築100年を超え、歴史にゆかりある家系のお住まいは数年前より空き家となっていました。
近所に住まわれていた、住まい手にとって、この建物は小さな頃からの憧れでもあったそうです。長屋門に蔵を持つ構造の建物は、その昔、庄屋さんだったそうです。もっと遡ると戦国武将の家系に行き着くそうです。住まい手は年貢として米が持ち込まれていたのを覚えているとも、話して下さいました。
そんな憧れの建物の行く先を重んじた住まい手は一大決心をされ、この建物を購入されました。
築100年以上と伺い、少し構えていましたが、内部を詳細に調査してみると、20~30年ほど前に大きくリフォームされた痕跡があちらこちらからに見受けられました。
コンクリートの基礎が打たれ、和室の設えも、その頃に一新されたようで歴史的価値を生かした形の工事とすることも考えましたが、その面影を伺えるのは、かろうじて構造体のみです。であるなら、今様に暮らしやすく一新すべきとの判断を下しました。
母屋の南側には、使用時間の長いリビングダイニングキッチンを設け、北側には三間続きの和室を設けました。東側には水回りを設け、その近くに寝室を配置し、生活動線がコンパクトになるようにしています。又、長屋門と蔵は、将来地域のコミュニケーション拠点と出来るようにも配慮しています。
母屋は、定年後のご夫婦が安心安全に暮らせるようLDKや寝室、水回りの動線計画に配慮しています。
LDKに隣接する和室の続き間からは南の主庭と北庭を見通せる落ち着いた空間に仕上げています。
道路に面した蔵や長屋門、付随する納屋は住まい手が望まれた地域活性化の場となるように多くの人が集まれるように整えました。
住まい手は和室の続き間を要求されました。しかし、以前の構造では柱も多く、それを実現させるには大掛かりな構造補強が必要でした。補強工事が大掛かりになると思っていましたが、案外少人数で済みました。構造体で門型のフレームを造り、新設した土台の上に乗せるだけの作業があっけなく済み、ほっとしたのを思い出します。