漆喰壁の閉じた外観から一転。ラーチ合板で仕上げた4層のスキップフロアの空間が、富士山を眺めるテラスや寝室へと開放的に連続する。
text_ Yasuko Murata photograph_ Kai Nakamura
鎌倉の家
・神奈川県鎌倉市
〈設計〉みかんぐみ
・住人データ
金子澄恵さん ジュエリーデザイナー
8年前に、東京で分譲マンションを購入して暮らしていた金子澄恵さん。サーフィンを始めて海に通うようになり、鎌倉で一戸建てを建てることに憧れを持つようになったという。
「サーフィンが生活の一部となったので、海に近く自然が豊かな場所で、ゆっくり仕事と生活をするのもいいかなと思うようになりました」
そう話す金子さんは、ジュエリーブランド「sumikaneko」を展開している。ギャラリー、工房、住居をひとつにまとめた空間として、家をつくることを決め、高台にある敷地を購入した。設計を担当したみかんぐみはこう話す。
「前面道路側は住宅地ですが、裏側が4mほど下がった駐車場で、景色が抜けています。この環境の差を利用して、表は閉じて、裏は屋外へ拡張するような、スキップフロアのプランを提案しました」
玄関の横には工房がある。その先の階段を上がるとモルタルの床が、ウッドデッキのテラスまで同じ高さで連続する。ここは展示会を開いたり、お客さまを迎えたりする空間。水まわりも同じフロアにあり、サーフィン帰りにデッキから浴室にアクセスできる。晴れた日にはバスタブに浸かると富士山も見える。階段を上がるとリビング。その上に寝室がある。リビングから寝室へと向かう階段は1・8mと幅が広く、2つのフロアが緩やかにつながるように工夫されている。
漆喰の外壁に対して、内側の壁・天井はラーチの構造を現しとして、素材使いでも内外の世界観の差を表現した。床材も、1階はモルタル、2階以上はタモのフローリングを使い、パブリックとプライバシーの空間の居心地を切り分けている。
「住まいと仕事場と明確に分ける必要性を感じていなかったので、スキップフロアは理想的でした。友人が来ることが多いのですが、大勢が集まったときは、テラスを使ったり、リビングや寝室まで開放すれば快適に過ごせます。コンパクトな面積の中に、たくさんの要素を詰め込んで、小さいなりに上手くつくってもらったと感じますね」(金子さん)
1人のときでも、人が集まるときでも、生活や仕事、趣味などのシーンにぴったりとフィットし、空間を自在に活用できる家。延床面積がわずか62㎡とは思えない、大らかさを感じさせる空間だ。
〈物件名〉鎌倉の家〈所在地〉神奈川県鎌倉市〈居住者構成〉大人1人〈用途地域〉第一種低層住居専用地域〈建物規模〉地上2階〈主要構造〉木造〈敷地面積〉103.73㎡〈建築面積〉37.04㎡〈床面積〉1階 28.76㎡ 2階 33.28㎡ 計62.04㎡〈建蔽率〉35.71%(許容40%)〈容積率〉59.81%(許容80%)〈設計〉みかんぐみ〈施工〉井端建設〈構造設計〉木下洋介構造設計室(コンサルタント)〈設計期間〉4ヶ月〈工事期間〉4ヶ月〈竣工〉2012年
Mikangumi
みかんぐみ 加茂紀和子、曽我部昌史、竹内昌義、マニュエル・タルディッツによる建築設計事務所。代表作に「NHK長野放送会館」、「八代の保育園」、「SHIBUYA-AX」、「北京建外SOHO低層商業棟」、「2005年愛・地球博トヨタグループ館」、「伊那東小学校」、「横浜開国・開港博Y150はじまりの森」などがある。
神奈川県横浜市中区太田町6・75
関内北原不動産ビル4F
TEL 045・650・5307
FAX 045・650・5306
info@mikan.co.jp
www.mikan.co.jp
※この記事はLiVES vol.69に掲載されたものを転載しています。