建築家と家づくり 好きに暮らそう SuMiKa
2014年 6月17日

新旧の素材と技術を融合し、昔ながらの日本家屋を再生

田舎の古民家暮らしに憧れ、購入したのは築100年以上の家。建築家、地元の工務店が力を合わせ、現代に住み良く生まれ変わらせた合作リノベーション。

text_Shiho Ikeda photograph_Kai Nakamura

Ad6e3e55-d22e-40d4-8414-9d8fd568a531
キャンバスに追加する
写真を拡大する

ロフトからリビングを見下ろす。倉庫として使われていた屋根裏を取り壊し、リビングに吹き抜けを設けた。残した床梁を活かしてライティングレールを設置している。

精華町の古民家

・京都府相楽郡精華町
〈設計〉多田正治アトリエ+ENDO SHOJIRO DESIGN

7a641b3b-f42a-4b1b-bd67-d34c31a271cb
キャンバスに追加する
写真を拡大する

・住人データ
松尾さんご家族
隆昭さん(42歳) 会社員
正子さん(48歳) 会社員
長女(14歳)
長男(11歳)


 田舎でのんびり暮らしたい、と四方を山に囲まれた精華町に越してきた松尾さんご家族。戸建ての貸家にしばらく住んだ後、兼ねてからの夢であった古民家での家づくりを叶えるべく、物件を探し始めた。

Cd5785f4-dc09-4de5-ba95-243b14476a28
キャンバスに追加する
写真を拡大する

昔話に出てくるような外観。屋根は葺き替えたが、外壁の一部やかまどの煙出しは残している。遠方に連なる山々と精華町の集落を望む絶好のロケーションだ。

「見た瞬間に、この家に住みたいと思いました」
と、正子さんの心を奪ったのは、里山に建つ築100年以上の日本家屋。長年空き家だったため、外観も室内も傷みは激しかったが、力強く優美な柱と梁が建物を支え、土間やかまども当時のまま残されていた。

Fe1309a6-ce08-4216-958c-1f61a4ef96cf
キャンバスに追加する
写真を拡大する

左/力強いマツの梁が印象的。梁が低い位置にあったため、床を全体的に10㎝ほど下げた。
右/玄関土間からリビングを見る。白い壁の向こうはご夫妻の寝室。

 この古い家を実際に住める状態にするまでに、多くの難題があろうことは想像に難くない。松尾さんご夫妻は、京都の町家改修を手掛けている地元の工務店、アーキ・クラフトへ相談に訪れ、そこで建築家の多田正治さん、遠藤正二郎さんに出会う。腕利き職人と建築家の恊働というかたちで、古民家リノベーションを進めていくこととなった。

1baf8f51-429b-49c0-a2e5-da118e856179
キャンバスに追加する
写真を拡大する

左/白い壁はOSB。現代と昔の素材の対比調和が面白い。
右/置き石や機織り機の白い部品が無機質な土間を楽しく彩る。

 家屋の状態は躯体自体に問題は少なかったものの、基礎や屋根はぼろころがあったため補修。しかし、建物の安全性が確保されても、100年以上も昔の家は、今の生活とはかけ離れた造りになっている。
「それでも古民家が持っている雰囲気をなんとか壊さずに、現代の生活に対応できる住まいをつくりたい。松尾さんも僕らも同じ気持ちでした」
と、多田さん、遠藤さんは振り返る。

Eecbc539-92c8-4681-a036-e915dda4afc3
キャンバスに追加する
写真を拡大する

左/見通しのいい北側の壁に窓を新設。回廊に光を呼び込む。
右/壁面収納を備えたウォークインクローゼットのような回廊。梁から枝を吊るし、衣類を掛けられるようにしたのは隆昭さんによる名案。奥はダイニング。

