SuMiKa(ならびにHOUSECO)で家をつくった施主の皆さんに家づくりの過程に関して10個の質問に答えてもらいました。
建築家との家づくり、ネットでの家づくり、そして暮らしを考える際の参考に。
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- <設計>
- 一條 美賀さん 一條太郎さん/一級建築士事務所 まんぼう
- <施主>
- Kさんご夫妻
家づくり10の質問
今の家の住み心地はいかがですか? また、あなたが特に気に入っているところを教えてください。
収納セット(ワンルームの中央に配置した収納と仕切りをかねた箱)に仕込んだ間接照明がとても落ち着いた雰囲気を作り出してくれて気にいっています。安眠できます。
どうやって家づくりに必要な情報を集めましたか?
設計者が決定してからは、一條さんの自宅やショールームで設備や素材のサンプルなど実物を見ながら検討しました。あとは、一條さんとの打ち合わせの行き帰りに、渋谷のBook 1stの建築書コーナーにはよく立ち寄りました。意外なことに、インターネットではあまり調べませんでした。検索をしても広告的な情報が多くヒットし、あまり参考にはならなかったと記憶しています。
SuMiKa(家づくりの当時はSuMiKaの前身HOUSECO)を知ったきっかけは? どうしてSuMiKaで家づくりを進めようと思われたのですか?
当初より、住居を考えるときにはSuMiKa(当時はハウスコンペ)でお願いしたいと考えていました。SuMiKaさんの存在はいつの間にか知っていました。過去の提案をいろいろ見て独創的な提案が多かったことが気に入ったと記憶しています。ただ、当時はまだ集合住宅の改装を題材としたプロジェクトがなく、掲示板(※)で親身に相談に乗っていただき、コンペを実施することを決断しました。 ※SuMiKaはその当時、建築家や施主が自由に参加できる掲示板(フォーラム)を設置していました。
建築家を選ぶ決め手となったことやエピソードがあれば教えてください。
最終的に2案に絞ったのですが、少ない予算の中でスクラップ&ビルドの提案であったことが、大きな決め手のひとつだったと記憶しています。
建築家と契約を結ぶにあたって苦労したことなどありましたら教えてください。
建築家を選んでしまえば、契約時には特に苦労はありませんでした。当時は実家に住んでいたので、工期などいろいろと気楽に考えることができたのも大きかったと思います。ただ、いろいろな理由で工事が伸び、一條さんには多くの苦労をおかけしてしまったと思います。余計な心配かもしれませんが、当初設定した監理費では割に合わなかったのでないでしょうか。(こちらから設計+監理費を追加しましょうかと打診したほどでした。)
施工業者はどのように選定されましたか?
一條さんの自宅を施工した工務店さんでした。ウェブサイトを見て好感をもてたので、そのままお願いしました。実際に、工務店さんでもいろいろと試行錯誤していただいたようで、とても良くしていただきました。
家づくりの過程や建築家とのやりとりで、もっとも『楽しかった!』『苦労した!』『感慨深い!』エピソードについて教えてください。
楽しかったのは「壁のペンキ塗り」ですね。肉体労働まで建築家と協働してしまいました。こちらの詳細は後ほど・・・。
実際に立った住宅と建築家のコンペ提出案との間にギャップはありましたか?
縮小版の一條邸のような空間ができるかと思っていましたが、実際は大きく違いました。一條さんの自宅と同じような設備(キッチン)や材料(ラーチ合板)を使っているのにも関わらず、雰囲気はまったく違っていて驚きました。
しかしながら、当初から一條さんの提出案の基本的なコンセプトが良いと思っていたので、提出案との間には大きなギャップはありませんでした。
予算については、掲示板で質問をした当初は300万円ぐらいと大甘に考えていました。が、掲示板でやりとりを重ねていくと、1000万円ぐらいという意見もあり辟易としてしまったことも事実です。結局のところは、考えていたMAXの予算以内で収まりました。割り切ることは重要です!(大甘に考えていた 300万円は軽くオーバーしましたが・・・)
建築家と家を建てて良かった!この感想をひと言で言うと?
