敷地は新潟市西区、海岸に沿って形成された新潟砂丘の頂き。
古くからの高密集落を抜けた先の広大な原っぱを敷地とし、夫婦2人と子供が住む住宅を計画。
敷地は120坪程であるが周囲に広がる原っぱはその数倍の面積があり、且つ建物が建つ予定もなく、
その広大な原っぱをどのように生活に引き込み、一方でどのように家としての安心感を確保できるのかといった
相反する要素を両立させる境界のデザイン、そしてまた砂丘地であることを活かした建ち方ということを目指した。
砂を掘る、盛る、砂地に柱を建てる、砂地において考えられるそんな原始的手法による新しい環境の構築を試みた。
砂を掻き分け居場所を作るように、地面を少し掘り下げた。掻き分けられ周囲に盛られた砂により、原っぱとのゆるやかな境界を作り出し、
周辺環境から少し距離を取ることが可能となった1階をプライベートスペースとして各個室を配置。
建物が下げられ周囲の地面が盛られていることで、2階に配置されたLDKと地面はぐっと近い関係になっている。
上下階を貫通するように近隣で育った直径360mmの杉丸太を建て、それを手がかりに階段や屋根を架けている。
金物を用いず、木と木の差し込みのみで構成された階段は凛とし強いインテリアとなり、
同様に金物無しで斜めに差し込まれた方杖は建物の角を支え、原っぱに向けた大きなコーナー開口を作ることを可能にし、
原っぱとLDKが連続する屋外のような開かれた環境を作ることに寄与している。
通常の2階より少しだけ視線が低く、且つ地上階より少し高いLDKは周囲の原っぱは元よりその少し遠く丘の下の町並み、山並みまでも射程に捉え、
連続感の無かった丘の上と下を「ひとつながりの風景」として映し出す。
1階は地盤面より低く、目線は地面に近い、穴蔵のような安心感をもたらしながら通常の地上階よりも原っぱの中に住まうという実感を与えてくれる。
外部と連続し結びつきの強い1階と地面が遠い2階という一般的な階構成の持つ外部との接続の強度を編集し、
各階において質の異なる原っぱとの関係を作ることで、この敷地における心地よい外部との距離感、環境を作り出すことができたと考えている。(文:平野勇気)
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