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豊田大作の小屋二スト日記
2017年12月22日

豊田大作の小屋二スト日記|第2回「ピザ窯を作ろう」

将来の住まいとするため、とある山のふもとにコツコツと小屋を作る40代男の手記。
着工から4年目にして、ようやくキッチン作りに手を着けることに。

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ピザ窯のドームを成形するところまでできた。その後、無事にピザが焼けたかどうかは次回に報告予定





アウトドアキッチンでいこう

前回書いたように、主たる小屋は完成に近づいた。内壁の漆喰塗りが中途半端なままなのは気分がいいものではないが、とりあえず寝泊まりするのに不便はない。ここでぼくは、先に生活に必需な設備作りに着手することにした。それはトイレ、キッチン、風呂。トイレキッチン風呂…書けばわずか9文字だが、作り上げるにはかなりの時間を要するに違いない。そもそもどうやって作ればいいのか?今のところ確信を持てる方法を知らない。どれも自分ひとりで作ったことがないからだ。

本来ならトイレから作るべきだと思う。それは最も必需だ。現状をいえば、小はそのへんでし放題だが、大はコンビニや道の駅のトイレを買い物ついでに使わせてもらっている。申し訳ない。それにコンビニや道の駅までは車で10分以上かかり、いちいち面倒でもある。野糞に興味を持ち、偉大なる糞土師・伊沢正名さんの著書を読んだり、講演を聞いたりもしたが、まだ実行できずにいる。ちなみにわが末っ子は、小屋作りを始めた当初、たびたび天才的な野糞ぶりをぼくに見せつけ、憧れを抱かせた。シャベルで穴を掘り、そのシャベルを地面に突き刺して身体をもたせかけ中腰になったかと思うと、あっという間に用を足し、土を埋め戻す。一連の流れるような動きに感動を覚えさえした。しかしもうすぐ12歳になろうとする彼女がその感動を与えてくれることはもうない。やはりトイレから作るべきなのだろう。

だがぼくは、キッチンを作り始めてしまった。キッチン作りのほうがトイレ作りより楽しそうだからだ。必要なのは間違いなくトイレだ。でも作りたいのはキッチンなのだ。だから先にキッチンを作る。ここにDIYのひとつの真理がある。なんつって。

実際のところ、トイレの構造についてはちょっと迷っている。上水道も下水道もないこの地で、どういうトイレを作るか。コンポストトイレにしたいとは思っているけれど。一方、キッチンは手を着けやすい。いや正確にいえば、キッチンの花形、ピザ窯に手を着けやすいのだ。というのも、ぼくが携わるDIY雑誌『ドゥーパ!』でピザ窯特集は人気企画。何度かピザ窯作りに参加したし、いくつかの手作りピザ窯を取材した。なんとなく、要領は頭に入っているのだ。

そんなわけで、ぼくはピザ窯を中心としたアウトドアキッチンを作り始めた。山のふもとの小屋のキッチンといえば、アウトドアキッチンに限る。開放的で気持ちいいし、室内に作るよりも気を遣わなくて済む。外だと冬は寒いとか、夏は虫が多いとか、余計なことは考えない。小屋で暮らすことは、暮らしを遊ぶことだ。現代の常識らしき発想にとらわれて、そのことをスポイルしてはいけない。もし困ったことが起きれば、そのときに対処すればいい。





まずは重労働なのに地味な土台作りから

2017年9月7日
少し遅めの夏休みを取り、三重県南部にある小屋に向かう。ひとり軽トラで。最近はひとりぼっちが多い。子どもたちは部活や習い事で忙しい。当然、妻も子どもを置いて家を空けるわけにはいかない。ああ、子どもたちが遊ぶ声を聞きながら作業し、家族みんなで温泉に行き、そのあとに飲むビールよ。これほど旨いものはないのだが、ひとりではその味もちょっと落ちる。

初日は長時間の運転の疲れもあるので、資材を買いそろえられればOKとする。といっても、資材の買い出しにはそれなりの労力を要するものだ。これまでの小屋作りを振り返って、われながらよくここまで作ったなとも思うが、それ以前によくこれだけの資材を運んだなと思う。今回用意する資材はアウトドアキッチンの土台分。コンクリートブロック76個、セメント(25㎏入り)3袋、砂(20㎏入り)9袋、バラス(20㎏入り)10袋、鉄筋。こうして文字で見てもピンとこないかもしれない。ぼく自身いつもそうだ。あらかじめ買い物リストを書き出したときは平然としたものだが、ホームセンターで現物のボリュームを目の当たりにしてガク然とするのだ。こんな大量、運べませんよ~、と発注者である自分を恨むこともたびたびだ。今回はこの量の資材を、軽トラで2回に分けて運び終えた。

9月8日、9日
アウトドアキッチンの土台作りを始める。が、実はキッチンの設計はちゃんとできていない。完全に見切り発車だ。とりあえず屋根の支柱の間いっぱいにブロックを積んでおけば、なんとかなるんじゃないだろうか。高さは3段だとちょっと低そうなので4段積みに。

まず地面を掘り、掘ったところを突き固める。そこにバラス(砕石)を充填し、突き固める。そしたらモルタルを敷いて、ブロックを積んでいく。モルタルはセメント1:砂3の割合(重量比ではなく体積比)で混ぜ、水を加えて練ったもの。プロは施工条件によってセメントと砂の混合比を変えるそうだが、ぼくにそのノウハウはない。