学び! 建築家の生活スタイル、生活に対するまなざしに触れることができ、とても刺激になりました。
もし、もう一度、家を建てるとしたら、どういう方法で建てたいですか?
もちろん建築家と一緒に建てたいと思います。次回は、現在住んでいる生活空間をベースに話を始められると、よりスムーズにかつより楽しく家作りができるのではないかと思っています。
もっと知りたい!施主の本音
Q7で話題にあがった「壁のペンキ塗り」とは?
低予算をカバーするために、壁は仕上げずコンクリートの躯体をそのまま残しました。そして、このペンキ塗りを自力でやってしまうことにしました。
最近はDIYが流行、家族で壁を塗ることも珍しくはなくなっていますが、実際にどのような作業を奥様と一條さんとなされたのでしょうか?
まず清掃から始まり、次に養生をしました。養生には養生テープと新聞紙を使います。養生用のビニールと一体になった養生テープも売っていますが、新聞紙のほうが広範囲をカバーできるのでオススメです。
養生が終わったら下地の準備ですね。金属部分には錆止めとプライマー(鉄管に水性塗料を密着させるための下地材)を塗ります。スプレー式で取り扱いの容易なものが市販されています。時間配分的にはココまでで全工程の1/3を完了したことになります。意外と時間がかかる作業でしたね。
そして下地材の乾燥(約2時間!)を待って、いよいよペンキ塗り開始。 ペンキ塗りは、まずローラーで大雑把に塗ります。次にローラーでぬれなかった隙間(ジャンカなど)と鉄管を刷毛を使ってどんどん塗っていきます(コレに意外と手間がかかる)。いったん塗り終わったら、乾燥するのを待ってから再度ペンキを重ねて塗っていきます。
これをなんと4回!重ね塗りをするわけです。そして最後に養生を撤去して終了です。
なかなかの肉体労働ですね。実際にはどれくらいの時間がかかったのでしょうか?
朝から妻と作業を始め、途中からまんぼうの一條夫妻と合流をして、4人で作業を行いましたが終了は夜9時。塗りの面積は多分30平方メートルぐらいだと思います。 ちなみに天井も同様の仕上げですが、天井のペンキ塗りは難易度が高いのでプロに任せることにしました(笑)。
経験者からのアドバイスとして“壁塗り”を成功させるためのポイントを教えてください!
- 養生(マスキング)は広めに丁寧にやる。
- 下地作りを丁寧にやる。(金属部分の錆止めは錆を落としてからやる)
- 道具は人数分用意する。(安い物を探せば、一人分で1000円弱です)
- 塗り中は、集中のあまり無言になってしまいます。音楽があったらよかったかも。
- 重ね塗りはなるべく多くしたほうが、仕上がりがきれいです。(扇風機があると、ペンキの乾燥が早くなり重ね塗り回数が増やせるかも。)
自分でやると、いろいろな発見があって楽しいですよ。
担当した建築家さんに訊く 思い出に残るエピソード
一級建築士事務所まんぼう
プロジェクト全体で印象に残るエピソードを教えてください。
中心に収納セットを置くという骨格に、結婚して新生活をスタートさせるおふたりへの生活スタイルの提案と、全面タイル貼りとしたKさんご夫妻のイメージをコラボレーションして実現できたプロジェクトであったと感じています。
施主さんとのやりとりで印象に残るエピソードを教えてください。
2週間に一度ペースの打ち合わせでは、収納セットの高さを確定するため原寸の模型を作って検証したり、収納量の確認で、Kさんがお持ちの洋服、本などをすべて体積に換算されたりと、新築住宅と違い、既に存在する1区画に施すリフォームのため、各部の寸法、収納の割合、形状について等、かなり詳細な打ち合わせだったと記憶しています。また、工事中、自力施工とした壁を一緒に塗ったりと、お施主様と家作りを進めていく事を実感できたプロジェクトでした。
施主先輩からのメッセージ
