幾つものアート作品や植栽が、生活の中に溶け込み、空間と調和するように計画した住宅である。アートと建築を一体として考え、各作品に応じたスケール感の空間を生活の場の中につくっている。
また、この地域は、土地区画整理が行われ、昔の街区や道路の痕跡は消されている。商品化住宅や、均質な事務所、集合住宅、巨大な工場、整形の公園。これらが混在した平たい新しい景色に対して、住宅として、というよりは、用途が判然としない“何ものでもない量塊のような佇まいの建築が適すると考えた。なので、用途から導かれる建築イメージに近づいてしまうのではなく、敷地条件や外部の取り込み方を検討する中で、求められる機能を空間に埋め込むような流れで設計を進めた。
ここでは、九つの「庭」(=外部)を内包する建物を考えた。外形的には、閉じた殻のように内部の生活を守りつつ、その内側では多様な九つの「庭」が広がる。部屋固有の「庭」や、連なりのある「庭」が各階に散らばり、生活を彩る。「庭」が混在した建物では、生活の幾つもの場面が外部環境と密接である。木々の揺らめきや、木漏れ日。トップライトに落ちる雨粒。水盤の波紋。直射光と壁から反射した光。
外部環境を感じつつ、住宅としてのプライバシーを保つ。外と繋がりながら閉じる。開きながら守る。囲われた中で、外部が混ざり合うような住宅が、この場所に調和すると考えた。
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