事務所独立後最初の住宅。----当時の建築雑誌紹介文(新建築住宅特集) ------
家族相互のつながり方、家族と社会との関係が、その成長に従い、変化・多様化しようとしている時に、生活の器としての住宅がそれに対し、どう応えることができるのかが、この住宅の課題としてとらえた。
一般に住宅が間取りによって平面構成が決定される際、そこで実際に行われる生の生活行為との間には、何らかのズレが生じてくる。たとえ設計する時点での施主の要望を完璧に実現したとしても、限定された平面構成は家族の現実の生活からは次第に遊離されたものとなってくる、言い替えるとその建物は、完成と同時に確実に死に向かうことになる。
小学校1年生を頭にした、現在3人の子供たちにとって、皆と同じ場所で寝て、食べて、遊ぶことが、至極当然のことであり、その時の住宅は、ただ一つの大きな空間で良いであろう。一方将来の住まい方として、統計的に見た家族型の変遷に沿って、いくつかの個室を当初から設定することも可能であろうが、その瞬間に家族の顔が一挙に見えなくなってしまう。ただ現時点で計画すべきことは、将来にいくつかの細分化された部屋が要求されることを想定し、そのつながりのみを設定することと考えた。そこで次のような条件を設定し、計画を進めることとした。
1、予算内で最大限のボリュームを確保する。
2、全体構成を極力単純化する。
3、居室の機能(名前)を明確化せず、分割可能な大きな空間とする。
これらを基に、台所、浴室、納戸等の将来も機能変化がないと思われる諸室をRC造の6つの箱に振り分け、それらが規則的に並ぶ形で配置した。されにその箱を覆うように、木架構による大きく単純な屋根を設け、そこに生じた大きな空間(各24帖)を居室として利用することとした。それらの居室は、地盤面より1m持ち上げられており、床下通風を確保すると同時に、居住空間として、RC造諸室との差別化が計られている。また木架構の柱梁に沿って中央部の廊下を延長することにより、独立した個室として2〜4分割が容易にできるように計画されている。
現在すでにいくつかのスペース分割が進んでおり現在の家族にとってふさわしい形に変化しつつある。
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