土地探しからのご依頼でした。建て主といくつかの物件を一緒に見て回りましたが、やっと出会ったこの土地は文句の付けようがなく、ただし想定よりかなり高額で…、それでも住まい手がご決断された時にはある意味プレッシャーを感じたのを覚えています。
大きな住居ですがそれ以上に敷地面積の余裕もあり、建物配置やプランニングにはかなり多くのバリエーションが考えられました。「この敷地条件の元、最も素直な佇まいは?」という思考を繰り返し行きついたのは、中央に中庭を設けたコの字型配置。残る一辺は木の縦格子で仕切る計画で、そこに沿うようにして玄関へとアプローチする構成のため、この格子が外観内観ともに本計画のアクセントになっています。
また、CO2ゼロというお題もいただきました。その事務的な計算方法と、自然エネルギーを有効利用するパッシブデザインの考えが必ずしも一致せず苦労しましたが、最終的には何とか両立できたのではないかと思います。(LCCM住宅認定取得)縦格子から緑豊かな中庭とリビング、吹抜けを介して最上部の高窓へと通ずる風道が、本件のパッシブデザインの極意ですが、このシークエンスは光や熱という媒体でも、或いは視線の流れや人の動きにも通じており、この住いの主空間を何となく気持ちいい空間に仕立てている根源になっていると思います。
LCCM認定取得の業務に協力いいただいた古くから知り合いの建築家が、引渡し時現場を訪れた際、住まい手に「かなり遠藤事務所の特徴が色濃く出ているお住まいですよ」と言っていました。(多分良い意味で…)特徴とかは無い方だと思っていますし、そう思って設計した訳ではありませんが、言われてみるとそんな気もします。