建築家と家づくり 好きに暮らそう SuMiKa
記事作成・更新日: 2015年 7月14日

予算内で都心エリアと 自由設計を叶え、 コミュニティを楽しむ

建築家と工夫しながら設計を進め、住人同士、
事前にコミュニティを育み、じっくり理想の住まいをつくる。
コーポラティブという選択。

text_ Yasuko Murata photograph_ Takuya Furusue

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シンク側は作業台兼ダイニングテーブル。キッチンの床は玄関の土間と同じように、リビングより15cm 下げて高さを調整した。リビングの床は幅広のオークのフローリング。

都心コーポラティブハウス

balco K邸

東京都板橋区
〈設計〉駒田建築設計事務所

・住人データ
夫(35歳) 会社員
妻(35歳) 会社員


35歳くらいまでに住宅を購入する予定で、いろいろな方法を模索していたKさんご夫妻は話す。

「共働きで多忙なので、職場に近い場所に住みたいと思っていました。最初は中央線沿線で、新築マンションなどを見ていたのですが、予算内では良い物件がない。エリアを広げたときに、考えてもみなかったコーポラティブハウスを見つけました」

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全4戸の「balco」外観。外壁の色も住人同士で相談して決めた。階段室の屋上も緑化。

相場より2割ほどコストが抑えられ、間取りも自由にできる。当時竣工したほかのコーポラティブハウスを見学し、各戸がまったく違う雰囲気に面白さを感じたという。

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左・トイレ、浴室、洗面はコンパクトに。ガラス張りでテラスに面して開放的。
右・玄関は広めの土間。写真左は下足棚。キッチンの収納の裏側を活用している。

想定よりも都心エリアの新宿区に建設予定だった、アーキネットのコーポラティブハウス「balco」の計画を知ったK さんご夫妻は、そのコンセプトに共感し申し込む。しかし、コーポラティブハウスは、設計から竣工までに期間がかかり、その間住人同士で管理面のルールなども決めていく必要がある。

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テラス側は全面開口として外部と連続した雰囲気に。短手が広い場所をリビングに。

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玄関から眺める。中央にクローゼットの箱を配置。いちばん奥の隠れた空間が寝室。

「働きながらこなせるか不安だったのですが、始まってみると住人の方々は年齢や感覚が近い人ばかり。スムーズに進んで、設計とともに楽しんで取り組めました」(奥さま)

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テラスに面した通路は広めに取り、チェアなどを置いてひとつの居場所に。

「balco」全体と各住戸の設計を担当したのは、駒田建築設計事務所の駒田剛司さんと由香さん。北に面し、間口が狭く、細長い敷地の西側に1mほどの外部空間を設け、バルコニーやテラスにすることで、建物全体に十分な採光を確保した。

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クローゼットの周囲が通路となっている。テラスと逆側の通路は必要最小限。

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クローゼットの上は布団を敷いて、客間としても活用する予定。

「圧迫感がなく、光が入る家にしたいと思っていました。その希望を汲んでくれた、駒田さんの提案通りのプランとなっています」(ご主人)

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オープンなキッチン。収納で玄関と居住空間を切り分けている。箱はすべて構造用合板を木目が透ける程度に白く塗装。キッチンの天板はステンレスですっきりとした印象。

K邸のプランは約63㎡の一室空間に、キッチンの収納、ウォークインクローゼット、水まわりが収まる3つの箱を配置し、空間を分けている。クローゼットの上はロフトにして天井をつなげ、浴室の壁の上部もガラスにして抜け感をキープした。

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左・西側から自然光が気持ちよく差し込むキッチン。棚には食器を中心に飾るように収納。シンクの隣で使い勝手も良好。冷蔵庫もすっきり収まるように工夫されている。
右・玄関の土間には通りに面して大きな開口を設け、家全体をつらぬく南北の抜けと採光をキープしている。ブラインドを下ろせばプライバシーも確保できる。

「いちばん奥に寝室がありますが、壁で仕切るのではなく、水まわりの箱で見えなくすることでプライベート感を出しました。全体的にコンパクトですが、開放感や広さを感じ、それぞれの場所の居心地も違ったものになっています」(駒田さん)

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キッチンの床は玄関と同じ土間。濡れても滑りにくい。

予算内で都市エリアに住むことを叶え、建築家との自由設計を楽しむ。気の合う住人たちとも定期的に飲み会をしているというKさんご夫妻。入居後もコーポラティブハウスの良さを満喫しているようだ。

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左・トイレの横にミニマムに収めた洗面。/右・南側にある寝室。窓から差す自然光で目覚める。


〈物件名〉balco K邸〈所在地〉東京都新宿区〈居住者構成〉夫婦〈用途地域〉近隣商業・第一種中高層住居〈建物規模〉地上4階建て(1階部分)〈主要構造〉鉄骨造〈敷地面積〉116.98㎡〈建築面積〉71.85㎡〈1階床面積〉63.33㎡〈建蔽率〉61.43%(許容94.21%)〈容積率〉216.55%(許容 224.57%)〈設計〉駒田建築設計事務所〈企画〉アーキネット〈施工〉山庄建設〈構造設計〉中畠敦広 + 昭和女子大学 森部康司研究室〈設計期間〉17ヶ月(参加者募集期間含む)〈工事期間〉9ヶ月〈竣工〉2013年


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Takeshi Komada


駒田剛司
1965年生まれ。
89年 東京大学卒業後、香山壽夫建築研究所。
93 ~ 99年 東京大学助手。
2000年 (有)駒田建築設計事務所共同設立。
現在、東京大学、東京電機大学、
昭和女子大学、東京工芸大学非常勤講師。

Yuka Komada


駒田由香
1966年生まれ。
89年 九州大学卒業後、東陶機器。
93~ 96年 サティスデザイン。
96年駒田建築設計事務所設立。
2000年 (有)駒田建築設計事務所共同設立。
現在、中央工学校講師。

駒田建築設計事務所
東京都江戸川区西葛西7・29・10
西葛西アパートメント401
TEL 03・5679・1045
FAX 03・5679・1046
komada@ppp.bekkoame.ne.jp
www.komada-archi.info


※この記事はLiVES Vol.72に掲載されたものを転載しています。
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