若い夫婦の3人家族ための住宅は、三重県三重郡菰野町にある。敷地は、北西に鈴鹿山脈を望み、東は田圃が広がるのどかな郊外の低密度な住宅地である。北面と東面が道路境界となっている。
通常はワンルームとして使用して、必要な時に空間を隔てられること、ネコと一緒に楽しく暮らせること、周辺の風景を楽しみながら心地良く暮らせること、が施主の要望であった。
この要望に対して、家族が主に生活する領域(特にリビング)を道路に面する領域が囲いこむように配置した。この領域は、1階は玄関や納戸、階段や畳室、2階には「エンガワ」と名付けたインナーテラス、子供室、ロフト階には「エンガワ」を配置した。各スペースの大小様々な開口部は、田圃や空、山脈、隣地の庭園などの風景を堪能できる。また、隣り合う室に対してもいくつもの開口部を設け、連続性のある関係を築いた。
リビングに居るとこの住宅を構成する様々なものが見え隠れする。
室内のどの場所にいるかによって、楽しめる風景が変化していくよう開口部の配置を計画した。これは一緒に住むであろうネコの生態から考察している。ネコは居心地よい場所を探しだすのが得意である。ある室の名称や機能によって生活を規定するのではなく、人もその時々で居心地の良い場所を探し出し留まっても良いのではないか?そんな場所の可能性を検討した。
特徴的な空間についていくつか説明すると、1階のキッチンの隣には吹抜のあるバックヤードがあり、食品庫と食器のディスプレイとキッチンに自然光を取り入れるための光溜まりとなっている。2階から2ヶ所のロフト階へは、家具のような階段状の棚によって上下する。
ロフト階の「エンガワ」は二方向に抜けていて、人の動き、空気の流れが循環している。
決して大きくない様々な個性をもった各室が、落ち着きを感じられる動物の住処のような場所を作り出し、それが大きなワンルームとなっている。
◯ 室内の部屋すべてから隣地の田圃の風景が見渡せる。
◯ リビングの高すぎない吹抜けを通じて、各部屋が繋がっている。
◯ 行き止まりのない間取りのため、ロフト空間でさえ光と風が抜けていく。
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