長野県茅野市の尖石遺跡周辺で2015年7月25日から9日間にわたりSuMiKaが開催した、小屋をめぐる「小屋フェス」。
大自然の真ん中にある会場には、建築家、工務店、クリエイターが腕をふるった20棟の小屋が出展されました。
あなた自身が小屋をつくるとしたら、どんな小屋をつくりたいですか?
そして、そこでどんな暮らしをしてみたいですか?
今回は、小屋フェスに出展したみなさんに、小屋の魅力について聞いてみました。
小屋は、自分だけの秘密基地
大人だって自由に暮らしを楽しみたい…、そんな夢を叶える6畳の小屋。1畳あれば、机と椅子を置いて小さな書斎ができるし、もう1畳あれば、ソファかベッドを持ち込んで横になることができます。たった1畳でも様々な用途に使えることがわかれば、6畳がどれほど広く自由であるかがよく分かるはず。ロフト、シャワー&トイレ、薪ストーブ、デスクと椅子、ミニキッチン、ウッドデッキ、床下収納など、暮らすために必要な機能はすべて詰め込んだ、大人の遊び基地のような小屋です。
「小屋って、書斎にしたりバイクガレージにしたりと、好みに応じていろいろな使いかたがあると思うのですが、今回は小屋としての究極の使いかたともいえる、“住める小屋”の提案です。
今の住宅って、この部屋はこう使う、という前提がどうしてもありますが、本来、家ってもっと自由なものであるべきですよね。
それに、大きな家に住む必要はないと思うんです。小屋で思い通りに過ごす時間を持つことができたら、それはとても豊かな時間だなと。逆の言い方をすれば、小屋を手に入れることは、二拠点居住や移住も含めて、自分好みのライフスタイルを手に入れることでもあると思います。自分流にカスタマイズして、毎日を遊び尽くすことができたらいいですね。」
別荘以上で、別荘未満。小屋は、暮らしをもっと自由にする
4tトラックで運ぶことができるサイズで、ロフトをつけたり、2棟つなげたりとカスタマイズができる小屋。さらにキッチン、トイレ、シャワーをつければスモールハウスやコテージにも。海辺や森の小屋としてはもちろん、2棟をデッキでつないでカフェやショップとしても使うことができます。今回、静岡の工務店・天城カントリー工房によって出展された小屋は、東京・麻布十番でフラワーショップを経営する夫妻が週末時間を過ごすための小屋としてつくられました。
「静岡・伊豆に事務所を構えているのですが、かつては別荘物件が多かったんです。でも、別荘って限られた人が持つ家ですよね。伊豆との二拠点居住の提案を兼ねて、週末は小屋に暮らすというライフスタイルを提案したいなと考えました。
これからは、大きな家っていらないかなと思っていて。子どもがいるとしても、個室が欲しい時期って3年から5年くらいの話。大きな家を建てて35年ローンを返済するのではなく、小さく暮らしてローンもなるべく減らして、足りないものは小屋を置いて補えばいい。子ども部屋でも、自分の趣味の部屋にしても、場合によっては賃貸にしてもいい。小さい家+小屋で補うというスタイルがこれからの時代にあっているのかなと。
また移動できれば、将来的に海や森のそばに暮らすことになっても、田舎暮らし用の小屋として使うことができる。移動できる小屋を持つことで、土地に縛られない自由さを得られると思うんです。」
小屋は、暮らしの“遊び”の代名詞
毎朝早く出掛けて、夜遅くに帰宅するパパ。パパともっと一緒に過ごしたいと思う娘。そんな親子のコミュニケーションを増やすための空間としてつくられた小屋。パパは仕事や趣味をしながら、娘は得意なお絵描きをパパに見てもらいながら、時には愛犬も一緒にお昼寝したり…。自由自在な使いかたで、遠出をしなくてもゆったりとした週末を過ごす。この小屋には、そんな提案が込められています。
「この小屋は、親子が遊べるというコンセプトでつくりました。おそらくどの家庭でもお母さんが強くて(笑)、週末にゆっくりしたくても、掃除するから向こう行って!という感じ、あるじゃないですか。避難小屋じゃないですが、そうしたときにお父さんが気兼ねなく過ごせる空間があったらいいなと思って。庭先の4畳半というスペースで、どうやって楽しもうかと考えることを楽しむというか。
今、住宅自体がコンパクトになってきていますよね。必要最小限でいいという人が多い。ゆくゆくは、この小屋をユニットのように連結して、水廻り、居室、寝室ゾーンとして展開すると面白いかなと。その人なりの暮らしかたがありますが、こうした小屋を“付け足す”ことで、暮らしに遊びを加えることができると思います。」
たった3畳。小屋は、ひとりになれる場所
“離れ”として使うことで、家族みんなのちょうどいい距離感をデザインする小屋。どんな家族にも、それぞれに絶妙な距離感があります。子どもの成長に合わせて、子どもと親から、大人同士の関係になるなど、人の関係が変わるように住まいも変化する、そんなコンセプトでつくられました。母屋ではできない、離れだからこそできること。3畳というミニマムな広さは、たったひとつの目的のための、贅沢な空間です。
「住まいの要望ですごく感じているのが、家族の距離のとりかたが、複雑になってきている気がして。間取りで解決できることもあるのですが、母屋とは切り離して庭に離れとしての小屋を置くと、距離感をうまくつくることができるんです。
それに、正方形の3畳のスペース(2.2m×2.2m)って、パーソナルな空間として面白いんです。ベッドが置けないから、自分の好きなものだけを持ち込むことになる。一用途、ひと部屋。仕事場にしてもいいし、書庫にしてもいい。自分だけの贅沢な空間ができます。
これからは、ひとつ屋根の下に家族が暮らすというだけでなく、敷地の中に小屋がいくつか建っていて、家族ごとの部屋があってもいいんじゃないかと思うんです。もしくは、小屋をそれぞれ好きに使う家族のシェアルームとしてもいいと思っています。だから今、小屋にたくさんの可能性を感じています。ちなみに僕は、書斎と、何もモノを置かない考える小屋が欲しいですね。」
いかがでしたか?
どんな暮らしがしたい?と聞かれると、間取りや家賃、職場との距離など、家にまつわる“制約”をイメージしがちです。
そんな制約を取り払って考えてみると、ゆっくりと珈琲を淹れる朝の時間だったり、いつか読もうと思っていた1冊を、鳥のさえずりの中でめくる時間だったり…、心地よく暮らすために欲しいことは、案外、小さなことなのかもしれません。
小屋でどんなふうに過ごしたいかを想像してみると、自分の欲しい暮らしのヒントが見えてきます。
みなさんも、好きに暮らしてみませんか?
text 増村江利子