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2014年 5月26日

京都の路地裏から“顔のみえるエネルギー”を!出町柳の多目的カフェ&シェアオフィス「かぜのね」 [わたしたち電力]

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「生産者の顔がみえる」というおなじみの枕詞。スーパーや産直市場で、よく目にします。ではエネルギーはどうでしょうか?

今後、電力やガスが自由化されたら「顔のみえる電気会社」なんていう表現が、当たり前になってくるのかもしれません。しかし現状では「地域の電力会社を選ぶ」ということはあまりないことです。だったら、いっそのこと供給元のエネルギーがクリーンだったらいいのに。そう思いませんか?

今日は、電気を自家発電して、クリーンな電気と学びを、シェアしようとする多目的カフェ&シェアオフィス「かぜのね」を紹介します。

彼らが目指しているのは、自分たちの電気をまかなうだけではありません。遠くでつくられた電気を使う一方だった“街中”から、「“顔がみえる範囲”のエネルギーをみんなでつくり出そう」と呼びかける、現状の真逆へと風を吹かせていくプロジェクトなのです。

エネルギーと恋の話。同じテーブルで話そうよ!

京都府左京区出町柳。京阪出町柳駅を下車して、歩くこと1分。おしゃべりしていたら、うっかり見落としてしまいそうな細い露地を曲がったところに、多目的カフェ「かぜのね」はあります。木枠の引き戸をすーっと開けると、開放感のある白くて清潔な空間に漂う、美味しそうな匂い…。刻は午後13時。ちょうどランチタイムが一段落したところでした。

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ランチプレートの油淋鶏定食。鳥肉もお米もお野菜も、すべて近畿圏産。「自分達の好きなものにこだわる。そんな心地良い暮らしを実践しよう」と、器もすべて作家もの。

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多目的スペースでアイヌの方を招いたイベント後。とび入りで三味線ライブがはじまることも。

「かぜのね」の1階はカフェと、奥はイベントなどに使用する多目的スペース。2階は全8部屋あるシェアオフィスという構成です。カフェの営業はお昼の12時から夜の22時まで。駅近で、ランチからティータイム、そして夜はお酒とおつまみまで頂ける、と使い勝手は抜群です。しかも料理は「安心して食べられるものを」と、京都や滋賀県などの近隣の食材を用いて、舌と身体にほっと優しい、心づくしの品々。

今は多目的カフェとしてにぎわいを見せる「かぜのね」ですが、もともとは70年代に建てられた「風呂無し、キッチンなし、トイレは共同」という、スーパーミニマムな1部屋4.5畳の下宿部屋が集う鉄骨のアパートでした。

「かぜのね」のメンバーたちが自分たちで改装しはじめたのが2008年、それから約1年かけて、2009年の春にリノベーションが完成。露地にひっそりと眠るように佇んでいた建物は、こうして再び目を覚ましました。

また、多目的スペースでは毎週ヨガのイベントがあったり、個人通貨をつかったフリーマーケット形式の交換市があったり、と何とも多彩。これまで開かれたワークショップの様子を覗いてみましょう。

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長野県栄村のあんぼ(米粉を使ったお焼きのような伝統食)をつくるワークショップの様子。

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「イマジンイラク」と題した写真展のプレイベントを開催。イラクで人道支援に取り組んでこられた高遠菜穂子さんの講演会。

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PCのOSのライセンスの権利が、少数の会社に集約されている中、無料で自由に使えるフリーソフトをインストールし、使い方を学ぶワークショップ。

他にも味噌づくりや、陶器のワークショップ、映画の上映会などなど。その根っこにあるコンセプトは「知り、繋がり、シェア」すること。まずは「かぜのね」設立のきっかけを伺いました。

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(写真左)「かぜのね」協同代表の春山文枝さん、(写真右)運営メンバーの中島琢磨さん。


春山さん これまではNGOに勤務したり、大学でグローバリゼーションや南北問題、NGO論などを教えていました。しかし大学で教えていても、生徒はNGOなどの活動に対して敷居を高く感じる人が大半で、なかなかイベントなどの参加にはつながらない。

それなら、おいしいものを食べたり飲んだりしながら、社会や政治の話ができるような場所をつくれたらいいな、と。彼氏や彼女の話をするのと同じように。


できることなら、はじめよう!

