建築家と家づくり 好きに暮らそう SuMiKa
【連載】DIY的暮らしのつくりかた
2018年 1月24日

豊田大作の小屋二スト日記|第3回「自作の窯でピザを焼こう」

将来の住まいとするため、とある山のふもとにコツコツと小屋を作る40代男の手記。
目下アウトドアキッチンを製作中だが、久々に家族がそろった年末、いったん作業を休止してピザ窯パーティーに興じることに…。

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炎を抱く窯が青空に映える。果たしてピザは焼けるのか…?

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冬晴れの下、家族で初めてのピザ窯パーティー。写真を撮るぼくに代わって窯番をする長男は、年末というのにTシャツ姿だ





窯を温めるのも楽しみのうち?

2017年12月28日
昼過ぎに一年の仕事を納め、いそいそと出発。22時過ぎに小屋に到着。横浜から三重県南部までの長時間ドライブは疲れたが、1年ぶりに一家5人で小屋を訪れ、親父(ぼく)のテンションは上がる。…のを悟られまいと、努めて控えめに振る舞う。

これで2017年では6回目の小屋滞在となる。以前の5回はいずれもひとりきりだ。小屋に到着するのは決まって夜半で、闇に溶けた山々や、そこに棲む動物たちに見つめられているような気分でドアを静かに開けるとき、孤独ゆえの不安と高揚が押し寄せる。そのゾクゾクする感じがけっこう好きだ。

しかし今回はムードが違う。興奮気味の家族はなだれ込むように小屋に入り、最寄りのコンビニで仕入れた飲食物をビニール袋からワシャワシャと取り出し、「1年前の小屋とここが違う」だの「今、外で物音がした」だの大声で話しながら食べては飲む。ひとりの夜に漂う緊張感は、流れ込む隙間がない。もちろん親父(ぼく)としては、これはこれで愉快なばかり。…なのを悟られまいとしても、アルコールが入ってしまえばもう無理だ。最後は誰よりも上機嫌で寝袋にもぐり込んだ。

12月29日
小屋に泊まったときは夜明け前から動き出すことが多いが、今回は小屋作りを進めないと決めていて、その気楽さからか、珍しく8時頃まで眠った。そういえば小屋に作業着を持参しないのは初めてのことだ。ようやく「小屋作り」一辺倒でなく「小屋暮らし」を楽しむ余裕が生まれたような気がしてくる。もちろん、まだまだ作るべきものはたくさんあるけれど。

今回の目的は、なんといってもピザ窯をデビューさせることだ。この年末に家族とピザを食べるために、ドーム作りを急いだのだった。さて2週間ほど前に耐火キャスタブルで成形したドームを見ると、問題なく硬化している様子。木っ端と砂で作った型を窯口から抜き取り、晴れてピザ窯主要部の完成となった(このあとドームを覆うように断熱層を作る予定なので、まだピザ窯の完成ではない)。

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木っ端を組んでかさ上げし、砂で成形したドームの型を窯口から取り出す

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砂型にかぶせた新聞紙が耐火キャスタブルに張りついているので、窯を温める際に燃やし切ってしまおう

ドームが完成したら、さっそくピザを焼こう。ピザを焼くには、薪を燃やして窯をしっかり温めなければならない。薪も自分で作るのが理想だが、とりあえず今回は急場しのぎで購入することに。近くのホームセンターで良さげな広葉樹の薪を売っていることはチェック済みだ。

薪やピザの材料を買いに出て小屋に戻ると、すでに11時。一家5人で動くと何かと時間がかかるものだ。ピザランチをもくろんでいたので少し焦りながら薪に着火する。まずはスギ板の端材を細く割いたものに火をつけ、その火を広葉樹の薪に移す。細めの薪をくべて火が安定してきたら、徐々に太い薪を追加していく。こうして火を育てていく過程が大好きだ。きっとそういう人は多いと思う。いつまでも飽きずに続けていられる気がしますよね?

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まずは窯口付近で薪を燃やし始める

と、親父が火遊びに没頭している間に、料理好きの次男と妻が中心になってピザ生地作りを進めてくれている。どうやら発酵が不要な作り方を選択したらしい。今回ぼくは窯番に専念したかったので、ピザ作りは家族に丸投げなのだ。和気あいあいとピザ生地を作る声を背後に聞きながら、窯の火を見つめるのは良いものだ。ほら今も、強力粉と薄力粉の分量を間違えて買い物カゴに入れた妻を、執拗に非難する子どもたちの声が聞こえてくる(子どもはいつだってしつこいのだ)。続いて予想通り、妻が逆ギレする声が。ぼくは絶対に振り向くことなく、ただ火を見つめている…。

