敷地は、新潟県長岡市鶴ヶ曽根(旧中之島町)農村集落内。
クライアントが将来継承することとなる大きな土地には、すでに母屋(実家)・作業小屋・農舎・車庫・ビニールハウスといった沢山の建築が建っている。
十分な収納や水回り、沢山の個室といった機能をすでにもつ、この大きな土地の一角に、夫婦と子供二人が暮らす家を計画。
設計に際し、
新築する住宅はもちろん、母屋(実家)やその他の既存建築群の利活用も視野に入れた、家族各々がその時の状況や気分に応じて思い思いに過ごすことの出来る環境作りが求められた。
また、家族に限らずご近所さんやママ友、子供の友達までも自由に腰のかけられる縁側やおしゃべりの弾む軒下、ワークショップの開催など、敷居を低くし「家を開く」ことも希望された。
一戸の小さな建築から始まる、周辺の建築群の利活用、さらには集落の賑わいまでを射程とする「強い環境」作りに対する解答として、私たちは、不足があり不完全な「弱い建築」を提案。
周辺にたくさんあるビニルハウスや農舎の架構を踏襲し、全ての材に小さな120mm角材を利用したシンプルなトラスの反復構造とし、弱い材の組み合わせや連続による、強く大きなそして軽くおおらかなテントのような空間を実現。
収納や仕切り、個室をできる限り取り除き、大きなワンルームとし、不足やはみ出しを他に頼らざるおえない状況とし、既存建築の利活用を促し、決して一個では完結しえない、建築群としての家づくり、暮らし方を目指した。
この不足ある建築は使い手に工夫や知恵を求めもするが、建築に手をかけたり腰をかけたりを許容する包容性も持ち合わせ、「家に入る」というよりは、より身体に近しく「家を使う」という言葉が相応しく思う。
同時にこの「個の家としての不完全性」は、集落側から見たときには、色々な人や出来事を引き寄せる余白として「強い吸引力」となり得ることを期待している。
このような不足と余白を持った建築の作り方を一つの型として、この集落に定着させることで、一個一個の建築は世帯を越えて、家族を超えて、集落の中、
色々な境界が緩く溶け出し、新しい繋がりや囲い込み、コミュニティの創出を目指していけるのではないだろうか。
いつの日か、
夫妻は母屋に生活を移し、長男が新しい家族とともにこの家を使い、次男は農舎を改装しそこを拠点とし農業を営み、余分なスペースには農業を学ぶ海外からのインターン生が暮らす。
そんな遠くない未来の可能性を思いながら、
小さな架構の連続により生まれる建築、そしてそれを取り囲む既存の建築群、さらにその周囲にある農村集落としての全体性を、弱いものの集まりによる「強い群景」として、いかにして未来につないでいくかを設計の対象とした、
「小さな家」と「集落のマネージメント」の提案である。
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