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【連載】DIY的暮らしのつくりかた
2016年11月 1日

暮らしのものさしを再構築してつくる、食べものやエネルギーをDIYする未来|伊藤菜衣子のDIY的札幌暮らし

DIY的暮らしのつくりかた

「伊藤菜衣子のDIY的札幌暮らし」は、札幌で日本中のクライアントのための広告制作をしながら、”暮らしかたの冒険” = ”暮らしかたの再編集” をしている伊藤菜衣子さんによる、ちょうどよい暮らしを探す冒険記です。

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ある日のまかない。パスタ、庭のワイルドなサラダなど。

食べものやエネルギーの自給と聞いて、みなさん、とてつもなく大変なものをイメージしますよね?わたしはドラマ《北の国から》の黒板五郎を思い出します。かれこれ3年、トライしてみて、実は今の働きかた、暮らしかた、家のあり方の”ものさし”で測っているからじゃないか、なんてことを最近思う次第。ということで、まだ未確認の妄想部分も多いのですが、思考錯誤しながら、理想に近づいている最近の冒険を紹介します。

エネルギーをほぼ買わない家は、暮らしを豊かにする。防災にも強くなる。

まずは、エネルギー。前回、暖房エネルギーを薪割りできる分だけで済むように《高性能なエコハウス》に《断熱リノベーション》したことを紹介しました。ゆくゆくは、給湯も太陽熱温水器と薪ストーブのハイブリッドに。基本は太陽熱でお湯をつくり、冬の天気の悪い日は、薪ストーブの熱も利用する予定です。ドイツやオーストリアでは、調理も給湯もできる薪やペレットのストーブが30万円くらいから普通に売っているそうです。うらやましい。

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薪ストーブ。床下に暖気を回そうと試行錯誤したダクトがギラギラ…

あとは、太陽光パネルを導入して、あまった電気は電気自動車に蓄電、という構想も。例えば日産リーフは中古で30万円ほど。満タンに充電しても50kmくらいしか走行できない、というデメリットがあるのですが、そもそもわが家の暮らし的にはそれで十分。車を使うのは保育園の送り迎えと最寄り駅まで、そして祖母の家くらい。

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近所に住む友人のお母様が、山積みの伐採木を見つけ、造園屋さんに話をつけてくれて、わが家にやってきた。こうして周りの人たちもわが家の薪ハントをしてくれるようになり、年々薪入手のハードルが下がっていく。

自分の暮らしを見つめ直して、今の技術と照らし合わせてみると、あらゆるものがオフグリッドになる可能性を秘めています。日本が人口減少する中で、あらゆるインフラの維持が問題になっていますが、こうして家々がオフグリッドしていくと、人口減少は危機の側面だけでなく、豊かな暮らしへのチャンスにも見えてきたりもします。そして、災害にも強くなります。

農家になりたいんじゃない。食べものをDIYしたいだけなんだ。

次は食べもののDIY。畑作業って、年中、ずーーーっと手がかかるものだと思っていたのですが、有機農場で3年働いていた畑のシェアメイト藤田くんから教えてもらって、目から鱗だったのは、ポイントがある、ということ。例えば雑草取りも、効果的な時期と不毛な時期があるのです。

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今年はビーツが豊作で、ボルシチ三昧。息子が通う保育園の給食にも登場し、来年は保育園の畑でもみんなでつくることに。

もちろん、農を生業としてやっていくならば、害虫や病気など、あらゆることを即時見つけて解決する必要があるので、たぶんずっと手がかかると思う。だから農薬を使ったり、化学肥料を使ったり、リスクヘッジとしていろいろな試行錯誤があったこともやってみてわかったのです。だけど、わたしたちの場合、行き当たりばったりでも大丈夫。大根が豊作の年は大根を春まで楽しんで、にんにくが1個も取れなかったら農家の友人から取り寄せる。そうやって、その時々の状況に料理を合わせつつ、ビギナーズラックとプロの安定感に感謝しながら、食べて行くのです。

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近所の師匠”やぎや”の畑。《農業》とは一線を画すワイルドで美しい風景

DIY的な暮らしって、ゆるふわじゃできない…。スケジュール管理が要

こんな暮らしを実現するために、暮らしかた冒険家は、スケジュール管理で工夫しています(もっと行き当たりばったりでやってると思われがちなのですが…)。Googleカレンダーを使っているのですが、畑作業の年間予定をデフォルトで表示。仕事を受注した時に、そのスケジュールとにらめっこしながら、畑の忙しくない時期に夫の仕事を詰め込みます。あとは、修正作業やちょっとした案件は雨の日に対応といった調子。主に畑作業担当は夫ですが、ウェブのコーディングがメインの仕事。夫の仕事日までに、ウェブのあらゆる要素をクライアントと詰めて、最短距離でウェブができるようにしておく、というのが畑作業をしないわたしの仕事。こうして作業分担することで、クライアントへの迷惑も最小限に、食べものと薪割りのDIYが可能になるのです。

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耕運機を操る夫。忙しい年は、近所の農家さんに耕運してもらうという臨機応変さも。

食べものとエネルギーのDIYは、働きかたのDIYなしには不可能

働きかたのマインドもシフト中。モノづくりの仕事をしていると、クライアントにも、生活者にも伝わらない、つくり手のマニアックなこだわりみたいなものとうまく折り合いをつけられず、とてつもない時間をかけていたりするものです。客観と主観のさじ加減が大事だなぁ、と。

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子どもが生まれたこともあり、人生のすべての時間を仕事に費やすこともできなくなりました。そう、時間が無限ではないということを、とにかく思い知ったのです。その上、食べものもエネルギーもDIYも。となると、価値観やものさしを見直していく必要があります。これからの暮らしかたと働きかたを再構築するという冒険は続きます。

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《高性能なエコハウス》や《給湯と暖房と床暖房を賄うペレットストーブ》について、編集を手がけた本《あたらしい家づくりの教科書》に凝縮しました。ぜひ。

《あたらしい家づくりの教科書》
著者:前 真之、松尾 和也、水上 修一、岩前 篤、今泉 太爾、竹内 昌義、伊礼 智、森 みわ、三浦 祐成
発行:新建新聞社
編集:伊藤菜衣子
価格:1,500円

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