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2017年 3月27日

木材、瓦、畳、タイル…。日本の職人がつくった自然素材をつかう、板倉工法の家「KOTT」

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KOTT(コット)の家(撮影:KOZO TAKAYAMA)

正倉院や伊勢神宮など、貴重な美術品などを長きにわたって守るための建築物は、板倉工法で建てられてきました。大切な穀物が保管される蔵(くら)も、同じ工法です。

板倉工法、と聞くと耳慣れない感じがするかもしれませんが、この日本古来の優れた木造建築技術がいま、現代の建築技術としてあらたに注目を集めています。

そこで今回は、神奈川県鎌倉市にオープンした板倉工法の家「KOTT(コット)」を訪れて、板倉工法の家がなぜ注目を集めているのかをひも解いていきたいと思います。

かつては「平らな板」が貴重だった

まずは、自分が大工になったつもりで、電気や機械のない時代を想像してみてください。森で木を切り倒したら枝を落とし、寝かして乾燥させます。もう何度森へ足を運んだでしょうか。運搬する車もないため斜面を滑らせ、馬に引かせ、ようやく手元にある1本の木。さあいよいよ製材です。木の表面を削り、ノコギリやカンナで板を少しずつ削り出し、平らにしていきます。建物を建てるには、天井や床、壁に木をつかうなら壁の分まで、気が遠くなるほど平らな板をつかいます。家を建てるのに時間が掛かるのは、平らな板をつくるのに手間が掛かるからなのです。

ここで気づくのは、平らな板が、とんでもなく貴重なものだったということです。この貴重な板をふんだんにつかえるのは、神様にまつわるものか、権力とお金がある場合。板と同様に貴重な穀物を保管する蔵も、ふんだんに板がつかわれました。

板倉工法とは、柱と柱の間に溝をつくり、そこに貴重である平らな厚い板を落とし込む工法です。床や天井などもすべてこの厚板で構成します。大切な美術品や穀物を長く保管するための建築物がこの工法でつくられたのは、板倉工法が自然の断熱、調湿効果に優れているためなのです。

機械化が進んだいま、なぜ板倉工法で建てないのか

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建設中のKOTTの家(撮影:KOZO TAKAYAMA)

かつての一般的な日本家屋は、平らな板をつかうのは床と天井くらいで、屋根は茅(かや)をふき、壁は土で左官されていました。

木材はその土地によってさまざまですが、多くは杉や松がつかわれました。特に杉は加工がしやすく、船や桶(おけ)といった暮らしに必要なものに好んでつかわれたことから、平安時代にはすでに植林が始まり、近年になってからは、戦後の復興のために成長が早い杉の植林が推奨された背景もあって、杉の人工林は現在、国土の12%に及ぶほど豊富な木材資源であると言われています。

ところが戦後の高度経済成長期に、安価な海外の木材が大量輸入されるようになったことで、国内で植林された杉がつかわれなくなってしまいます。同時に、石膏ボードのような加工しやすく燃えにくい新建材があらわれたことで、「梁(はり)と柱と土壁」でつくる住宅は、あっという間に「梁と柱と新建材」に変わっていきました。

豊富な森林資源をもち、木とともに暮らしてきたはずなのに、林業のみならず製材業も、そして大切なものを守るためにつかわれてきた、伝統的な板倉工法も廃れつつあったのです。

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木は、切り倒されたあとも、しっかりとその木肌で呼吸をしている。KOTTの家につかわれる徳島の杉板は、急斜面で育つため粘り強さがあるだけでなく、日本有数の雨が多い環境のため、腐りにくく長持ちするのも特徴だそう

森の循環を、自分たちの手で取り戻す

シックハウス症候群やアトピー性皮膚炎など、化学物質を含む新建材が引き起こすとされるさまざまな健康上の問題が表面化している今、自然素材で家を建てたいと考えるのは当然のことと言えそうです。

そこで、国産の杉の無垢材だけでつくる板倉工法をベースに、瓦や畳、タイルなども日本の職人がつくった自然素材をつかい、さらに耐震性や断熱性など、現代の建築基準に合うように再定義されたのが、「KOTT(コット)」の家です。

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KOTTの家には、徳島の杉のほか、強度があり防水性に優れる淡路の黒いぶし瓦、調湿と消臭機能に優れる宮崎の白州壁材、い草の産地である熊本の畳表、断熱性能に優れる富山の木製窓など、地域の自然素材がつかわれている(撮影:KOZO TAKAYAMA)

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KOTTの家の木製窓(撮影:KOZO TAKAYAMA)

KOTTの家は、ふつうの木造住宅と比べて2〜3倍の木材をつかうといいます。戦後に植林された杉は樹齢50年以上の大木となり、歴史上稀にみる木材資源に恵まれた時代。ところが、ちょうど樹齢40〜50年の大きさである直径20〜28cmくらいの「中目材(なかめざい)」は、国内の丸太の6割を占めるにも関わらず、そのサイズに合う需要が少ないため、中目材の活用は大きな社会課題にもなっています。その大きく育った杉をたくさんつかうことが、シンプルに森の循環を取り戻すことにつながるのです。

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KOTTの家。杉の厚板をつかうことで防火性に優れ、丈夫で長持ち。さらには木材が持つ本来の蓄熱効果と外張り断熱で、冬暖かく、夏は涼しいのだそう(撮影:KOZO TAKAYAMA)

“消費”のしかたで社会を変える

さて、もう一度時代をさかのぼることにしましょう。貴重な平らな板をつかうため、かつては何世代も住み継いできた家。建物が解体されても、それらの古材をまるごと譲ってもらい、また家を建てることがふつうにされてきました。民家の屋根裏には、つかっていない平らな板が保管されていることも珍しくなかったと聞きます。

いま、私たちの住まいや暮らしはどうでしょう。古くなったものを再利用しないということを言いたいのではありません。そもそも、再利用できないものであることが多いのです。住宅の解体時には大量の廃材が出ますが、そのほとんどは最終処分場、つまり埋め立て地へと向かいます。

燃えないもの、再生できないもの、有害なもの……。石油や原発といったものに依存することなく、すでに豊富な資源として目の前にある杉をつかう、そうしたシンプルな選択が必要なのではないでしょうか。

いまこの時代の住まいの居心地のよさとは、デザインでつくられるものではなく、木の匂いや質感だけでつくられるものでもないだろうと思います。住宅という大きな消費において、そこにどんな持続可能な社会の“種”を見いだせるか、そしてその“種”を実際に自分自身がまくことができるのかどうかが、深く関係していると思うのです。

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徳島県那賀川上流の植林された森

ちなみにKOTT(コット)のKOは木立、木洩れ日などの「木」で、戸建ての「戸」、つまり「家」のこと。そしてTという文字には、家に必要な柱と梁を象徴すると同時に“いつも木のことを考え(Think)、木に感謝する(Thank)気持ちを忘れない”という思いがそのブランド名に込められているそうです。

家を建てたいと考えている人はもちろん、自然素材の家を体感してみたい人は、神奈川県鎌倉市の実際に宿泊できるモデルハウスをぜひ見学してみてください。家を建てるときに自分が何を大切にしたいのかが、きっと見えてきますよ。

KOTTの家について詳しくはこちら >>https://kott.jp/

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