実家から譲られたのは、畑に囲まれた500㎡の大きな敷地。ドッグランをはじめ、家の内外の庭が犬たちの感覚を刺激する。
text_ Hiroko Akamatsu photograph_ Takashi Daibo
ドンコロの家
(兵庫県加西市)
- 設計
- シキナミカズヤ建築研究所+OUVI
- 住人データ
- 夫(38歳)会社経営、妻(35歳)写真家
レッドシダーを張った焦茶の外壁。正面に設けたガレージの木製扉が納屋のような印象を醸し出す。
この家に暮らす藤岡さんご夫妻は、シキナミカズヤ建築研究所の敷浪一哉さんに設計を依頼。「田舎の景色になじむ、小屋のような家にしては」という提案に夫婦揃って賛同した。
13歳で見送ったコロッチにはじまり、実家やペットOK のマンションで長年フレンチブルと一緒に暮らして来た寿美さん。同じくフレンチブルを愛する敷浪さんとは、敷浪さんの奥さまとインターネット上で交流していたことがきっかけで知り合った。そのつながりで見た敷浪さんの住宅系コラムの記事に共感。実際に建てられた家の写真も見て「いつか家を建てるときは敷浪さんに依頼しよう」と決めていた。7年前に大剛さんとの結婚が決まり、新居用に大剛さんの実家前の土地を譲ってもらうことになって、念願がかなった。
約500㎡という広さを活かして敷浪さんが提案したのは、内と外がいくつもの庭でゆるやかにつながる家。塀で囲んだドッグランをはじめ、玄関ドアの前の小さな庭や、ダイニング横の坪庭、家の前庭など、犬が外の空気を感じられるスペースをたくさん設けた。家の中もトイレと収納の周りを細い通路で回遊できたり、行き止まりのような書斎があったり、隙間のような小さな空間があったりと、まるで迷路のような間取り。犬たちが探索を楽しむための工夫だ。
床を砂利の洗い出しで仕上げた広々としたリビングは、 大きな窓で外のドッグランとつながり、半屋外のような趣き。ひんやりとして滑りにくい砂利の床は、暑さが苦手で脚の関節が弱いフレンチブルにとって最適だ。構造材をむき出しにした天井と相まって、個性的な空間に仕上がった。一角には大剛さんたっての希望で、薪ストーブを設置した。
モルタル、無垢材のフローリング、砂利の洗い出しと、3種類の床の好きな場所で、くつろぐ犬たちと猫。部屋のあちこちで育てている植物が、みずみずしい彩りを添える。
犬と暮らすことの楽しさを教えてくれた今は亡き愛犬、どんぐりとコロッチにちなんで、『ドンコロの家』と命名。結婚して初めて犬や猫と暮らすようになった大剛さんは、今では一緒に眠るほど仲良くなった。
「お二人が自分たちらしくこの家を住みこなしてくれているのが嬉しいですね」と、敷浪さんは目を細める。
専門家プロフィール
1975年 北海道生まれ。98年 東海大学工学部建築学科卒業。98年~ YOURSPROJECT 勤務。2001年~ 工務店勤務。04年~(有)シキナミカズヤ建築研究所設立。すまいの環境デザインアワード2011住空間デザイン優秀賞、住まいの環境デザインアワード2016LiVES賞受賞。
シキナミカズヤ建築研究所
- 住所
- 神奈川県横浜市中区黄金町2・8・5黄金ミニレジデンスB
- TEL/FAX
- 050・3488・5273
- shikinami@shikinami.net
- URL
- www.shikinami.net
〈物件名〉ドンコロの家〈所在地〉兵庫県加西市〈居住者構成〉夫婦+犬3匹、猫1匹、亀1匹〈用途地域〉市街化調整区域〈建物規模〉2階建て〈主要構造〉木造軸組〈敷地面積〉499.00㎡〈建築面積〉117.59㎡〈各階床面積〉1階 94.19㎡、2階 13.45㎡ 計 107.64㎡〈建蔽率〉23.57%(許容 60%)〈容積率〉21.58%(許容 160%)〈設計〉シキナミカズヤ建築研究所+ OUVI〈構造設計〉OUVI〈施工〉神東建設〈設計期間〉4年5ヶ月〈工事期間〉8ヶ月〈竣工〉2014年〈総工費〉2,500万円
※この記事はLiVES Vol.80に掲載されたものを転載しています。
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