建築家と共に家をつくるということは、とても刺激的な体験でした。 お勧めします!住みはじめて2年以上経った現在、家づくりについて思うことをまとめます。
設備に関して
汎用品を使って安く抑える部分と、きちっとデザインされたモノを導入する部分と、メリハリつけて選ぶと良いと思いました。たとえばK邸のキッチンは、キッチン自体は普通のブロック積みのうえにステンレスの板を載せたシンプルな作りですが、ガス台はROSIERES(カッコイイ!)です。
トータルの金額を抑えながら、贅沢感を実現してくれた一條さんはさすがだなと感じました。割り切れば、少ない予算でもいろいろな贅沢(?)ができるものです。
間取りに関して
間取りを決めるときに、微妙な空間は埋めておきたいというのが人情かもしれません。が、平面図の隅々まで「なにか」で埋めていくのではなく、微妙なスペースを残しておくことをお勧めしたいと思います。
その理由としては、この微妙なスペースをどのように使うかを考えることが、実際にこの家で生活をはじめた後、私たちの生活の楽しみのひとつとなったからです。
たとえばK邸では、置き畳を置くつもりで設計していただいた微妙な広さのスペースがあるのですが、結局、置き畳は置かずのままになっています。今はこのスペースに背の高いテーブルとバーにあるような背の高い椅子を置いて勉強スペースにしてみようかと思案したり。このあたりは、他の空間や生活スタイルとのバランスを考えてのんびり決めていこうと考えています。この経験を踏まえて、「作らない」という選択肢も良いのではないかと思っています。とはいえ、この微妙なスペース何に使うの?と聞かれたときに、即答できなかったりして困ることもありますが・・・
ということで、品川K邸の家作りもまだまだ続きます。大切なことは「ここで生活する」ということに対する眼差しを常に持ち続けることだと考えています。
しかし、そうした工夫満載の設計図を具現化させるのは、容易なことではありません。まさにその神髄ともいえる部分にとりかかろうとすると、往々にして施工業者が「そんな方法はやったことがない」「そんな材料は使ったことがない」と二の足を踏むのです。いくら建築家が私たちの要望を形にしようと知恵を絞って提案してくれても、安全性や耐久性、施工性などを含めて施工業者に納得してもらわなければ工事は進みません。
決断を迫られる私たち施主は、ともすれば「難しい」と主張する施工業者の言に従って諦めてしまいがちです。しかしそこで安易に妥協してしまうと、せっかくの魔法のような設計を台無しにしてしまうかもしれません。
ですから建築家の意図とその効果を良く理解し、一方で施工業者の忠告に耳を傾けながら、両者の主張を最大限に生かした形で「これなら大丈夫だ」と皆が確信できる新たな方法を、粘り強く導き出していく以外にありません。私はそうした吟味を重ねることこそが、満足できる家を手に入れるために最も大切な過程なのだと思います。
熟考を重ね、その都度最善の方法を導き出しながら建てたからこそ、家の中にあるありとあらゆるものに、そこにそうして在ることの必然性が存在し、そこにたどり着いた物語の記憶と共に、すべてを心から慈しむことができるかけがえのない我が家を手に入れることができるのだと思うのです。
・データ
プロジェクトNO.113 品川区K邸(マンション改装) (東京都)
- プロジェクト公開
- 2004年1月9日
- 設計案締め切り
- 2004年5月3日
- 契約
- 2004年4月25日
- 着工
- 2004年7月26日
- 竣工
- 2004年12月10日
- 家族構成
- 夫婦2人
- 計画
- リフォーム
- 敷地
- マンション
- 予算
- 400万円
- 設計
- 一級建築士事務所まんぼう
- 施工
- 大勝建設株式会社
※これはHOUSECO(SuMiKaの前身となるサービス)に掲載された企画記事を転載しています。一部、名称等の表記を変更しています。