昭和54年竣工の入母屋の古屋を店舗併設の民泊へとリノベーションする。古民家ほど古くはないが、良い材料が安く手に入り地方では庶民でも立派な木造が建てられた最後の時代。無節の桧の柱、豪胆な地松の太鼓梁、長スパンの丸太桁は圧巻である。
道路側に店舗を、庭側に民泊を計画し、動線に干渉する柱は抜く。壁は構造用合板で補強、水平剛性は野地板下の母屋間にブレースを設置することで確保している。土壁は十分な断熱性能を保持しているため残し、床下は押出法ポリスチレンフォーム、その他の壁・屋根はグラスウールにて断熱補強する。
どちらの室内も木架構現しを基本とするが、単調な大壁で区切るだけでは2つの用途の前後関係が見えない。そのため民泊側の大壁2.1mから上を店舗側へセットバックさせた。その結果生じたキャットウォーク上部では柱が現しになり、トップライトからの光により架構が美しく浮かび上がる。
隠してこそ美しいとされていた架構を開けっぴろげにするのは、かつての大工からは破廉恥と怒られるかもしれない。しかし、貧弱な建築しか建てられなくなってしまった現代だからこそ、そのマッチョな裸体を大いに見せてほしいと我々は思ってしまうのだ。
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