「西国街道沿いの家」は京都府向日市の西国街道にある築100年を越す
木造住宅の改修計画である。
60代夫婦2人+子ども(高校生)1人の三人家族で、
主人が絵画活動を行っているということもあり 住宅+アトリエとなる。
また、この住宅はこれまでの度重なる増築や改修行為に多くの箇所で欠陥が生じ、
住み手を悩ませていた。
それらを踏まえ三人の家族が暮らすに十分な間取りを確保した上で、
耐震補強および既存物を再編するよう進めた。
構造補強の方法として母屋の屋根を支える棟木柱、
梁を新しく設けた鉄筋コンクリートの壁と緊結し、建物全体の壁量を
確保するとともに、ベタ基礎も打設し柱脚部と緊結し地盤の安定性を確保、
時間の蓄積された力強い既存木構造に負けないRC壁は意匠と補強を両立させた。
また、既存の木構造がつくり出す空間の本質を引き継がせるよう心がけた
西国街道に面したファサードは、
左官仕上げのシンプルですっきりとした色調の外壁、
街道に沿って水平ラインに揃えた建物の軒、木製の大きな引き戸が、
和の趣を感じさせ、そして新しい京都における住宅のあり方を提案した。
内部意匠については既存の日本家屋が持つ伝統的なスケール感を壊さないよう、
そして高齢者夫婦の終の住処として精神的にも肉体的にもストレスを感じない
落ち着きのある空間をつくった。開口からはいる光と影、
既存構造・新規構造のコントラストと共存のバランスに気をつけている。
庭は解体で出た旧屋の屋根瓦をそのまま残して、庭で活用している。
この波間模様は、瓦と砂利を使って表現した。瓦の小端(側面)を
縦にして埋め込む「小端立て」という伝統的な手法を用いている。
庭の中央部に植栽したイロハモミジの根株から這い出る根が、
西国街道に向かってその姿を水の流れへと変貌させ、
昏々と折り重なりながら流れていくイメージで設計している。
古来、京から西へ行く唯一の大路で、江戸時代には参勤交代にも
利用された西国街道。ヒトやモノ、文化が往来したこの街道沿いに、
1世紀以上の歴史を刻む西国街道沿いの家。
長い間、この家を力強く支えてきた木の梁や柱は残しながら、
コンクリート壁でしっかりと補強した建物は、旧家時代の面影を偲びつつも、
新たな息吹を歴史ある街にもたらしていた
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