横山秀夫の小説「ノースライト」。主人公建築家の最高傑作となる北の光を取り込んだ住宅を中心に、ドイツ人建築家ブルーノ・タウトの存在を絡めながら展開される極めて美しいミステリーである。この小説を調度読み終えた頃、ひょんなことからご主人がドイツ人の家を設計することになった。敷地は神戸港内にある人工島、六甲アイランド。約25年前に出来た分譲地の西端の一画にある。西以外の3方は住宅やマンションに囲われた環境ではあるものの、西側には高さ15mにも届きそうなヤシの木が集まった公園があった。ここでは開放的で光や緑に包まれた空間に住みたいご主人のご要望を踏まえ、住空間と西の公園が一体となり、日々の生活の中で公園の風景が感じられるよう、西へ最大限開く住宅を計画した。一方で優しいノースライトと違い夏の西日は対策が必要である。そこで大開口の窓に対応し、通風を確保しつつ日射を8割カット出来るドイツ製の外付ブラインドを設置することで、生活の中心となるLDKや、ヤシの木を取込むための吹抜けを西に配置するプランとした。そして、この吹抜けと2階の主寝室や書斎がガラスで繋がることで、視線が遠くまで抜け、水平の広がりが生まれるようにしている。また、ご主人がドイツで愛用していた家電を日本でもストレスなく使えるようドイツコンセントを輸入し、電圧を変える大容量トランスをバックヤードにまとめて隠す配線工事を行ったり、ドイツで購入した扉や洗面台を一部採用したり、日本とドイツの仕様が融合した建築となった。言葉や文化に違いはあっても、設計者、施工者、クライアントの想いが一つになって生まれた、結晶としての住宅である。
西の公園と住空間が一体化した建築
日射を8割カット出来る外付電動ブラインドを採用
食事も出来る電動オーニング付きのルーフバルコニー
西にある公園と住空間を繋げたいけれど、西日対策は必須でした。そのため8割日射をカット出来る外付電動ブラインドを輸入して設置しています。施主さんはタイルが好きで、床や壁のみならずIKEAのキッチンと組み合わせて天板もタイルで造作しました。西の公園へ開いたり、吹抜けと主寝室が繋がったり、面積以上の空間の広がりが生まれるよう設計しました。
コロナ禍にご家族がドイツへ2年転勤することになりました。日本とは時差もありますし、上棟まで直接会えない状況でしたが、LINEを駆使して粘り強く打合せを進めたことが一番思い出に残っています。
家づくりは会社よりも「誰とつくるか」が大切だと思っています。
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