親子二人が住まう、平屋の戸建住宅の計画。
敷地は以前より施主が畑として所有していた土地で、隣地を含む敷地周辺には親類も多く暮らす。地縁血縁によるコミュニティが強く存在するコンテクストに配慮するため、抑制された建物ボリュームや外観とすることを求められた。
敷地に立つと、周囲は建て込んでいるわけではないが景観が特別美しいわけでもない。前面道路はヒューマンスケールだが抜け道になっていて交通量が多い。自然と斜め上方に広がる空に意識が向いた。この場所に住むことの質を、この斜めの空をきっかけに作り出そうと考えた。
敷地中心部から外周部に向けて下がる、5枚の片流れ屋根を架ける。向き、大きさ、勾配も様々な屋根は上下にずれて重なり合い、そこに斜めの空へ向けた窓を設ける。南の空に向いたダイニングキッチン、東の空に向いたオーディオルーム、北の空に向いた寝室というように、それぞれのスペースとそこで過ごす時間が、空と共に経験される。向きによって様々な表情や光の質を持つ空が、一つ一つの場所に個性を与える。そしてそれらの場所を巡り、その時々で心地よい居場所を選び取る暮らし方を、回遊性のあるプランが下支えする。
低く小さな中にも、空をきっかけとした大きな広がりの感覚を生み出そうと試みた。