みなさんは「コリビング」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?コリビングとは、シェアハウスのように複数の人が暮らし、コワーキングスペースのようにさまざまな職業に就く人が一緒に仕事をしながら過ごせる住職一体型の施設のこと。
2010年代の後半から海外で登場したコリビングは、ニューヨークやロンドンなどで人気を集め、日本でもいくつかのコリビングが開かれるようになりました。
コミュニティと居心地を大切にするコリビングでは、連日ヨガやジョギングなどのクラスが開かれ、中には図書館や映画館などの施設が設けられている施設もあるそうです。
今回は、新しい暮らしと仕事の形を模索する施設、「コリビング」について解説します。
心地よく暮らしながら働ける、コリビング(co-living)はどんな施設?
コリビングとは、大都市の若者を中心に居住者が増えている「シェアハウス」と、フリーランスの人々が事務所スペースや会議室を共有して働く「コワーキングスペース」を一体化させた施設。
施設の中には居住者の住居となる家具が備え付けられた個室があり、共有部には仕事をおこなうワーキングスペースのほか、キッチンやリビングなど生活に必要な共同スペースが設けられています。
コリビングの特徴は、居住者同士の交流を活性化するため、共有部の施設が充実していること。キッチンは広々としていて共同作業ができますし、リビングには質のいい家具や座り心地の良いソファが設置され、とても快適に過ごすことができます。
そのほか、海外のコリビングにはスパやジムをはじめ、図書館やレストラン、映画館を設置している施設もあるとか。
シェアハウスは「住むこと」に、コワーキングスペースは「働くこと」に特化した施設ですが、コリビングは両施設のいいところを取り入れ、快適に住みながら働ける場所なのです。
シェアハウスとはどう違う?差別化のキーワードは「コミュニティ」
コリビングを理解するためのキーワードとなるのは「コミュニティ」。コリビングでは、居住者同士の横のつながりを何よりも大切にします。
先述した充実した設備はもちろんのこと、住人同士の交流を活性化するためにイベントが定期的に開催されていて、ヨガやピラティスのレッスンやジョギング会が開かれることもあるそうです。
こうしたイベントに参加する居住者同士は横のつながりを持ちはじめ、コリビング内で新しいプロジェクトやビジネスが生まれることもあるとか。
このように、共有部の設備が充実していたり、イベントがあることなどから、コリビングの家賃はシェアハウスより高めに設定されています。
気になるお家賃は、ニューヨークやサンフランシスコなどでコリビングを提供している「Common(参照:https://www.businessinsider.jp/post-100511)」の場合15万円から、コリビングの草分けと呼ばれているロンドンの「Old Oak(参照:http://www.afpbb.com/articles/-/3147356)」でも光熱費やネット通信料などを含め13万円から、と決して安くはありません。
そのため、居住者の多くは比較的高収入のアーティストや起業家、クリエイターが多いそうです。彼らはコリビングに住むことを、人脈をつくるための投資と捉えているとか。たしかに、家賃にヨガスタジオやジムの利用費が含まれ、職種もキャリアも様々な人と知り合えるとなれば、お値打ちと考える人も少なくはないのでしょう。
国内外に広まる、コリビングムーブメント
海外で生まれたコリビングは、世界的に見ればまだ大都市の一部にしか存在していない比較的新しいムーブメント。しかしながら、需要は増え続けているので、さまざまな企業がこの市場に参入しようとしています。
現在コリビングを展開しているのは、先述したCommonやOld Oakをはじめ、コワーキングスペースの大手であるWe workの子会社We Liveや、Open Door、HubHausなどの企業。ここにスタートアップとして、The CollectiveやOllieなどの新興企業が参画しています。
これらの企業のなかで、特徴のあるサービスを提供しているのが「Roam」で、月額約20万円を支払えば世界中の施設が利用可能。マイアミやバリ島、ロンドン、サンフランシスコに拠点を持ち、日本では六本木に施設を持っています。
月に約20万円と高額な家賃にはなりますが、世界中に拠点を持ち、様々な場所で暮らしながら働けるならば、魅力的だと考える人も多いのではないでしょうか。
ちなみに、もともとコリビングは、フリーランス人口の増加に伴い発生した施設です。アメリカでは2027年にかけて、2000年代に成人になる「ミレニアル世代」のフリーランス人口は47%を上回るという調査報告が発表されました(参照:http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1711/17/news023.html)。
日本でもフリーランス人口の増加により、コワーキング施設が増え、リモートワークの推奨など働き方に変化が出ています。日本にはまだ数が少ないコリビングですが、今後はシェアハウスやコワーキングスペースと同様、一般的な住まいとして認知されていくのかもしれません。
Text 鈴木雅矩
ライタープロフィール
ライター・暮らしの編集者。1986年静岡県浜松市生まれ。日本大学芸術学部を卒業後、自転車日本一周やユーラシア大陸横断旅行に出かける。帰国後はライター・編集者として活動中。日本の暮らし方を再編集するウェブメディア「未来住まい方会議by YADOKARI」の元・副編集長。著書に「京都の小商い〜就職しない生き方ガイド〜(三栄書房)」。おいしい料理とビールをこよなく愛しています。