神戸六甲山の裾野に広がる緑豊かな住宅地の一角にある。東は住吉川の支流にあたり、夏には涼しい風が吹き上がってくる。この立地を生かすように東西面に大開口の木製引込み窓を開け、風が通り抜ける開放的な空間を計画した。
風致地区である街並みの美観を損ねないよう、傾斜地の多い神戸市ならではの古い既存石積擁壁を残し、隣接する塀を墨入りモルタル仕上げとすることで現況維持と修復に努めた。また外壁は全面米杉板張りとし赤茶色の柿渋を塗装した。
外壁の赤茶色と周辺の木々の緑が織り合い、自然で落ち着きのある外観となっている。
プランは2階建てのワンルームで構成されており、1階をワーキングスペース、2階を居住スペースとし、東西面の大開口の窓からは計画通り心地のいい風が通り抜けてくれる。
また必要に応じカーテンで仕切ることで個室としても使用可能である。
室内の仕上げは1階床を墨入りモルタル、2階床をメルバウ無垢フローリング蜜蝋仕上げ、1・2階共通で壁は紙クロス、天井は米松の梁と針葉樹合板のあらわしとした。いずれもメンテナンスが必要な材料だが、時間と伴に経年変化していき、味わい深い素材感を楽しんでいくことができる。
据え置き家具は、無垢の木材のみならず、黒皮鉄板・ラワン合板・シナ合板といった工業製品で製作した。切断面を切りっ放しにするなど素材を生かすデザインにすることでソリッド感のある正直な家具に仕上がった。
木漏れ日の中に包まれ風が通り抜ける、シンプルで正直な心地のよい住宅である。
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