「かぜのね」が他のカフェと決定的に違うところは、来てみて一目瞭然。まず目につくのは「できることからはじめよう」の精神で、入り口脇に設置した「雨水タンク」です。こちらは雨どいに直接穴をあけて、管をつなぎ、流れた雨をタンクに貯めるシンプルな仕組み。貯めた水は軽く濾過され、ポーチに植えた草木に撒いているそう。

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カフェの入り口脇にある雨水タンク。上にはフタがついているため、直射日光による藻の繁茂や、蚊の発生を抑止できます。


春山さん もともとオルタナティブなライフスタイルを探していて、まずは雨水タンクの設置からはじめました。もしも各戸が雨水タンクを設置し、水を利用すると、近ごろ頻繁にある”ゲリラ豪雨”のときなども、都市の洪水を少しでも抑制する助けになる、とも言われています。

中島さん 「京都市内に降る年間降水量は、琵琶湖から引く水の量より多い」という話を雨水タンク設置の際のお話で知りました。だったらそれを活かせばいいじゃないか、と。僕は今、自宅の家庭菜園で野菜を育てていますが、「水をいくらまいてもたりない。雨でも貯めておきたい!」という状況を経験するんですよ。

街中で暮らしてると、雨をもったいないと思わない。でも雨水タンクがあることで、これが何かに使えるんじゃないかと新たな目線を持つきっかけになったらいいですね。


さらに、2011年にはペレットストーブを導入。燃料となるペレットは製材所で製材(切り倒した材木の皮や周辺部を取り除き、木材に加工する作業)の際に出た木屑を集めて、圧縮し、直系5mmほどの小さな固形燃料にしたもの。しかも京都府内の工場で製造されたものなので「木材も地産地消」というわけです。

ペレットストーブを導入するには、壁に煙突のための穴を開ける必要がありますが、煙がほとんど出ないため、ご近所との間隔がせまい街中でも大活躍。火窓からはちゃんと炎も見えます。


中島さん お客さんの中にはペレットストーブを知っていて、良いなと思ってる人もいる。もちろんストーブそのものの良さに気づくことも大事ですが、もっと大事なのは発想の転換です。製材所の“おがくず”ですら、固めて燃料にできるということに気づくこと。「かぜのね」はこうした発想の転換ができる目線を持つための、フィルターのような役割を果たしているのかもしれません。

ここに来て、体感して、また一歩外に出たら、見え方が変わって、自分の家でも使えるものを探す目線を持ってもらえたらいいですね。


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導入してみて「とにかく暖かくなった!」と春山さん大絶賛のペレットストーブ。

顔のみえるエネルギー」とは?

「毎年何かひとつは新しいことを初めたい」という春山さん。この春新たに太陽光パネルを使った自家発電、「顔の見えるエネルギー」プロジェクトを立ち上げました。

「本を読んだりして、オフグリッドがいいのか、さんざん迷った」末に、春山さんたちは余った電力を電力会社が買い取る“余剰買取り”のシステムを選びました。まずは「かぜのね」の屋根に合計24枚の太陽光パネル(1枚170W/合計4080W)を設置し、発電することに。初期投資に必要な資金集めを、現在クラウドファンディングでチャレンジしています。

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クラウドファンディングのページより

「カフェとシェアオフィスの電力をまかなうためには、バッテリーを置く場所と高額の初期投資がネックでした。かと言っていつまでもチャレンジできないくらいなら、まずは無理のないところから一歩を踏み出そう」と、 “余剰買取り”にしたそうです。

「かぜのね」で使用している家電製品は、冷蔵庫、エアコン(合計3台)、照明、その他シェアオフィスの使用者がもちこむPCなど。屋根で発電する電気は、ほとんど自分達で消費してしまうことになるそう。電気は送電線や配電線の抵抗で、つくった電力の一部が熱となって消えてしまうことを考えると、手元でつくった電気を、すぐそばで使うのは、もっとも効率的とも言えます。


