建築家と家づくり 好きに暮らそう SuMiKa
記事作成・更新日: 2017年 3月31日

家づくりの鍵は、ともに人生を歩める「もの」にある

芦屋駅から徒歩5分、都会と自然を臨む地にシックなマンションが佇んでいます。その一室を購入し、自宅兼アトリエとしてリノベーションしたというフラワーコーディネーターの綱葉子(つな ようこ)さん。勤務先では事業部の責任者として、プライベートではアレンジメントの講師として、年に一度渡仏し技術の研鑽に勤しむなど、多忙な日々を過ごしています。「プライベートレッスンの開始」を見据えて移り住んだという綱さんは、この空間にどんな思いやこだわりを反映させたのでしょうか。



「暮らしと花の背景」になるデザイン


「阪神間、駅から徒歩5分、住戸数が少ない駐車場付きの低層建築」。こうした条件をもとに物件探しを行い、8カ月目にしてようやく出会えたのが現在のマンションでした。

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フラワーコーディネーター 綱葉子(つな ようこ)さん

足を踏み入れた瞬間に『ここだ!』と感じました。条件にぴったりですし、山が見える景色や光の印象、海に近い立地も気に入りました

改修に関わるデザインは、知人である奥和田健建築設計事務所の奥和田健さんに依頼。間仕切りが多い昔ながらの間取りを、「暮らしと花の背景」をテーマとして生まれ変わらせてもらうことにしました。

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居間兼アトリエにて。グレーの壁面と無垢材、照明のバランスが美しい。

リラックスできる家、ゲストがくつろげて癒される場にしたいとお話しました。家は人がいらしてこそ成立するものだと思いますから、自分の個性や嗜好性が出すぎない、ニュートラルでお花や緑が栄える空間にと(綱さん)

この手がかりの中から奥和田さんが最も重視したのは壁面です。花や緑が最も映える色、また窓から入る夕陽の美しさを引き立てる色を考慮し、光触媒塗料から赤みを少し含んだグレーを選択。さらに光を適度に吸収する仕上げ技法を組み合わせ、落ち着いた印象へとまとめました。

仕上げひとつとっても空間の印象は大きく変わります。今回はご本人のお話から感じた落ち着いた印象、拝見した丁寧なものづくりの様子などを参考に、艶を抑える技法がいいだろうと捉えました(奥和田さん)

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作品撮影や花材準備、荷物室など自由に使える土間。

一方、住居兼アトリエとしての柔軟性を意識した間取りも注目したい点です。玄関から居間、土間に回遊できる動線も含め、多様な生活のかたちに対応する構造となっています。

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奥和田健建築設計事務所 建築士 奥和田健さん

僕の仕事は背景を整えることです。ですから一番の軸を『花や緑の背景になる空間づくり』に据え、その上で綱さんの雰囲気を活かすよう細部を決め込んでいきました(奥和田さん)



建築家と住む人の感性が空間を形づくる


什器や照明などは、内装にあう候補を奥和田さんが数点選んだのち、2人で相談して決める流れを取りました。キッチンハウスのオーダーキッチンとFLOS「tatou」の照明は、綱さんが特にこだわったというお気に入りの一品です。

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木目が面白いキッチン

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ボリューム感のある照明

アレンジメントのデモンストレーションを行う場所ですし、今後は料理研究家の方とのコラボレーションレッスンを考えていることもあり、キッチンにはこだわりました。このトリュフビーチの突板の突き板も世界にひとつしかない柄と聞いています(綱さん)

また、女性的な丸みを帯びた照明も、無機質な印象に転びがちな空間で美しいアクセントとなっています。

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KOHLER:Composed Collection(K-73057-4ND without drain)

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KOHLER:Beitou Collection(K-99858T-4-CP)

この物件の個性は、ある種奥和田さんのデザインと綱さんの感性が融合することで生み出されているとも言えるでしょう。たとえば、アメリカのバス・トイレタリーブランドKOHLERの最新モデル「Beitou」と「Composed」を用いた浴室洗面台やトイレ手洗の水栓など、細部のアイテム選びもその一部です。

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浴室洗面台のComposed。無駄のないデザインを陶器の受け鉢と合わせることで清潔感を感じさせる。

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トイレ手洗のBeitou。アメリカ系台湾人デザイナーによるオリエンタルモダンなデザインはアジア太平洋地域限定。川のせせらぎを感じさせる吐水設計になっている。

この2カ所は、来客や生徒さんが実際に手を触れる部分です。ですから、ただ手を洗う場ではなく、水の流れ方に豊かさを感じられる場にしたいと考えました。特にトイレに設置したBeitouは、水の流れ方や水切れがとても美しい。川のせせらぎのような有機的な水音も、植物を扱うアトリエ兼住居には非常に適していると思います(奥和田さん)

一方、生活雑貨で煩雑になりがちな浴室洗面台には、シンプルで無駄のない造型のComposedを配置。どちらも既存のKOHLERの印象を一新する、現代的なシリーズです。

Composedはどんな場所にもなじむ、必要充分なデザインがいいですね。一方のBeitouは空間に対してサイズが若干大きめですが、個性を活かすには生活感が見えにくいトイレがいいだろうと考えました。座ると必ず目に入る位置ですから、ゲストの皆さんにも二重三重の驚きを感じてもらえると思います(奥和田さん)



「その存在がいずれ大きな価値となる」もの選びをしたい


その他にも、浴室は四角、トイレは楕円と場所で受け鉢の形を変えるなど、さまざまなこだわりが隠れる綱さん宅。テレビの収納や壁の凹みを活用したアレンジメント作品の撮影スペースなど、隠す、消すといった視覚的要素を応用した箇所もあります。
行き届いた設えに感じられるのは、空間とデザイン、家具や什器など、すべてを輝かせる上で重要な鍵は「調和」にあるということです。そして、それらを使いこなす住まい手の感性の鋭さも不可欠であると。

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部屋には好きなものしか置きたくないんです。使い捨てではなく、私と長い時を過ごしてくれて、その存在がいつしか価値を持つようなもの。意識しているわけではないのですが、常にそういったものを自然に選んでいる気がします(綱さん)

ご自身のもの選びの基準をこう語った綱さん。好きなものに囲まれ、自然を実感できるこの部屋を拠点とし、都会に暮らす人に向けて花や緑のよさを伝えていきたい、とこれからを考えているそうです。


Text 木村早苗 Photo Yusuke Nishikawa





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KOHLERは「優雅な生活」のコンセプトを軸に、魅力的かつ高品質な商品とサービスを提供し、お客様に心のゆとりを与えます。
https://kohler-nssbm.jp/

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