愛されている様子があふれ出るたたずまいと、東西が全てバルコニーで全周隣戸と接することがないおおらかなつくりが気に入り15年程前に購入。
ペンキを塗ったり少しだけ表面的な補修をして夫婦と子ども2人で生活していたが、設備・機能の劣化や不足は年々露わになり、漏水・結露・音の問題などが安心して暮らせないレベルとなっていた。

ひとまず性能改善が最重要課題ではあったが、子どもも成長し住まいに求める感覚や利用の仕方が変化してきたこともあり、家族が暮らす住宅というよりは共同使用する場所というニュートラルなとらえ方の方が今後の暮らしには適しているとも考え、全面改修する決断をした。

性能面の問題は大方の予想はしていたが、外壁側の内装仕上げを撤去すると断熱材は一切存在せず、カビだらけの真っ黒な躯体があらわれた。排水管は錆だらけの鋼管で、かつRCスラブに打ち込まれており、うまく排水されず逆流してくる原因がよく分かる状況だった。

壁面のカビは現場監督の助けも借りながら手作業で住人自ら除去し、西側が駐車場に面し3階の住戸であることが功を奏して現場発泡ウレタンを吹き付けることができた。
排水・給水・給湯管は下階の天井内を横引きされているため、住戸内をいくら更新しても最終的にスラブに埋め込まれた下階へ降りる管につないでしまうと何の解決にもならない。
そこで上階の住人の方々に説明をし、住戸内で完結するように配管後、PS内の縦管に直接つなぐ工事を行った。

住戸は約9.5m角のほぼ正方形の平面で、柱と梁の純ラーメン構造の躯体をあらわし、中央にキッチンを含めた大きな作業台を島状につくり、作業台の周りを動線とし、隅に3つの個室とリビングとなるコーナーを配置。設備的な機能を中央に集約して血縁家族が暮らすことに限らず、また仕事の場としても今後色々な共用のかたちが可能なように計画している。

東西は柱・梁の構造体以外は全てサッシ、南北面も隣戸とは接しず、外壁+腰窓の住戸は自由度が高いが何か場の手がかりも必要だった。そこで梁の下端に高さを合わせて間仕切り壁からラワン合板を庇のように出す。この突き出た合板には建具の上レールやカーテンレールが取り付けられ、植物をぶら下げたり、置物や子どもの作品を飾ったり、収納棚としたり…全体を包括するインフラのようなものとなっっている。


用途:共同住宅
延床面積:85.25m2
構造・規模:RC造7階建ての3階部分
建物竣工:1963年
改装完工:2017年
施工:ファインアーツ
Photo:Norihito Yamauchi

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光本直人 + 濱名直子

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