モルタルを練るには、電動かくはん機を使うと速い。ミキサーがあればなおラクだ。だが、小屋にある電力は小さなソーラー発電システムで作ったもの。充電はできるが、電動工具のモーターを動かすのは荷が重い。だからこれまでの小屋作りに使った電動工具はすべてバッテリー式だ。インパクトドライバーに丸ノコ、ディスクグラインダー…そして残念ながら、バッテリー式かくはん機は持っていない。

そうなると人力でモルタルを練ることになる。トロ舟というプラスチック製の容器にセメントと砂を入れ、練りクワという道具で混ぜる。さらに水を加え、ほどよい硬さに練る。これを何回も繰り返すと、疲労度はなかなかのもの。DIY集団・ドゥーパ!編集部では敬遠されがちな作業のひとつだ。

残暑の中、ひとり黙々と練りクワを動かす。あー疲れた、と腰を伸ばすたびに、周囲の自然が目に入るのが救いだ。とくに、すぐ近くにそびえる山が青空に映えて心を満たしてくれる。気持ちいいなぁと、その都度思う。

ブロック積みはコツがわかると楽しい。まずブロックゴテという三角形のコテでモルタルを筋状にすくい…と文字で書き進めても理解しづらいだろうからやめておこう。知りたい方は、検索すれば、わかりやすい解説を見つけられるでしょう。とにかく何事もコツがわかると楽しいものだが、それにしても、素人が76個のブロックを積むのは骨が折れる。2日がかりでようやく想定した形に仕上げることができた。

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土台の幅は約3m。幅60㎝のコンクリート平板が市販されているので、それを載せることを想定して、60㎝間隔で縦向きにブロックを積んだ。一番左の区画を作業台に、左から二つ目と三つ目をピザ窯に、四つ目をかまどに、五つ目をシンクに…と考えているが、どうなるかはまだわからない





年末のピザパーティーを夢見て強行軍

10月7日、8日
3連休を利用してピザ窯の土台作りを進める。ぼくが作ろうとしている窯は、単層のドーム型だ。できれば窯のまわりを断熱層で覆い、熱が逃げにくいものにしたい。それを考えると土台の面積は広いほうがいい。1ヶ月前に作ったピザ窯の土台は、前掲の写真キャプションのとおり2区画を使うとして幅1.2m×奥行1m足らず。これでは奥行が小さい気がしてきた。正直なところ、もうしばらくブロック積みはしたくなかったが、このまま進めると作り終えてから後悔する気がして決意。手前に横向きにブロックを積み足すことに。そうして拡張したブロック積みの上に幅60㎝×奥行30㎝のコンクリート平板を8枚並べ、幅1.2m×奥行1.2mの土台を作った。

土台ができたら、その上に窯の床を作る。耐火レンガを50個並べ、目地には耐火キャスタブルという、耐火性のあるセメント類を使う。その耐火キャスタブルは、骨材の粒が砂より大きくて目地に入れづらかったり、水で練ったあと固まり始めるのが速かったりと、ちょっと扱いづらくて苦労したが、ひとまず床まで作り終えた。

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コンクリート平板の上に耐火レンガを並べて窯の床を作った

12月16日
この年末は久しぶりに家族そろって小屋に行けることになった。せっかくだから、そのときにピザ窯をデビューさせたい。そう思い、師走の慌ただしい中、窯作りを進めることにした。金曜日の夜に横浜の家を出発し、土曜日に作業、日曜日に帰宅するという強行軍だが、作業内容はそんなに大変なものではない。床の上に窯のドームを作るだけだ。断熱層は後々に作るとして、とりあえずドームができればピザを焼ける。

と思っていたら、床の上にドームを作るだけの作業がけっこう大変だった。ドゥーパ!のピザ窯作り解説記事で施工を担当していただいた庭師・木村博明さんが簡単そうに作るものだから、すっかり自分もできる気になっていたが、やっぱり見るとやるとは大違い。やってみなければわからないことがいろいろある。冬至直前の早い日没にせかされながら、丸1日がかりでどうにか作業を終えることができた。

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横浜の家で作っておいた木型を使い、カットした耐火レンガでアーチを作る

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砂でドームの型を作る。砂の使用量を削減するために木っ端でかさ上げしているが、この形を作るのに予想以上に手間取った

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濡らした新聞紙で型を覆い、耐火キャスタブルをコテで塗りつける。使用した耐火キャスタブルは25㎏入り3袋。最終的に5㎝くらいの厚さで塗った

なお、この日の作業手順は、カットした耐火レンガでアーチを組んで窯口を作る→砂を盛ってドームの型を作る→濡らした新聞紙で砂の型を覆い、耐火キャスタブルを塗りつける、というもの。そのまま数日おけば、塗りつけた耐火キャスタブルが固まってドームが完成するというわけだ。もちろん、そこまでじっと見届けるわけにはいかないので、そうなると信じ、いったん小屋を後にしたばかりの今、この原稿を書いている。

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ドーム型に耐火キャスタブルを塗り終えて、翌朝の状態。表面の仕上げがきれいじゃないのは、きれいに仕上げる腕がないからだが、どうせ後々に断熱層で隠れるはずだから気にしない…ことにしよう

さぁ、年末に小屋に行けば、ドームは無事に完成しているのか?そして窯はちゃんと使えるのか?ピザの味はどうだ?どうなんだ?…親父は今からワクワクドキドキしているのだ。

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