春山さん 政府としては自然エネに転換して欲しいと思っていますが、待っていても何も変わらない。自分達で行動を起こさないと。


プロジェクトを立ちあげた経緯を、優しい声で、かつ真摯に語ってくれた春山さんの言葉は、とてもシンプル。しかしその“シンプル”なことができない“はがゆさ”が、プロジェクトの原動力のようです。

3.11後に「東京から身体ひとつで京都に越す」という英断を下した中島さんは、こう言葉を続けてくれました。


中島さん 原発事故からもう3年も経ちますが、その間「当然原発はやめるものだ」と過信していたんですよね。つまり、自分も結局どこかで“人任せ”にしてしまっていたんです。ところが原発は再開の方向に進むし、どうやら全体として自然エネルギーにシフトしていくのかも怪しくなってきた。反省の意味も込めて、今こういうプロジェクトでしきり直すことが必要なんじゃないかと。


これを聞いて正直、どきっととしました。これを書く私自身が、節電を堅く誓った震災直後の心を、知らず知らずのうちに遠くにおいて来てしまった、からです。中島さんは、あえてクラウドファンディングする意味について、こう教えてくれました。


中島さん こういうことって「いいこと」という前提でやっちゃうじゃないですか。でも自然エネへの転換の取り組みは、まだはじまったばかり。もしかしたら今やってることも、ひとつの過程に過ぎなくて、間違っている部分があるかもしれない。だから「何でみんなもやらないの?」というふうに、押し付けになるのは避けたいんです。

せっかく多目的カフェというオープンな場所でやるんだったら、電気をつくる過程から、わからないことも含めて「わかんないね!あはは」って笑いながら、一緒に考えて全部シェアしていきたい。


そして、その真の目的は、もっとずっと先にあるようです。


中島さん 今は「(社会に対して)何を言っても変わらない」という無力感がある。これって不健全な社会だと思うんです。僕は、極端に言うと「原発を残さない」と言うよりも、まずはこういう不健全な社会を(次の世代に)残したくないなと思うんです。

だからこういうプロジェクトで、こうやっていろんな人と一緒に「やれば変えられる」っていう自信を、まずは取り戻したいなと思います。


「やりたいことがいっぱいで、妄想ばかりしている、と笑われるんですけど」と前置きして、春山さんが言いました。


春山さん 太陽光パネルで発電する人は、増えていますが、もっと仲間を増やしていきたい。それで、何となく電気をつくるだけじゃなくて、各戸がどれくらい電力をつくってるのかを、見えるかたちにしていけたらいいな、と思っています。

そうすれば大きい発電所をどん、とつくらなくても、各地区や地域で小規模な発電所をつくって、それでそのエリアの電力がまかなえるようになるんじゃないかな、って。


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「かぜのね」で行われた省エネワークショップの様子(クラウドファンディングのページより)

「京都は路地裏がたくさんあるんだから、“路地裏発電所”とか、できたらおもしろいな。電気も食べ物も、遠くからくるものだと思ってますけど、つくろうと思えば、狭い街の中でもつくれる」と中島さん。いつだって、どんな時だって、夢と現実をつなぐ扉を開けるのは“自分”なのですから。

「かぜのね」では、5月末に太陽光パネルの設置お披露目会を、6月には協同代表でドキュメンタリー映画監督の海南友子さんによる、海外の自然エネルギーをテーマにした取材報告会を開催予定。また、7月にはオフグリッドで、使用目的に合わせた発電量の太陽光パネルを組み立てるワークショップを「ひのでやエコライフ研究所」と共同開催する予定です(全3回)。

「かぜのね」の心意気に「いいね!」と思ったあなた、クラウドファンディングで一緒に“路地裏発電所”をつくっていきませんか?


※この記事はgreenzに2014年4月22日に掲載されたものを転載しています。

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