「サボリ」というと皆さんはどんなことを思い浮かべますか?なにか自分に課してることを辞める。またはちょっとなまける。サボるはそんなどこか「いけない」ことという感じがしまう。
でも。これからご紹介する”サヴォリ”は、そういうのとはちょっと違います。「家族と過ごす時間」や「ゆるみある人生」へとつながる、サヴォリの精神。今回はそんなサヴォリが詰まった「ミサキシエスタサヴォリクラブ」ご紹介します。
ここは神奈川県三浦市、三崎。三崎のマグロでも有名な港町です。港から少し路地を入ると現れる、時間が止まったような一軒の釣具店「ミサキシエスタサヴォリクラブ」。古い釣具屋をリノベーションしたこの場所は、別名「昼寝城」とも呼ばれています。
一階ではさまざまなアウトドアグッズを販売。二階にはカラフルなハンモックが幾重にも吊り下がり、会員になるとここで昼寝が楽しめるという、まさにサヴォリのためのお城です。
オープンして3年目となる「ミサキシエスタサヴォリクラブ」は、なぜ、三崎という地で「昼寝城」となったのか。サヴォリ城主、もといオーナーの寒川一さんに伺いました。
三崎はサヴォリのお手本、南米ラテンの雰囲気に似ている
もともと横須賀市秋谷の自宅で、「3knot」というアウトドアショップを営んでいた寒川さんは、その頃から”サヴォリ”をテーマとしたアウトドアツアーなどを開催してきました。ハンモックを持って横須賀縦断したり、自転車で灯台に向ったり、少しがんばって最後に飲むビールのうまさをかみ締めるといった「サヴォリ方」を提案してきました。
そして今から3年前、とあるご縁でこの物件を紹介された寒川さんは、ここに昼寝を提供する空間、”昼寝城”を作ることにします。
三崎は三浦半島の本当に先っぽです。電車もなく、丘から三崎に続く一本道を、バスや自転車でやってこなければ訪れることのできない、ちょっとした島のような場所。交通の不便さ故に、町の人もまた、この町だけで暮らしています。だから人自体が暖かく、濃くつながっている。さらにこの町はアップデートしようとしない。要は時間に逆らわないんです。錆びたトタンはそのまま。そんな自然の流れに逆らわないこの町と、人のつながり方が、自分の好きな南米に思えて仕方なくて好きなんです(笑)
寒川さんにとっての南米の良さとは、「時間に抵抗しない、お金に媚びない、人間らしい暮らし」だと言います。
「サヴォリ」って、自分を解放することです。そのために提案しているのは「非日常」。南米に似ているこの三崎で、サヴォリ城に流れるゆったりとした時間は、非日常に誘われる感じがするんです。それが僕が提案できる「サヴォリ」だと思ったんだよね。
カチカチ刻む時間とは違う、ゆるんだ時間によりそう仕掛け
サヴォリ城での正午から13時に向う時間は、都会の一時間とは確実に違う。うまいご飯を食べて、少し眠くなったらハンモックで昼寝。かすかに聞こえる街の人の気配や魚屋の声。そういうのが、一番の安心感につながるんだよね。安心して昼寝してる時間は、いつもより長く感じるし、とっても心地いい。まさに時計を外した時間になれるのが、ハンモックトリップ。地に足を着かない瞬間は、スリップダウンできる瞬間だから、人生を踏み外すに持ってこいです(笑)
サヴォリ城2階には、様々なハンモックと城主の気の効いた書物が用意されています。インテリアを考えるとき、ハンモックという選択支を加えてみる。これだけで「”サヴォリ”のある暮らしが身近になる」と寒川さんは言います。
もうひとつ、すぐできるサヴォリ方として、寒川さんは夕日を眺めて一日を終えることを教えてくれました。特に、日没のひとときを、その時どきにあわせた場所で焚火とともに過ごす「焚火カフェ」は、寒川さんのライフワークのひとつ。焚火で焙煎したコーヒー豆をその場で挽き、夕日を見ながら飲む一杯の珈琲は、まさに格別。
普段夕日を見ない暮らしから、夕日を見る暮らし方へ。そんなサヴォリ精神を、焚火カフェは気づかせてくれます。
自分を解放することから見えてくる本当の自分と日々の暮らし
自分を解放する方法なんて言葉にする方が難しい。やってみるだけ。サヴォリはぼんやりしたものだけど、でもとても身近なもの。ここには、そのきっかけがあるんだ。
時計が刻む時間からちょっと外れて、自分を解放するサヴォリ。それはいつもとちょっと違うことをしてみようから生まれる、案外簡単なことなのかもしれません。何気ない日々の暮らしや自分の部屋の中にも、サヴォリの要素は転がっています。ほら、だんだんサヴォリたくなってきたでしょ?
※サヴォリ城は惜しまれつつ、4月末で閉城となります。お越しの際はぜひ早めのサヴォリを!