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記事作成・更新日: 2017年 4月22日

“ちょうどいい”住まいを求め、鎌倉の築古平屋に出会う

吉田邸

築60年のゆるりとした雰囲気の平屋を手に入れて、気負わず焦らずDIYリノベーション。自分たちにとっての「ちょうどいい」を求めた夫婦の家づくり。

text_ Satoko Hatano photograph_ Osamu Kurihara

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キッチン脇の縁側の一角にみどりさんの書斎がある。傷もシミも味わい深い既存床と古家具がよく似合う。縁側と居室の間にあった障子を窓側に移して再利用。

吉田邸

(神奈川県鎌倉市)

設計
野口浩太デザイン事務所
住人データ
夫(33歳)会社員、妻(33歳)料理人

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玄関横の板の間は将崇さんの趣味部屋に。板材や煉瓦を使った簡易な収納にサーフボードや靴が収まる。杉板が美しい竿縁天井は剥がさずにそのまま使用。

6年前から鎌倉に住む吉田将崇さんとみどりさんご夫妻は、知人も多く暮らしやすい鎌倉の地に家を構えることを決意。コストを抑えつつ好みの家を手に入れる手段として、中古住宅のリノベーションを選択し、物件探しを始めた。

鎌倉は邸宅風の中古住宅が多くて自分たちにはしっくりこない。そうしたなか、湘南エリアの不動産会社、ココハウスの紹介でこの家に出会い、ちょうどいいと思ったんです

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家庭菜園もできる広い庭。縁側を含め、外構は既存のまま。

2人が選んだのは、谷間の集落に建つ築60年の平屋。切り妻屋根の下、畳の続間が縁側に沿って並ぶ大らかな間取りと、作為的な装飾のない簡潔な佇まいが特徴だ。元は戦後の神奈川県復興住宅で、最近まで人が住んでいて状態が良かったことも購入の決め手となった。

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縁側のもう一方の隅は将崇さんの図書コーナー。畳を剥がしたときに生じた廃材の杉荒板(下地板)を棚板に利用した。古い壁紙を貼った天井仕上げは既存のまま。

この家の診断から依頼したのは、地元の友人を通じて知り合った建築家の野口浩太さん。ご夫妻と同世代で、自転車や料理など共通の趣味をもつことなどから意気投合した。

皆で屋根裏掃除から始めたよね

家づくりの苦労を語りつつ、将崇さんと野口さんはどこか楽しげだ。

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押入れをAVシェルフに。棚板は本棚と同じ廃材の杉荒板。

限られたコストのなか、キッチンまわりを重点的に改修しています。断熱材の敷設など、必須工事のほかは、補修や壁塗りも含めてできるだけ吉田さんが手を動かしました

と野口さん。3つの和室と板の間、水まわりからなる既存の間取りを基盤に、北側のキッチンを南側の和室に移動。プロの料理人であるみどりさんの要望で、キッチンが中心のプランにつくり変えた。2つの和室を板張りのLDKにし、間仕切りの襖を外す簡単な操作で、LDKと和室、縁側がつながる開放的な空間を獲得。長さ約10mの縁側は書斎や図書室になり、将来は子どものデスクコーナーなど多用途に使う予定だ。

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庭に面した縁側にソファや本棚を置いて多目的に使用。

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国産間伐材を利用した合板(Jパネル)とステンレスを組み合わせたシンプルなキッチン。

設備と大工工事に1ヶ月。その後、壁の塗り替えや廃材を使った収納棚の造作など施主施工を敢行。週1回のペースで5ヶ月をかけた。

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合板を組み木のように使ったキッチンカウンターは、みどりさんの身長に合わせて設計。吊り収納は長尺ボルトとナットを使い、みどりさんが塗った棚板を固定した。

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2つの和室はフローリングのLDKに。襖と障子を外しLDK と和室、縁側がつながる開放感を得た。漆喰調のデュプロンを塗り直した壁は、吉田さんと野口さんの力作。

野口さんは家具製作から料理、自転車の組み立てまで何でも自分でやる。暮らしごとを人任せにしない姿勢は共感できたし、私たちがDIYをやり遂げる手本にもなりました

と口を揃えるご夫妻は、自ら手を動かす家づくりの充実感を得た様子。求めていた「ちょうどいい」家とは、そうした家づくりを全うできるスケールと、多様な住まい方を受け入れる柔軟さを備えていた。

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奥行き約1.3mの縁側は、読書スペースとしても活躍。壁のはしごは野口さんの手作り。

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洗面スペースの鏡や収納棚にも、廃材になった畳下の荒板を洗って使用している。

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〈物件名〉吉田邸〈所在地〉神奈川県鎌倉市〈居住者構成〉夫婦〈建物規模〉平屋建て〈主要構造〉木造〈築年数〉 60年以上〈建築面積〉約77㎡〈床面積〉合計 約77㎡〈設計〉野口浩太デザイン事務所〈施工〉なつめ工舎〈設計期間〉2ヶ月〈工事期間〉大工工事1ヶ月 / DIY工事5か月(おもに週1日作業)〈竣工〉2014年〈総工費〉約300 万円 ※設計・DIY監修費別


※この記事はLiVES Vol.83に掲載されたものを転載しています。

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