緑あふれるリビングと、シンプルなバスルームを仕切るのは、ゆるやかな曲線を描く合板壁。メリハリのある空間構成が暮らしを豊かにしている。
text _ Aki Miyashita photograph _Takashi Daibo
上沢の住居
(神戸市長田区)
- 設計
- タトアーキテクツ/島田陽建築設計事務所
- 住人データ
- 夫(31歳)会社員、妻(31歳)主婦、長女(0歳)
雰囲気のある佇まいが気に入って、築60年の平屋をリノベーションしたMさんご夫妻。空間を仕切るのはアールの合板壁。大きく開いた南窓から陽が差し込むと、ゆるやかな曲線に陰影が生まれ、空間を美しくする。
Mさんご夫妻のお住まいには、ヴィンテージの家具や雑貨など、もともとモノがたくさんあったので、アールの壁をつくることで、あえてモノを置かない『余白』を空間の中につくれたらと思ったんです
と話すのは設計を手がけた、建築家の島田陽さん。狙い通り、ディスプレイにメリハリが生まれ、却ってモノが映える空間に仕上がっている。バスルームは、このアールの中にある。壁と床はFRP塗装で防水を施し、天井は耐熱性のあるツインカーボをのせて蓋をしただけ。無駄のない、シンプルなつくりだ。
シンプルな分、ゆとりがあるので、ベビーバスも置けて、赤ちゃんをお風呂に入れるときもとてもラクです。愛犬を洗うのも、掃除も同じく、楽しくできますね
と話すのは、赤ちゃんが産まれて3カ月の奥さま。バスタブはカルデバイのホーロー製置き型タイプ、シャワーはグローエ。いずれも島田さんが空間に合わせて選んだものだ。バスルームの扉はこの家にあった古い木製のものを再利用して取り付けている。
予算が少しオーバーしそうだと途中で気付いて、削れるところがないか見直しをしたのですが、バスタブや水栓のクオリティーは落としたくなくて。ネットで安価になっているものを探し出して、希望通り実現できました(Mさん)
アールの壁で仕切った、陽当たりの良い南側はゆったりとくつろぐLDK。造園業に携わるご主人が育てるグリーンにあふれて、一日中心地良い。寝室の奥には、洋服が大好きな二人の希望で、大容量のクローゼットを。ロフトはちゃぶ台を置いて昭和テイストなマンガ部屋に。
モノが大好きで、どうしても増えてしまうので居場所をつくってもらいました。今はどこに置くかシミュレーションしてモノを選ぶようになって、好きなモノがより一層クリアになりました(奥さま)
細部までこだわった空間に、大好きなモノをセンス良くミックス。二人の自由な感性を住まいがしっかりと受け止めている。
専門家プロフィール
1972年 兵庫県生まれ。95年 京都市立芸術大学美術学部環境デザイン学科卒業。97年 同大学大学院修士課程修了。同年 タトアーキテクツ/ 島田陽建築設計事務所設立。
タトアーキテクツ/島田陽建築設計事務所
- 住所
- 兵庫県神戸市中央区北野町2・13・23
- TEL
- 078・891・6382
- FAX
- 078・891・6620
- info@tat-o.com
- URL
- tat-o.com
〈物件名〉上沢の住居 〈所在地〉神戸市長田区 〈居住者構成〉夫婦+子ども1人〈建物規模〉平屋建て〈主要構造〉木造 〈建物竣工年〉1955年 〈床面積〉86.57㎡ 〈設計〉タトアーキテクツ/島田陽建築設計事務所 〈施工〉キョーワテクノ 〈設計期間〉8ヶ月 〈工事期間〉3ヶ月 〈リノベーション竣工年〉2014年
※この記事はLiVES Vol.85に掲載されたものを転載しています。
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