 建物の中央を貫く土間は、居住空間を東西に分ける。西側は昔ながらの田の字の間取りだったが、仕切りを取り、屋根裏も撤去して縦横に広がる大空間とした。そして新たに、白い箱状の居室を組み込み、その周りにLDK、縁側、書斎、収納スペースを配置。各空間は回の字につながり、家族の気配を伝える程よい距離感が生まれた。かまどのあった東側には、トイレと洗面・浴室を新設。子供や将来両親が過ごせる予備室も設け、暮らしの変化に備えた。

Dc70722d-bf2f-4bf4-8da9-29c0f8d4f790
キャンバスに追加する
写真を拡大する

左/長女が使う予備室も寝室同様白い空間に。梁も白く塗装。
右/土間を挟んで西側に寝室とLDK、東側に水まわりと子供室がある。土間は飛び石伝いに素足で渡れる。

4fe727d1-6861-4604-9c89-14526a32a2b6
キャンバスに追加する
写真を拡大する

左/ご夫妻の寝室は一転して白くモダンな空間。壁に空いた窓から縁側、屋外へと視線が抜ける。
右/ご夫妻寝室を収める“白い建築”の上部はロフト。現在は長男の部屋として使用している。

「子供達と一緒に居られる今も、夫婦ふたりになったときも、楽しく過ごせるいい家になったと思います」(隆昭さん)

8676a4dc-e81a-4ca6-8a9d-cbf09406be52
キャンバスに追加する
写真を拡大する

左/書斎を設けた回廊。天井に張った板は、取り壊した屋根裏の床材を再利用したもの。
右/玄関の引き戸は当時のものを、障子を張り替え、鍵を取り付けて使っている。

 玄関の引き戸など、一部の建具は新調せず、昔まま使っていくことにした。撤去した屋根裏の床材は天井材として再利用するなど、建築家のアイデアや職人の技術が随所に光る。
 この歴史ある住まいは、この先も時間を積み重ねることができるように、見事に生まれ変わったのだ。

4e9d759d-89f2-418e-af5f-2e6b018280d5
キャンバスに追加する
写真を拡大する

前庭からリビング、縁側スペースを見る。ご夫妻の寝室を収める“白い建築”は、地震の際に身を隠せるシェルター的な場所でもある。


〈物件名〉精華町の古民家〈所在地〉京都府相楽郡精華町〈居住者構成〉夫婦+子供2人〈建物規模〉平屋建て〈主要構造〉木造〈築年数〉 築約100年〈建築面積〉114.35㎡〈床面積〉1階 111.34㎡、ロフト階 22.82㎡ 計134.16㎡〈設計〉多田正治アトリエ+ENDO SHOJIRO DESIGN〈施工〉クラハラ+アーキ・クラフト〈設計期間〉4ヶ月〈工事期間〉4ヶ月〈竣工〉2012年〈総工費〉1800万円


Shojiro Endo

345cd973-b220-4c50-b648-fb74404657ae


遠藤正二郎 1980年 神戸市生まれ。2003年 京都工芸繊維大学工芸学部造形工学科卒業。05年 同大学大学院工芸科学研究科造形工学専攻修士課程修了。09年 京都に「ENDO SHOJIRO DESIGN」設立 。

ENDO SHOJIRO DESIGN
京都市下京区中堂寺櫛笥町7・16
TEL/FAX 075・201・7086
endo@endo-design.jp
www.endo-design.jp

Masaharu Tada

1a0a8550-103f-49be-ba59-77ac398f9a9e


多田正治 1976年 香川県生まれ。2000年 大阪大学工学部建築工学科卒業。02年 大阪大学大学院工学研究科建築工学専攻修士課程修了。02年~09年 坂本昭・設計工房CASA勤務。06年 多田正治アトリエ 設立。

多田正治アトリエ
京都市下京区中堂寺櫛笥町7・16
tadamasa20@td-ms.com
www.td-ms.com


※この記事はLiVES2013年4月号に掲載されたものを転載しています。

関連する記事

前の記事

国分寺市の住宅街で営まれて半世紀。つくし文具店に見つけ...

次の記事

築47年の団地のよさを残す。機能美を携えたシンプルな住まい