谷戸に立つ寺院の、新しい観音堂の計画。
住職からの、境内地拡張にあたり寺院全体のあるべき姿を構想してほしいという呼びかけから調査・検討を進め、昔あった地下の祠を新しい観音堂として再興し、家族葬など小規模な法要や地域コミュニティ活動の受け皿とすることを目指すこととなった。
敷地はその殆どが緩やかな斜面からなっていたが、一部に急斜面が存在し、隣地の市民の森に接続していた。この緩・急の斜面の地形に沿わせた象徴的な1枚の大屋根で建物を覆うことで境内地と市民の森をつなぎ、地域にとって親しみある風景を創り出すことを考えた。
屋根架構は、流通材の使用や汎用性のある接合部を可能にするために、短い材で相互に支えあう、仏教思想にも通じる相互依存の構法を取った。この変形格子梁による架構を天井際のスリットから自然光で照らし、信仰の空間を力強く表現している。
観音堂の強い存在感は既存の伝統的寺院建築と対峙し、谷戸の地形と呼応し、地域の拠り所となる力強く温かみのある境内空間を作り出している。
資料請求にあたっての注意事項