都内の閑静な住宅地に建つ住まいの、1階の2部屋をつなげ、キッチンとダイニングスペースと、寝室が合わさった40㎡程のワンルームへ変える改修計画である。
部屋の3面の壁は開口部があり、その先には、隣家の庭や、手入れされた和風の庭が広がり、時間によってきれいな自然光も入り込む。この場所に対して、環境を透し、時に移ろい、定まらない揺らぎのある要素として、軽やかで、浮遊するような建築的な設えを考えた。揺らいでいるような軽さのある室内が、自由な生活や、魅力的な庭へのまなざしへと繋がる。
床や壁や天井からがっしりと固定されているのではなく、触れたら少し動き、また元の位置に戻るくらいの、そのような定着しない建築として間仕切や棚のエレメントをつくった。風を受ければ少しなびくように、建築エレメントが空間を漂う。
棚板は、通常であれば壁に控えをとり、しっかりと固定できるが、ここでは、天井からワイヤーで吊るされている。棚受け金具はなく、代わりに棚板は複数本のワイヤーで天井からぶら下がっている。パーティションも天井と床に張られたワイヤーによって宙に浮く。ピンと張ったワイヤーによってしっかりと固定されているが、ちょっと手で触れたり、風を受けると、ブルブルっと振動して、そしてまた元の定位置に戻る。
クローゼットも天井からつられている。透過性の高いカーテンは、その裏にぶら下がる洋服のシルエットを映しだすが、ハンガーパイプを支える支柱や受け金具は見当たらない。食器棚は、床との間に丸太を挟み、その丸太が支点となり、もう片方はワイヤーで吊り上げた。床と食器棚の間には100㎜程の隙間が広がる。窓に設けられた簾やカーテンも、天井側からつられている。そのように、床や壁に“固定しない”、“触れているだけ”のつくりである。
生活の変化に応じて、吊られた建築エレメントは、金具の位置を変えることができ、長期的・機能的な柔軟性がある。同時に、吊られている、という軽やかなエレメントが織りなす空間は、定着されていない浮遊感が漂う、揺らぎのある部屋である。
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