(c)Chiaki Yasukawa
皆さん、今年の夏休みはもう満喫しましたか?
仕事を休めない!
どこに行っても混んでる!
子どもがいるから旅行は無理!
こんな理由で旅行を諦めている方に、朗報です。あるようでなかった新しい滞在型リゾートが、湘南に誕生しました。海に面した最高の立地で、一軒家をまるごとレンタルしてしまうという贅沢なリゾート。それなのに、ここから通勤だってできちゃうという夢のようなお話。さっそくご紹介しましょう!
海に突き出すように建つ三角形の建物が印象的な「Nowhere but Sajima(佐島)」。空間を切り取るように設計された大きな窓の外には、一面の海が広がっています。まるで船の上から海を見下ろすような感覚を味わうことができる、映画にでも出てきそうなリゾート施設です。
Nowhere but Sajima (c)Chiaki Yasukawa
実はここ、有名人の別荘でもリゾートホテルでもなく、一週間単位で借りる「海辺のウィークリー別荘」です。別荘を所有しなくても、一週間の休暇中、ここはあなたの家。家族や仲間と、海辺の生活をのんびりと楽しむことができるのです。
別荘とはいえ、サービスも充実しています。現地に着いてまずサーブされるのは、こちらの朝食バスケット。地元で麦から生産した天然酵母パン、地元でとれた有機野菜、フルーツ、コーヒーなどが詰め合わせとなってお部屋に届けられます。これから始まる生活を想像してワクワクさせてくれる、うれしい演出ですね。
滞在スタイルは人それぞれ。”なーんにもしない”を楽しむもよし、海に出て遊ぶもよし、地元を散策してみるもよし。アクティブ派の方には、滞在を楽しむオプションプランも用意されています。シーカヤック、ハイキングツアー、地元食材巡りなど、アクティビティも様々。何も予定を立てずに行っても、十分楽しめてしまいそうな充実ぶりです。
このリゾート施設、その名を「Nowhere resort(ノーウェアーリゾート)」といいます。佐島の他にも、古民家を再生した一軒家「Nowhere but Hayama (葉山)」はまた違った趣で人気を集めており、来年にはさらに新築2軒が完成するなど、現在規模を拡大中のリゾートです。共通点は、三浦半島西側の海辺の一戸建て、そして1週間単位の貸別荘であるということ。贅沢な立地での生活をのんびり楽しんでほしいという経営者の願いが反映された施設です。
しかし、貸別荘というスタイルは、日本人にはあまり馴染みがない上、人の家にお邪魔する感覚で、あまり気軽に使えるイメージがないかもしれません。Nowhere resortは、そこに敢えて挑戦し、新しいリゾートスタイルを生み出そうとしているかのように見えます。そこにはどんな想いがあるのでしょうか。代表の吉村真代さんにお話を伺いました。
吉村真代さん(株式会社マイプランニング 代表取締役)
「もったいない」から生まれたシェアスタイル
まずはこのリゾート経営を始めたきっかけからお聞きしました。
8年前から建築の仕事をしていたのですが、別荘には維持費がすごくかかる上、1年に合計1〜2週間しか使われていなかったり、使われないまま放置されているという現実があり、それは本当にもったいないと思っていました。そこで、所有でも賃貸でも宿泊でもなく、別荘をシェアする新たな「バケーションレンタル」というスタイルを提案しようと考えました。
「もったいない」という気持ちから生まれたシェアという発想。シェアする形式のバケーションレンタル別荘の魅力について、吉村さんは、「訪れる人が建物の歴史をおもしろくする」と言います。実際、この場所に別荘を建てたことにより、多くのお客さんが、吉村さんの想像もしない使い方を提案してくれたそうです。例えば、ホームウェディング。新郎新婦の希望で実現したウェディングパーティは、海を一望するプライベート空間に多くの方が集い、温かい雰囲気に囲まれ、ゲストも本人たちも大満足だったようです。
その他にも、ギャラリーとしての使用やヨガ教室、企業研修など幅広く使われるようになり、それを吉村さんご自身もとても楽しんでいる様子です。
長男が生まれたことも大きなきっかけでした。旅行に行きたくても、新生児はまず、どの旅館もホテルもお断り。貸別荘をあちこち探しましたが、どこもイマイチで、行きたいリゾートがひとつもなかったんです。じゃあ、作ってしまおうと。
海外在住経験もお持ちの吉村さんが考えた、自分が本当に満足できるリゾート。これがNowhere resortの始まりとなったのです。
小さな“街おこし”
