建築家と家づくり 好きに暮らそう SuMiKa
住宅・建築メディアインタビュー
2015年10月13日

設計者、職人との家づくりのポイントは「旦那」になること、信頼すること

Vol.03「CONFORT」編集長 多田君枝さん

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コンフォルトは、設計者やデザイナなど「家づくり」に関わる「プロ」に情報を発信する専門誌として1990年に創刊。昨今、関心が高まる「和」の素材にいち早く注目し、「土」「木」などの素材を生かす日本独自のすまいをクローズアップしてきた。細部を写したビジュアルと、住み手とつくり手の織り成す家づくりにまつわるストーリーを紹介し、一般の読者も手に取りやすい、専門誌と一般誌との中立的な存在となっている。「自然素材」を使った家づくりの魅力、そして、家づくりを成功させる秘訣をコンフォルトの編集長・多田君枝さんに伺った。(聞き手:ハウスコ松原)

Q

設計、施工、インテリアなど、「家づくり」にはさまざまな切り口がありますが、「コンフォルト」が重点を置いているテーマは何でしょう?

木材、襖や畳、障子、左官の壁、漆のような、古くから日本の室内に使われてきた素材や、風土に適った家のつくりかたです。そういったものをしっかりと見ていこうというのが、創刊以来変わることなく、コンフォルトのベースにはあります。創刊した当初は、和の素材を取り上げるような雑誌は少なく、反響も大きかったですね。私たち編集側にしても未開拓の分野だったのでおもしろかったんです。

何度も同じテーマで特集を組んでいるものもあるので、よくネタがつきませんねと言われることもあります。だけど、不思議とつきないんですよ。それは、コンフォルトが、いま流通しているものや新しい建築だけを追いかけるのではなく、歴史を遡り、昔はどうだったのかという視点をもっているからでしょうか。そうするとひとつの素材を取り上げてもいろいろな角度から見た編集ができるんです。日本の素材には歴史があります。たとえば畳であれば、平安時代まで遡ることができて、その辿った歴史の中から、今の時代に即した新しい情報やヒントを拾ってきています。

Q

誌面で紹介する家や人は、どのような視点でピックアップしていますか?

設計者のヒントや刺激になるものです。それは設計者の手がけた家や、設計者自身の紹介に限っていません。他の専門誌に比べると、設計者(建築家)のいない住宅も多く載せていると思います。たとえば不定期の連載で「てしおにかける家」というのがありますが、ここでは住んでいる人が自分で建てた家、木工作家が建てた家、自分や職人に頼んで直しながら住んでいる古い家などを紹介します。それも設計者の刺激になるだろうと考えています。

また、設計者以外のつくり手を多く紹介しているのも特徴かもしれません。木工作家、鍛鉄作家、左官の方のような設計者の仲間になってコラボレーションできるような人たちです。昔は大工さん、建具屋さん、畳屋さん、左官屋さんなど、家づくりもつくり手の顔が見えていたと思います。いまは営業マンの顔しかわからないというケースも多いですよね。実際につくる人の顔が見えてこそ、いい家ができるような気がします。住み手が全員と会うのは大変かもしれませんが、せめて工務店や設計者が住み手に成り代わってつくり手と交流を持つ役目を果たせばいいですね。ですから、コンフォルトは設計者とつくり手との情報共有に役立つようなことを提供していきたいと思っているんです。実際に、若手の職人を目指す人や、工芸をやっている人、家具をつくっている人にも読んでいただいていますね。

Q

ハウスコの中でも「左官」のワークショップやイベントの告知をよく見かけるのですが、最近は、「つくり手」や工芸に注目が集まっていますよね。

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そうですね。日本のインテリアを考えていくと、工芸の要素は切り離せません。床柱の素材、落し掛けの素材、天井の様式、細部にわたって格式があり、見方もあり、奥が深くて、膨大で勉強しきれないぐらいです。戦後になってそういう伝統が途絶えていったようにも感じていますが、日本人としては教養のひとつとして身に着けてもいいと思います。

大学を出て、大工になりたい、左官になりたいという話も聞くし、職人を目指す人たちも一定数はいるようです。職人さんっていうと「「頑固」とか「無口」というイメージもあると思いますが、当然ながらひとりひとり違うし、私たちが会う人は魅力的な人が多いです。。腕を持っているのに、可能性がある人も、やる気のある職人さんもいっぱいいるのに、仕事がないというのも現実です。

昔ながらの家づくりは、棟梁がいて、旦那がいて、お互いのものを見る目が試される。職人も腕を振るう。同じ図面を渡しても、人によって仕上がりが異なってくるから、それが手づくりのおもしろさでもありました。工業製品であれば、仕様、サイズ、色を指定すれば同じものができますが。木とか土とか自然素材を使って、手でつくったものは人によって腕にも差があるし、工期、かけるコストなどで微妙に差が出てきますからね。すべての人がそのような家づくりができるとは限りませんが、一つひとつにこだわる人がいてもいいと思いますし、そういう人にはこだわってつくって欲しいです。コンフォルトはそんな人のための雑誌であってもいいかな、そんなにメジャーにならなくても(笑)。

Q

多田さんはどのような家に惹かれますか?

