築96年のS邸は大正時代に地元の大工・石工らによって建てられました。竣工直後の関東大震災にも耐え、現在50代のご夫婦が引き継がれています。
奧様は、設計をご依頼される3年前からずっと決めていらっしゃって時期が来た時にご主人に相談されて当事務所にご連絡いただきました。
先祖から受け継いできたものを大切に遺しつつ、コレクションしている洋風のビンテージ家具や趣味のシュガーアートなどの作品を飾れるように考えて欲しいという想いもあり、初対面当日に契約になりました。
解体後、調査の結果、床下の根太等が古材の再利用で200年以上経っているものだということがわかりました。
間取りの見直しと変更をし、構造的に不具合のあるものは構造事務所と検討し、傾きの補正後、全て補修・取り換えを行いました。
風の通りを阻害していた増築の床を減築し、吹き抜けを作り、窓の配置を変更するなどの工夫を凝らし、風の通りを考えました。光が届かない部分は光井戸を設けることで補って居ます。
今まで、室内でケージ暮らだったワンちゃん2匹の犬専用の部屋を設け、自由に遊べる場所を考えました。
「プレイルーム(犬部屋)」は掃除し易い素材で、夏の暑さ冬の寒さを考えた対策をしています。おもちゃ、ペットフードを収納する棚や、造付けの机ではテレビを見ることも可能です。
室内には土間があり、外から帰宅したら足を洗うこともできます。
居間にいる建て主さんからも、玄関ホールを介してプレイルームにいるワンちゃんたちからも常に姿が見えるようにしています。
開放性が大いにある古民家では冬場の寒さの解消は必須です。
度重なるリフォームで板金やサイディングになってしまったところを剥がし、断熱施工の上、下見板にしました。
また、木が動くことからアルミサッシが開かなくなっていたところが多数ありましたので、アルミサッシのものを全て取り除き、のちのメンテナンスのことも考えて、建具職人さん達による造作でペアガラス木建具に変更しました。
縁側の建具周りは外観のバランスを失わないよう、既存建具の補修を行いました。内側に夏の陽射しを和らげる為に、また冬の寒さや結露を防止する為に猫間障子を新設しました。
デザインや使い勝手などもさることながら、構造補正を優先し、これからあと200年は何もせず、持ってほしいという想いもあって木のこと、材料のこと、職人さん達とチームを組みながら工事着手しました。
木の温もりを感じながら、光と風が透る住まいになりました。
使い易くなった住まいで、近くに住む娘さん達が頻繁に泊りに来たりするようになったとお聞きして嬉しく思って居ます。
冬場の寒さと埃があちらこちらから出て来て掃除がし難い現状から寒さの解消と掃除のし易い住まいということで、寒さ対策については断熱施工や建具を工夫し、掃除については細かな材が全て見えることが古民家の良さでもありますが、天井を付けるなどして手が届かないようなところはなるべく綺麗な状況に保てるようにしました。
冬場、ダウンコートを着なくてはいけないような気温になる部屋だったのが、今は朝起きて、ほんのり温かいとのことです。暖房の効きもよく、薄着で過ごされて居ます。
掃除の為に付けた天井内に設備配管を隠ぺいしたのでスッキリしました。
まだ竣工していない時期に、無垢材が入って来るのを見たり、職人さんの手仕事が現場で見ることができたことに感激して一緒に選ぶ材木ひとつにしてもとても楽しんでいただきました。
朝・夕を奧様やご主人の手料理でご一緒する時間が長く、家族のように一緒に居られたことに感謝しています。
建具職人・家具職人さん達と一緒に
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