11階建ての高層集合住宅の中庭、および共用部の改修である。これまでは入ることのできなかった2階部分にある中庭を、住民が利用可能な広場となるように整える。併せて、通過動線でしかなかったエントランスにベンチを新たに設け内装を更新することで、居場所を生み出し、共用部の利用価値を高めることをめざした。
その上で、マンションなどでよく使用される45二丁タイルで外壁全体が包まれている既存建物に、モノトーンで、より大判なタイルを新しい仕上げとして挿しこんだ。おおらかなスケールのタイルをあてがうことで、割り付けのリズムを変え、小さなタイル単位で一様に埋め尽くされた物静かで均質化した空間を解いてみた。大判タイルが、少しのゆとりある雰囲気をつくり、そこが僅かにでも特別な場所となるきっかけを与えてくれることを期待した。
中庭は、コの字状に囲う10層に連なる共用廊下でできた大きな吹抜けの真下にある。そこにあった3つのトップライトを覆うように、タイルとガラスでできた3つのキューブ状オブジェをつくった。ガラスの天板は吹き抜け空間の底に、反射した空を静かに映しだす。空の明るさを感じられる仕掛けが、薄暗く重い雰囲気の中庭に、ちょっとした明るさや軽やかさをもたらす。
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