既存の戸建住宅は、竣工から約40年が経った、和風の雰囲気を持つ趣きが在る建物である。
建物は昭和52年に竣工しており、いわゆる旧耐震基準で建てられているため、現在の耐震基準には適合しておらず、耐震改修を行う必要があった。耐震改修の必要性から、改修工事は基礎、壁、柱梁の補強など、建物全体に及ぶこととなったが、
施主が既存建物の雰囲気を気に入って建物の購入を決め、また、当時の設計者の思いが伝わってくる建物であったことから、全てを壊すのではなく、既存建物の意図を汲みとり、それを強めながら改修を行うことが最善と考えた。
既存建物は、和室を中心に、その廻りにリビング、ダイニングキッチン、水廻りなどを配置した、回遊出来るプランであったが、
ダイニングキッチンは壁によって分断されており、また、途中の改修で出来てしまったと思われる床の段差などによって、その回遊性を弱めてしまっていた。建物全体としても、老朽化した内装や設備機器などが相まって薄暗い雰囲気を持っていた。
改修工事では、当初の和室を中心とした回遊プランをそのまま活かし、必要な耐震壁を、新設する壁面収納や、和室の廻りの壁に集約することで、空間の邪魔となっていた壁や段差を取り除き、回遊性を強めるような改修を行った。
建物の内装は全体を白色として、中心の和室は、既存の丸柱など、当初の雰囲気を活かした木調のオープンな空間として、住まい手が自然と中心に集まるような空間としている。2階部分は、各寝室が、高台を活かした眺望の望める配置であったため、平面形状はそのままに、明るい雰囲気の内装に更新している。
老朽化した戸建住宅において、既存建物が持つ空間の意図を汲みながら改修することによって、経年変化の良さや、建物が持っているポテンシャルを強めると共に、耐震性も強めた改修が実現している。
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