夫婦と子供二人と猫一匹のための戸建住宅です。
敷地は間口が狭く奥行きの長い、いわゆるうなぎの寝床で、かつて大きなお屋敷のあった土地を5区画に分譲した内の中間部の一つにあたります。残りの4区画に左右で接し、奥で既存の隣家に接する敷地です。
家に人を招くことも多い施主は、明るく大きなダイニングを希望されました。来客との集いやそこでふるまう趣味の料理に加えて、楽器の演奏、仕事、勉強、遊び、そういった多種多様なことがこの場所で繰り広げられることが想定されました。
そのような場は単なるダイニングというより、広場と呼んだ方が近いかもしれない。そう考えて、家の中心に広場のような場所を作りました。と言っても数字的に大きな面積の場所を作るのは敷地条件的に難しい計画です。代わりに「性質の異なる様々な場所が向き合うひとつの余白」としての広場の質を持つ空間を考えました。
地続きだが籠り感のあるキッチン、ステップで緩く分節されたリビング、バルコニーのように張り出すホール、腰窓から見下ろす寝室というように、それぞれの場所が適切な距離感でこの広場的空間に接続しています。諸室を結ぶ階段がここに現れ、隠れ、分岐し、横切ります。
この家では、どこかに居ることやその間を移動することが、常にこの広場的空間との関係性の中にあります。その関係性の強弱が、住人や来客それぞれ/その時々での居方を豊かにすると考えました。