プロポーションがキレイで、陰影がある家でしょうか。真っ白で明るくてポカーンとした家はあまり好きじゃない。家の中に強弱やリズムがあって、ひとりで考えられるスペースがある、そういう家がいいですね。

開口部も、窓が大きく抜けているよりは、少し軒を深めにしてあって、やわらかい光が入ってくるほうが好きです。全部真っ白の壁というのは一瞬かっこよく見えるんだけど、落ち着かないので、少しグレーがかっているぐらいがいいですね。

白と白木ばかりではつまらないですよね。塗ったものもいいんですよ。数奇屋は白木、日本古来の伝統的な家は白木というイメージがあるかもしれませんが、それだけではない。桂離宮だって塗っているんですからね。

Q

建築家と家づくりをする人へのアドバイスがあればお願いします。

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この人は信頼できるなって思える人を見つける、見抜くことです。今までの人生でいろんな人とつきあって、そして信頼できる人が見つかったら、あとはその人のやる気を引き出してあげること、いい仕事をしてもらうために自分はどうしたらいいかを考えることでしょうか。住み手は自分の欲望を突き出しがちですが、そればかりではよい家にはならないと思います。

設計者も職人さんも決して儲かる仕事ではありません。でも好きだからやっている人が多いです。本当はビニールクロスではなくて、ここに和紙が張りたいんだ、それだったら儲からなくてもいいよ、という人もいる。その人がやりたいことを喜んでやってくれたら、結局は住み手側にもはね返ってきます。だからそのやる気に対して、それにかかる数字だけでを見て判断してしまっては、もったいない。やる気を信じることも大切です。

最近は法律も厳しくなり、防火対策、耐震など、家づくりに対して疑心暗鬼になりがちです。チェックポイントがたくさんあって、つくり手も住み手もそのために不自由になっているのではないでしょうか?

お施主さんは、「あとは任せる」って言って、やる気を引き出して「旦那」のような存在でいればいい。任せるって言われたら、普通は、任せられたから好き勝手やろうとは思わないですよね。そこまで言ってくれるのなら頑張らなきゃと思うものです。

Q

多田さんは最近の家づくりの傾向をどのように捉えていらっしゃいますか。

自然素材に関して言うなら、少し前にシックハウスが騒がれて以降、注目されましたが、それがある程度定着し今に至っていると思います。住み手の好みは多様化していて、モダンが好きな人、生活感がない家が好きな人、それぞれが集まるマーケットができています。

今後も多様化、細分化の傾向は続くと見ています。雑誌も家づくりの方法も多様化し、自分の好きなものを探し出したり、出会える機会も増えているとも思います。住み手はもっと個性を出していってもいいのではないでしょうか。

Q

今後のコンフォルトの方向性は?

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じつは、来年の1月で100号になります。その号は別冊もつけて特別編集版になる予定です。それを機に、さらに読者の幅を広げられたらと思っています。日本の室内の素材にこだわった専門誌という基本的なところは継続していきますが、もう少し専門性を高めて、実用的な本にしていきたいですね。そして保存版として長く活用していただきたいです。

次号は「左官」の特集ですが、「左官」にも力を入れていきたいと思います。「土と左官の本」というのも別冊で出版していますが、左官はおもしろいです。お施主さんも、塗っているところをみたら、この壁を大切にしようと思いますよ。昔の人はそういう様子を見ていたから、壁ひとつでも大切にしたんでしょうね。土の壁は一度落として水で溶いてまた塗りなおせるから環境にもいいですし、そういう自然素材のよさも、もっと伝えていきたいと思います。

Q

デザイン住宅はこれから、今にも増して個性的に、そして合理的になっていくのでしょうか?

どこまで行くのでしょうね(笑)。施主も変わってきていて、建築家の奇抜な提案にも順応するようになっていますから。この個性化・合理化が加速するのか、抑制するのか。どちらのベクトルに行くかは予想できませんが、楽しみなところです。

CONFORTとは?

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コンフォルト 2015年 10月 no.146
出版社 建築資料研究社 価格:¥1,714(税別)

1990年に創刊、建築関係者やデザイナ、家づくりに関わる職人をターゲットとする業界専門誌(隔月誌)。木や土など、日本の家に使われる自然素材に対して、さまざまな角度から切り込んだオリジナリティに富む企画・特集と、わかりやすいビジュアルと解説が人気を集める。

※この記事はHOUSECOに2007年6月に掲載されたものを転載しています。

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