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記事作成・更新日: 2014年 2月15日

コミュニティをデザインするにはこれが大事!「まちづクリエイティブ」の活動からみる"町に参加するための第一歩"とは?

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UターンやIターンといった「地方で働く」ことを選択する人の活躍が注目されています。その思いはきっと、「地元を盛り上げたい」「地方の地域活性に貢献したい」「ライフスタイルを変えたい」と、さまざま。

しかし、舞台を変えての活動は、いわばシステムもネットワークもゼロからの再設定するということ。どうすればスムーズに……、それ以前に何から始めればいいのやら……。

そこで、昨年2010年に松戸を拠点に「まちづクリエイティブ」の運営をスタートした寺井元一さんに、その道のりをお聞きしました。そこから見えてくる新たな土地で活動するためのHOW TOとは?

兵庫県で生まれ育ち、その後、渋谷をフィールドにしてアーティストやアスリートに活動の場を提供する活動を行ってきた寺井さんにとって、松戸は、“生まれて初めて訪れた町”だったそう。

「自分たちが活動を通して町を盛り上げていく『まちづくり』、もっと言えば『まちの改造』事業にチャレンジしたいと思って新たな活動の場を探していた時、たまたま松戸を訪れる機会があったんです。松戸は、都心から少し時間はかかるけどアクセスはすごくいい。

そして、駅から歩いて10分で、江戸川沿いの美しい河川敷。それなのに、駅前ですら空き店舗が目立つ寂しさでした。でも、僕の目にはそれがむしろ、それ故の自由度の高さという魅力がある町としてうつったんです。それまでの都心での活動は、スペースや時間の制限とのせめぎあいの日々でしたから。」

寺井さんは、眠っている空間を生き返らせる不動産事業とクリエイター支援をリンクさせ、新規事業を松戸でスタートすることを決心。“生まれて初めて訪れた町”に拠点を移すことにしました。

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「まちづクリエイティブ」を訪問!

それから一年が経った今、「まちづクリエイティブ」の拠点であるMAD City Galleryに居ると、突然町内の人たちがふらりと立ち寄り、寺井さんと世間話を交わして行く場面をよく見かけます。寺井さんが、何かを頼んだかと思うと、今度は何かを頼まれたり。そのやりとりを見ていると、単純に「どうやって、そんなに地元コミュニティに溶け込んだ活動拠点を作ったの!?」と思わずにいられません。

そこで、寺井さんが活動をスタートするために実行されたことをお聞きして、そのノウハウをまとめてみました!

寺井元一さんに聞く“町に参加するための第一歩”

1.『実行委員会』を探して、町のテンションをさぐる

「地域おこしの必要が言われている昨今では、どんな町でもいろんな集まりが作られているものです。たとえば、松戸には5年ほど前から『松戸駅周辺にぎやかし推進協議会』というのがあります。町内会や商店外を横断するような組織ですね。そういった実行委員会みたいな組織ができているか、できて何年経っているか、どんな活動をしているか、どんな補助や助成を受けているか、などなどを見れば、地元の人たちのモチベーションの上がり下がりが推測できます。

ヨソ者が参加するのには、地元に方々に危機感があるけれど、まだ地元を見捨ててもいない、というタイミングが適しています。そういう頭で、町全体のテンションが上がり気味が下がり気味か、タイミングを測ってみる。実行委員会が行政主導か、地元主導か、そういったことも気になります。具体的なイベント内容などを見れば、役所が企画運営しているか、地元のおっちゃんが中心か想像がつく(笑)。そういったことはWEBサイトでもチェックできるし、市役所に行って『まちづくりの実行委員会とか、あるんですか?』って聞いてみると教えてくれる。そこまで来たら、あとはもう、イベントの開催があれば混ざりに行く勇気ですね」

2.事務所は駅前のマクドナルドでいい

「新しい土地に拠点を移す時、みんな気合い入り過ぎていたりしませんか? いきなり事務所を借りるって大変だし、いざ借りたら、事務所を整えることにしばらくはかかりっきりになるわけです。でも都内のカフェみたいな居場所もないことが多い。だったら、駅前のマクドナルドを拠点にしちゃえばいい。駅から近いし、家賃かからないし、電源もインターネットもある。コーヒーも安いですしね(笑)。

