川沿いの開放感なワンルームで、家族3人が快適に暮らす。
家具をレイアウトするように、収納で部屋をつくり生活を配置する。
text_ Yasuko Murata photograph_ Ayako Mizutani
Casa Dourada
東京都目黒区
設計 SPEAC,inc.
間取り 3LDK→1ROOM
面積 72㎡
築年数 32年
居住者構成 夫婦+子供1人
水まわり以外にはドアも引き戸もないワンルームを、金色の〝箱〟でゆるやかにゾーニングした空間は、築32年、72㎡のマンションをリノベーションしたもの。
「場所ごとに必要な量の収納をつくり、その〝箱〟を間仕切りとして部屋を分節し、結果的になんなとくゾーニングされた寝室や書斎ができて、家族が自由に居場所を選んだり、集まったりできる家になったと思います」
そう話すのは、「東京R不動産」を共同運営するスピークでパートナーを務める、建築家の宮部浩幸さん。同じく30代後半の奥さま、1歳のお子さんとの3人家族で、お子さんの誕生をきっかけに川沿いに建つマンションを購入した。住戸は見晴らしの良い角部屋で、各部屋に窓がある3LDK。既存の内装を撤去してスケルトン状態にすると、多方向に風や光が抜ける開放的な空間となった。
リノベーション後の間取りは、川へ視線が抜ける南西方向にリビング、ダイニングなど家族が集まる場所を設け、収納兼間仕切りの“箱”で区切られた寝室、書斎、キッチンへとつながる構成。水まわりは位置を変えずに設備を入れ換え、収納と同じ金色の仕上げの“箱”の中に収めた。
「広い空間に、暮らしをどう配置していくかを考えました。“どこに布団を敷けば気持ちいいかな?”といった具合に、寝る場所や仕事をする場所を決めて、その近くに〝箱〟を置く。箱はパーティションや家具の延長のような感覚です」(宮部さん)
〝箱〟は構造用のラーチ合板に、金色のメタリック塗料を施し、木目を透かして仕上げた。光の反射で豊かに表情を変え、光沢や木の質感が交互に強調され、空間に彩りをもたらす。また、寝室にはグリーン、書斎にはアボカド色の壁面を設け、空間を閉じることなく、雰囲気に変化をつけている。
「子供がハイハイするようになり、家中を移動しています。どこにいてもお互いの気配を感じ合えるのは、親子にとって良いこと。親も夜はソファで寛いだり、ダイニングで仕事をしたり、気分で場所を選び、楽しみます。私たち家族の現状にはベストな間取りです」(宮部さん)
壁よりもカジュアルな存在感の“箱”による間仕切りは、光と風、家族の気配を家の隅々まで伝え、面積以上の広さを感じさせながら、それぞれの場所にも部屋として独自の空気感をつくっている。
〈物件名〉Casa Dourada 〈所在地〉東京都目黒区 〈居住者構成〉夫婦+子供1人 〈建物規模〉地上11階建て(4階部分) 〈主要構造〉鉄筋コンクリート造 〈建物竣工年〉1979年 〈専有面積〉72㎡ 〈バルコニー面積〉22㎡ 〈設計〉SPEAC,inc. 宮部浩幸 〈施工〉ヤマキ 〈設計期間〉2ヶ月 〈工事期間〉2ヶ月 〈竣工〉2011年 〈総工費〉830万円
Hiroyuki Miyabe
宮部浩幸 1972年 千葉県生まれ。東京大学大学院工学系研究科建築学専攻修了後、北川原温建築都市研究所、東京大学大学院助教、リスボン工科大学客員研究員を経て2007年よりSPEACパートナー。工学博士。
SPEAC,inc.
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