そうこうしているうちに正午を1時間ほど過ぎ、今度は「腹が減った」と聞こえてくる。いやいやこっちはひとりピザにそなえて朝食を抜いているのだから、君たちが騒ぎ出すずっと前から腹ペコだ。だが肝心の窯は、まだまだ素手で触れる温度。真冬の寒気にさらされ続けた窯は、そう簡単には温まらない。これは非常にまずい展開だ。刻一刻と、ぼくも含め、みんなのイライラが募りゆく。想定では「窯で焼いたピザうんまっ!」と言って笑い合うはずの時間になっても、ピザが焼ける兆しは皆無だ。それを察した妻が、意を決して禁断を破る。「昼ごはん、買ってこようか?」ぼくは1回だけ聞こえないふりをし、2回目の呼びかけを待って、か細い声で「うん…オレ、おにぎり…」と答えた。





窯使いに慣れたなら…

昼食にピザを食べるのをあきらめ、おにぎりを食べてしまった今、こわいものは何もない。窯よ、お前が温まるまでとことん付き合ってやろうじゃないか、てなものだ。火遊びに飽きることはないから、まったく苦にはならない。薪は十分に調達してあるし。

ところで、窯の温度がピザ焼きの適温になったと一目でわかるのをご存知だろうか?薪を燃やすと窯の内側は煤で真っ黒になるが、高温になるとその煤が焼け切れて本来の窯の色に戻る“煤切れ”という現象が起きる。こうなればもう、スムーズにピザが焼ける温度だ。そして結局、わがピザ窯が初めての煤切れを見せてくれたのは15時過ぎのこと。薪を燃やし始めて4時間以上経っていた。

さあ、ついにピザを焼くのだ。チンチンに熱くなった焼き床に残る灰を濡れタオルで拭えば、水分が一瞬で蒸発して、ジュッと良い音。窯の奥まで手を入れないで済むよう、火バサミで濡れタオルをつかんでいるが、窯口付近に入れた手の甲がすぐに熱くなり、手早く拭わないと火傷しそう。革手袋をはめていてもそうなのだから、かなりの高温だ。

ピザを出し入れする道具、ピールが必要だということは前夜に小屋に着くまですっかり忘れていたが、薪と一緒にホームセンターで買ったアルミ板と丸棒で急遽こしらえてある。その自作ピールに妻子が作ったピザ生地を載せ、窯の中へ。みるみるうちにチーズが溶け出し、生地が色づき始める。1分ほどしたらいったん取り出し、窯口あたりでピザを半回転して再び窯の中央へ。さらに30秒ほどしたらピールですくい、窯の天井付近の熱溜まりにさらして10~20秒。合計2分弱で、おいしそうなピザが焼き上がった。

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煤切れした窯の中にピザを入れる。熾(おき)になった薪を周囲に並べている

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焼き上がったピザ。形はさておき、旨そうでしょ?

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急ごしらえのピザピール。金属を切る道具を持参しておらず、アルミ板は曲げただけ。ちょっと使いづらかったので次回は改良しよう

窯焼きピザを食べるのは初めてではないが、自作の窯で焼いたピザの味は格別だ。きっとうまく焼けるだろうとは思っていたが、実際に焼けて安堵した気分も調味料となって、全身に沁み渡るおいしさだ。しかもピザは家族の手作りなのだから、言うことはない。

ピザの後は、少しずつ温度が下がりゆく窯を利用して、次男渾身の窯焼きチーズケーキが炸裂。こうして一時的に暗雲が垂れ込めた一日は、晴れやかに暮れていったのだった。

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窯で焼いたチーズケーキ。おいしかった。ほかにもいろんなメニューが楽しめそうだ

12月30日
昼頃に、窯焼きピザの匂いを嗅ぎつけた親戚たちがやってくるらしい。いやそうではなく、ぼくが酔っぱらった勢いで招待したのだった。前日の失敗を繰り返しては目も当てられないので、8時から窯を温め始める。初めて火入れした前日と違い、2日続けての稼働ということも関係しているのか、正午前から窯の温度は余裕の臨戦態勢だ。いずれドームの周囲に断熱層を設ければ蓄熱性が上がるはずだから、連日使う場合にはより少ない薪で高温に保てるだろうと期待している。もしその通りなら、窯は毎日使うことでけっこう燃料消費効率の良い調理器具になるのではないだろうか。窯を毎日使う暮らしは楽しそうだ。窯使いに慣れ、生地作りにこだわったおいしいナポリピッツァや、いろんなパン、ケーキを焼けるようになりたいものだ。

さておき、正午過ぎに始まった親戚とのピザ窯パーティーは万事快調。わが窯は、13枚のピザとローストチキンとチーズケーキとさつま芋を見事に焼き上げ、12人の胃袋を満たしたのだった。

こううまくいくと小屋に行くたびにピザ窯パーティーを催したくなるが、それでは小屋作りが進まない。いや、そもそも年末以外はほぼひとりきりなのでピザ窯パーティーにはならないのだが。では次は何を作ろうか?断熱層を作ってピザ窯を仕上げてしまうか、それとも先にかまどやシンクを作るか、それともトイレに着手するか…。作るべきものはいくらでもある。考え始めると、またワクワクしてくるのだ。

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