そして面白いのは、別荘を建てる段階から現在に至るまで、地元の方々との交流が常に行われていることです。
「Nowhere but Hayama 」は、築80年以上にもなる古民家を再生した建物です。再生を決めたとき、地元の方々から、景観を残してほしいという声をいただきました。昔ながらの重い瓦を残しながらも、耐震性を高め、美しい縁側や古い石塀を残す工夫を凝らした結果、皆さんにも喜んでいただける建物が完成しました。葉山芸術祭期間中は、カフェを開き地元の方も自由に出入りして楽しんでいただけるようにしています。実際は新築するよりもかなり高額な費用がかかっていますが、それが結果として地域とつながるきっかけになったと感じています。
葉山御用邸の脇に建つ古民家再生の別荘「Nowhere but Hayama 」
建物の他にも、朝食バスケットやオプションのアクティビティも地元の方の協力のもと、意見を取り入れながら一緒に作っているとのこと。リゾート運営が地域活性化につながる事例はありますが、ここは別荘というプライベート空間。それでも、シェアスタイルや地域社会とつながる設計を施すことにより、結果として、ちょっとした街おこしにつながっているのです。
リゾートから通勤するというスタイル
そしてNowhere resortのもうひとつの大きな特徴は、都心からの通勤圏内にあること。「Nowhere but Hayama」、「Nowhere but Sajima」ともに都心まで電車で2時間はかかりません。つまり、このリゾートに家族と滞在しながら、お父さんはちょっと会社に行く、なんてこともできてしまうのです。1週間も休みが取れない、なんて忙しい方も、ここなら無理なく家族サービスを実現できます。
「greenz森の家」もそうですが、東京から離れた自然豊かな場所に拠点を持つライフスタイルが、今注目されています。気になっているけど本当に通勤ができるか不安、なんて人は、ここで1週間実験的に生活してみるというのもひとつの手かもしれませんね。
住宅はもっとおおらかであってほしい
最後に、吉村さんがこのビジネスに込めた想いを伺いました。
退職後や、オフのために別荘を持とうと思うと、かなりハードルが高くなってしまいますが、シェアという考え方で多くの方に別荘に滞在することを楽しんでいただきたいです。私は、建物は単なる什器ではなく、社会と接続していくものだと思っています。その中でも住宅は、もっとおおらかで寛容なものであってほしいのです。Nowhere resortに来ると、みなさん自分の家に来たかのように心も行動も開放的になります。自然に接し、地域の方ともつながって生きる、都心ではできないライフスタイルを、建築という視点から提案していきたいと思っています。
“Nowhere”の名前には、ふたつの由来があります。
「No – where」(どこにもない)そして、「Now – here」(今ここにある)。
ここなら、どこにもなかったリゾートスタイルを、さらにはライフスタイルを実現できるかもしれません。今度のお休みに、特別な日に、一度訪れてみてはいかがでしょうか。
吉村真代(よしむらみちよ)
1974年大阪府生まれ。高校生活をイギリスで過ごす。1996年慶應大学環境情報学部卒業後、1999年早稲田大学理工学部建築学科卒業。その後、オランダで建築を学ぶべく2001年までベルラーヘ・インスティチュートに在籍。帰国後、建築設計事務所SUPER-OSを吉村靖孝(夫)、吉村英孝(義弟)と共同で設立。建築設計事務所の経営マネージメントの傍ら、2004年不動産企画開発会社(株)マイプランニングを設立。2006年長男を出産。これを機に、一週間、家を一軒丸ごと借りられるヴァケーション・レンタル「海辺のウィークリー別荘”Nowhere resort”」をプロデュース。
現在、葉山御用邸脇に建つ、築80年の古い日本家屋を再生した”Nowhere but Hayama”と、海に突き出すように建つ白いモダンな一軒家”Nowhere but Sajima”の2軒を運営。2011年夏には、さらに新築2軒オープン予定。(設計は全て(株)吉村靖孝建築設計事務所による)
【9/8追記】greenzを見て予約でうれしい特典アリ!!
Nowhere resortさんから、greenz読者のみなさんに、ステキなプレゼントのお知らせです!
感謝の気持ちを込めて、greenz.jpを御覧になった方でご予約の方に湘南ワインセラーのワインをプレゼントします。是非この機会に一週間海辺で美しい季節の変化を感じながらお過ごいただければと思います。
とのことです。この機会にぜひ、足を運んでみてはいかが?