上質な和の設えを残しながら、新設部分のデザインにも踏襲。キッチンと水まわりにリノベの的を絞り、適正コストで仕上げる。
text_ Yasuko Murata photograph_ Kai Nakamura
NH邸
東京都福生市
〈プロデュース〉Boo-Hoo-Woo.com+ルーヴィス
Renovation DATA
築年数 36 年
延床面積 116 m2
工事費 600 万円
趣のある日本家屋。この家を見た瞬間、「家族で暮らしている様子がイメージできた」と話す中西寛人さんは36歳の会社員。奥さまの真実さんは29歳で、3歳と1歳のお子さんがいる。近所に住んでいた中西さんご家族が偶然見つけた物件は、旅館のような立派な玄関、庭に面した縁側、襖で仕切られた和室などで構成された、当時築36年の木造2階建て。延床面積は116㎡にもなる。
「当然、リノベーションの必要がありましたが、予算が限られているため、できる部分だけやるつもりでした。私たちが気に入った古い家の趣を、良い方向に活かしてくれそうな会社を雑誌やウェブで探し、ブーフーウーに相談しました」(寛人さん)
建築プロデュースサービスを展開するブーフーウーと共に中西邸のプロデュースにあたり、施工も担当したルーヴィスの福井信行さんは、
「全体的に手を加えるとコストが膨大になるし、そもそもが良い素材で建てられている家だから、新しくつくってももともとを超えられない。大幅に既存を残し、そのイメージを踏襲して、水まわりを中心にリノベーションしていくことにしました」
ダイニングキッチンは天井を解体して小屋組を見せ、床は畳をイメージした色とサイズのラワン合板に変更。キッチンは造作して設備も一新したが、レトロな食器棚や収納はそのまま残した。浴室は面積を広げ、モザイクタイルを使用して造作。洗面を隣の和室の押し入れの位置に移動することで、建具や壁の位置変更を最小限に留め、水まわりを新設している。一家4人の寝室となる2階は、和室の襖を取り払ってつなげ、こちらも小屋組をあらわし、床仕上げを杉のフローリングに変更。壁は上下階とも珪藻土で塗装している。
「どこを残すかの選択で状況が変わるのが、既存を残すリノベーションの難しさであり、面白さ。新旧を取り合せる解体や施工には技術が必要で、実は時間も手間も予算も意外に掛かるのですが、使える・残したいと思える部分が多い物件を探し、リノベーションのポイントを絞り込むと、コストと内容のバランスがとりやすいでしょう」(福井さん)
古い家ならではの良さを活かし、リブランディングする感覚で取り組むリノベーションは、いちからの空間づくりを楽しむリノベーションとはまたひと味違う、中古一戸建ての新しい活かし方と言えるだろう。
〈物件名〉中西邸 〈所在地〉東京都福生市〈居住者構成〉夫婦+子供2人 〈建物規模〉地上2階建て 〈主要構造〉木造 〈建物竣工年〉1974年 〈敷地面積〉249.90㎡ 〈建築面積〉90.13㎡ 〈床面積〉1階 90.13㎡、2階 25.51㎡ 計116.55㎡ 〈デザインプロデュース〉Boo-Hoo-Woo.com+ルーヴィス 〈施工〉ルーヴィス 〈設計期間〉1.5ヶ月 〈工事期間〉1.5ヶ月 〈竣工〉2010年 〈総工費〉600万円
Yasuyuki Okazaki
岡崎泰之 「9坪ハウス」などデザイン住宅の企画・販売、デザイナーズ物件の賃貸・分譲、家具や雑貨の販売、インテリアスタイリングまで、インターネットでワンストップで提案するライフスタイルショップ「Boo-Hoo-Woo.com」代表。
Boo-Hoo-Woo.com
(ブーフーウー)
東京都渋谷区猿楽町30・8
ツインビル代官山B-203
TEL 03・5456・5833(不動産・住宅事業部)
www.Boo-Hoo-Woo.com
www.9tubohouse.com(9坪ハウス)
www.tokyohouse.jp(東京ハウス)
Nobuyuki Fukui
福井信行 1975年 横浜生まれ。アンティーク家具のバイヤー、不動産会社勤務を経て、2005年にリノベーション会社「ルーヴィス」を設立。マンション、戸建、収益物件等、年間30件程のプロジェクトを手掛けている。
株式会社ルーヴィス
神奈川県横浜市神奈川区
神奈川2・3・5
TEL 045・534・3045
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