建築家と工夫しながら設計を進め、住人同士、
事前にコミュニティを育み、じっくり理想の住まいをつくる。
コーポラティブという選択。
text_ Yasuko Murata photograph_ Takuya Furusue
都心コーポラティブハウス
balco K邸
東京都板橋区
〈設計〉駒田建築設計事務所
・住人データ
夫(35歳) 会社員
妻(35歳) 会社員
35歳くらいまでに住宅を購入する予定で、いろいろな方法を模索していたKさんご夫妻は話す。
「共働きで多忙なので、職場に近い場所に住みたいと思っていました。最初は中央線沿線で、新築マンションなどを見ていたのですが、予算内では良い物件がない。エリアを広げたときに、考えてもみなかったコーポラティブハウスを見つけました」
相場より2割ほどコストが抑えられ、間取りも自由にできる。当時竣工したほかのコーポラティブハウスを見学し、各戸がまったく違う雰囲気に面白さを感じたという。
想定よりも都心エリアの新宿区に建設予定だった、アーキネットのコーポラティブハウス「balco」の計画を知ったK さんご夫妻は、そのコンセプトに共感し申し込む。しかし、コーポラティブハウスは、設計から竣工までに期間がかかり、その間住人同士で管理面のルールなども決めていく必要がある。
「働きながらこなせるか不安だったのですが、始まってみると住人の方々は年齢や感覚が近い人ばかり。スムーズに進んで、設計とともに楽しんで取り組めました」(奥さま)
「balco」全体と各住戸の設計を担当したのは、駒田建築設計事務所の駒田剛司さんと由香さん。北に面し、間口が狭く、細長い敷地の西側に1mほどの外部空間を設け、バルコニーやテラスにすることで、建物全体に十分な採光を確保した。
「圧迫感がなく、光が入る家にしたいと思っていました。その希望を汲んでくれた、駒田さんの提案通りのプランとなっています」(ご主人)
K邸のプランは約63㎡の一室空間に、キッチンの収納、ウォークインクローゼット、水まわりが収まる3つの箱を配置し、空間を分けている。クローゼットの上はロフトにして天井をつなげ、浴室の壁の上部もガラスにして抜け感をキープした。
「いちばん奥に寝室がありますが、壁で仕切るのではなく、水まわりの箱で見えなくすることでプライベート感を出しました。全体的にコンパクトですが、開放感や広さを感じ、それぞれの場所の居心地も違ったものになっています」(駒田さん)
予算内で都市エリアに住むことを叶え、建築家との自由設計を楽しむ。気の合う住人たちとも定期的に飲み会をしているというKさんご夫妻。入居後もコーポラティブハウスの良さを満喫しているようだ。
〈物件名〉balco K邸〈所在地〉東京都新宿区〈居住者構成〉夫婦〈用途地域〉近隣商業・第一種中高層住居〈建物規模〉地上4階建て(1階部分)〈主要構造〉鉄骨造〈敷地面積〉116.98㎡〈建築面積〉71.85㎡〈1階床面積〉63.33㎡〈建蔽率〉61.43%(許容94.21%)〈容積率〉216.55%(許容 224.57%)〈設計〉駒田建築設計事務所〈企画〉アーキネット〈施工〉山庄建設〈構造設計〉中畠敦広 + 昭和女子大学 森部康司研究室〈設計期間〉17ヶ月(参加者募集期間含む)〈工事期間〉9ヶ月〈竣工〉2013年
Takeshi Komada
駒田剛司
1965年生まれ。
89年 東京大学卒業後、香山壽夫建築研究所。
93 ~ 99年 東京大学助手。
2000年 (有)駒田建築設計事務所共同設立。
現在、東京大学、東京電機大学、
昭和女子大学、東京工芸大学非常勤講師。
Yuka Komada
駒田由香
1966年生まれ。
89年 九州大学卒業後、東陶機器。
93~ 96年 サティスデザイン。
96年駒田建築設計事務所設立。
2000年 (有)駒田建築設計事務所共同設立。
現在、中央工学校講師。
駒田建築設計事務所
東京都江戸川区西葛西7・29・10
西葛西アパートメント401
TEL 03・5679・1045
FAX 03・5679・1046
komada@ppp.bekkoame.ne.jp
www.komada-archi.info
※この記事はLiVES Vol.72に掲載されたものを転載しています。
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