僕は、週に一回松戸駅前のマクドナルドにPC持って行って仕事して、知り合う人には、『松戸には、週一で出勤してます』って言ってました(笑)。だって、『今日はたまたま来ました』だと、いつまで経ってもよそ者なままですから、自分はこの街を拠点にしているんだって伝えたいですよね。事務所がないと始められない、と思っているのはもったいない。そういっている間に、地元の人とのコミュニケーションの機会を逃してしまいますから。

もちろん、最初はそういう初め方だとしても、『地域活性』をやろうとやって来て、マクドナルドに入り浸るって、ものすごい葛藤や矛盾でもあるんです。そのことを『やってやるぞ』っていうエネルギーに変えつつ、知り合いができたら伝えたりなんかして、事務所を間借りさせてもらえたりすると良い。まさに僕がそうだったんですけれど。」

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現在は拠点を構えて仕事。神酒所を使った事務所内の様子。

3.地元の「アジト」を見つける

「自分たちの事務所、拠点を構えるところまできたら、大切なのは地元の人たちの集まっている、アジト的な場所を見つけること。最初に自分たちの事務所を作っても、町の人に、『ここに居るので、来てください』と来てもらうのは難しいもの。

基本は自分たちが混ざっていかなければ。集会所とか、地元の人が集まる場所にね。そう言っている僕だって人見知りなんで、結構勇気要りますけどね。合コンと一緒で(笑)、最初は何話せばいいんどろうとか思うわけですよ。それで僕たちの場合は、お祭りの際に御神輿を納めて地元の方々の集会場・飲み会会場となる神酒所をお借りすることになりました。外部から見てると分からないですが、お祭りって地元意識の核になっていて、磁力があるのでそこには賑やかに人が集まるんです。そういう場所を見つけて、お借りできると良いと思うんです。」

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仕事の後の夕食には、町内の人も通りすがりで参加。

4.地元の人々の『自虐話』にこそ耳を傾ける

「僕の場合、アーティストやクリエイターとともにイベントや不動産をやっていくうえで、空き物件や空き地など、発想次第で有効活用できるリソースを街のなかに見つけることを重視しています。そのヒントになるのが、地元の人達の自虐話。「この街はここがダメだ、あそこがダメだ」そういう声が聞けたらしめたものです。だいたい、地元の方がマイナスだと思っているものが、クリエイティブ心のある人間にとってはプラスになる。

松戸の場合だと、例えば……特徴的なのは江戸川。江戸川が駅からすごく近くて商圏が狭いから商売が大変だとか、河川敷が公園に整備されていなくて使えないとか、言われてるんですね。そういう場所を僕らは、ちょっと違う角度からとらえ直していけばいい。職場や住居からすぐ近くに手付かずの大自然や川があるとか、公園条例に縛られていない河川敷だからバーベキューだってできるはずとか、そう考えたら急に魅力的になる。廃墟みたいな物件だって、まさに同じ発想ですよね。

地元の人は、『ここは、田舎でなんにもないよ』と言うけれど、彼らが客観的に見れない良さが、ヨソ者には感じられたりもするんですよね。」

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江戸川沿いのこんなに気持ちいい河川敷。

5.遊び方を学ぶ

「ヨソ者の僕らは仕事をするために松戸に来ているわけですが、地元の人たちは日常生活してるわけです。だから、まずシェアすべき時間は仕事じゃなくて、遊びの時間。地元には地元の遊びがあるもの。

地元ルールで遊んでいる人たちに混ざって遊び方を教えてもらったり、遊び道具を貸してもらったりする。濃い関係が意外と早く築けたりもしますし、何よりその『遊び』そのものが町のリソースとつながっている。松戸の場合、路上や河川敷でシュラスコで肉を焼いて食べたり、江戸川でカヌーやっていたりしますけど、それって都心ではとてもできない遊び方だし、町の魅力そのものですよね。」 

寺井さんが率いる「まちづクリエイティブ」は、これからも体当たりでさまざまなイベントを展開予定。これからの活動にも注目です。

MAD City:http://madcitynow.com/
Twitterアカウント(まちづクリエイティブ):@machizu
ファンページ(まちづクリエイティブ):http://www.facebook.com/MADCityProject

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