敷地は、北側と道路を挟んだ東側に高い木々が生い茂る寺町特有の環境の中にあります。
計画では、周囲の緑との距離を縮めることにしました。
持ち上げた住空間には、必要最低限の窓を用意し、大きさと位置、高さに変化を与えました。また、ちいさな住宅ながらもデッキテラスを用意し、外部と繋がり風を日常的に感じるようにしました。テラスデッキの天井には穴が空いていて、空が見えます。それぞれの窓からは、切り取られた周囲の緑や空が住空間に飛び込んできます。
「千歳烏山の住宅」は、この敷地特有の環境を読み込み、敷地周囲の全ての風景を受け入れるのではなく、散りばめられた様々な窓の連続によって断片的に周囲の小さな自然を切り取り、緑や空に包まれた豊かな住空間を生み出そうというちいさな住宅の試みです。
設計担当:納谷学、山田安津子
構造設計:かい構造設計 寺門規男
施工会社:高石建設 小林泰治
延床面積 : 61.20m²(18.51坪)
1階面積 : 20.70m²(6.26坪)
2階面積 : 40.50m²(12.25坪)
構造形式:木造在来工法 2階建て(ロフト付き)
掲載誌 :
『エスクァイア 2008.04号』
『Lives2005.12/2006.01』
『自分時間 Vol.08』
①住空間を2階レベルに持ち上げ、ダイナミックな空間があります。
ロフトを設け、床面積が小さいながらもダイナミックな空間を手に入れた。
②ピクチャーウインドウを効果的に使っています。
北側隣地の緑、東側道路を挟んだ墓地の大きな緑、敷地周囲の緑を狙ってピクチャー
ウインドウを設けました。
③小さな住宅ですが、デッキテラスを設けています。
小さいからと言って床面積をぎゅうぎゅうに詰め込むのではなく、外部空間を取り入れる
ことで、生活の豊かさを優先させています。
墓地の横の土地は、人によっては嫌う方がいたり、不動産的にも人気がないとされている一方、大きな木々が季節を彩り、半永久的にその緑を魅力的に保てるとも言えます。
この住宅では、墓地の存在を消し、緑だけを切り取り、日常生活に豊かさを加えました。
竣工後クライアントが初めて2階に上がった時に、ピクチャーウインドウで緑を切り取っているため、街に住んでいるのに森の中にいるみたいだと言ってくれました。
具体的な要望も大切ですが、どんな暮らしをしたいかを伝えてくれると設計者の提案の幅も広がると思います。
森の中の別荘。
住宅地の一角にありますが、効果的なピクチャーウインドウによって森の中にいる様に感じる様です。
山田安津子(元スタッフ)
かい構造設計 寺門規男
高石建設 小林泰治