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記事作成・更新日: 2016年 7月29日

最近よく聞く「セルフリノベーション」って何?家って、どこまで自分でつくれるの!?セルフリノベーションのメリット・デメリット

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ゲストハウス 横浜・野毛(Lods|一級建築士事務所)

あなたは、自分の手で家を建ててみたいと思ったことはありませんか?
家は人生の多くの時間を過ごす特別な場所。だからこそ、つくることに私たちは憧れてしまうのかもしれません。

ところで、あなたは「家を建てるなら専門家に頼まないといけない」と思っていませんか?

それは必ずしも正解とはいえません。なぜなら、小屋のような小さい家ならば自分たちで建てることもできますし、リノベーションならある程度は自分で行うこともできるからです。

部屋や家を、自分の手でも自分の好きな形につくり変えられるとしたら素敵だと思いませんか?この記事では、近年注目を集めている「セルフリノベーション」のメリットとデメリットをご紹介します。

セルフリノベーションとは、「設計」「施工」「仕上げ」を自分の手で行うこと

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Self-Renovation/藤木の家(川﨑義則設計所)

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Self-Renovation/藤木の家(川﨑義則設計所)

セルフリノベーションとは、大工さんや内装業者さんの手を借りずに、自らリノベーションを行う方法のこと。この記事に使われている写真もすべてセルフリノベーションで建てられたものです。

リノベーションは大きく分けて以下の3つの工程に分けられます。

・間取りやデザインの「設計」
・建材を加工し、組み立てる「施工」
・塗装やタイル貼りなどの「仕上げ」

セルフリノベーションは、これらの工程の全てを自分の手で行うこともできますし、予算や時間に合わせて、一部の工程をプロに依頼して行うこともできます。

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写真提供:ゲストハウスFUTARENO

設計:Lods 一級建築士事務所

セルフリノベーションの魅力は、予算や時間、目的に合わせ、自分の好きなレベルでDIYを楽しめる点にあります。

棚をつくったり、壁紙を張り替えたりするだけでなく、床材を張り替える、壁を抜いて空間を広くする、なんてこともできてしまうのです。

DIYの楽しさは、手を動かすことで何かが生まれる過程を経験できること。最初は苦労するかもれませんが、そうやって家や空間が完成した時には、愛着を感じることができるはずです。

セルフリノベーションのメリット・デメリット

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ゲストハウス 横浜・野毛(Lods|一級建築士事務所)

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ゲストハウス 横浜・野毛(Lods|一級建築士事務所)

自ら施工を行うセルフリノベーションは、設計士や内装業者さんなどのプロに依頼する場合に比べて、いくつかのメリットやデメリットがあります。

<メリット>

・内装業者さんに頼むより、費用を抑えることができる
業者さんにリノベーションを依頼した場合、木材やペンキ代などの「材料費」、作業をする職人さんの「人件費」、業者さんや設計士に支払われる「設計費用」がかかります。

セルフリノベーションを選べば、「人件費」と「設計費用」の費用がかかりません。これら2つの費用は高額になることも多いので、場合によっては数百万円の費用を節約することも可能です。

・DIYの技術や知識を身につけることができる
自ら設計や施工を行えば、建材や工具の扱い方を身につけることができます。技術を身につければ、再びリノベーションを行う時に応用することができるのです。

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写真提供:ゲストハウスFUTARENO

設計:Lods 一級建築士事務所

<デメリット>

・時間や体力が必要
セルフリノベーションには、多くの時間と体力が必要です。

通常、マンションのリノベーションを行う場合、1〜1.5ヶ月で工事は完了しますが、セルフリノベーションの場合、毎日作業をしても2〜4ヶ月、長い場合には半年以上の時間がかかります。休日のみ作業をした場合は、より多くの期間がかかるでしょう。

もし賃貸物件をリノベーションしているのならば、工事期間中は家賃がかかり続けます。また、工事現場では重い木材や建材を扱う必要があり、1日に6〜8時間施工を行うこともあるので、ある程度の体力も必要です。

・時には誰かの協力が必要なことも
リノベーションをしていると、重い木材や、ガラス戸など、重いものや大きなものを運んだり、固定したりする状況が起きることもあります。

ひとりでは全ての作業を行えないこともあるので、時には人手を借りる必要があります。

・怪我をする恐れがある
施工中は電動ドライバーや、ノコギリなど、扱いを間違えると危険な道具を扱うことがあります。工具を誤って体に当ててしまったり、木のささくれが手に刺さったりするなど、小さい怪我はもちろん、大きな怪我を負ってしまうこともあるでしょう。

・大規模なリノベーションには、建築基準法の知識が必要なことも
柱や壁、階段などを加工する、大規模な修繕や改築には、建築基準法上、役所に確認申請をとる必要があります。

建築基準法には、建物の敷地や構造、設備、用途に関する最低限の基準が定められており、基準に沿わない場合、施工の停止や、使用禁止、最悪の場合、建物の解体などの行政命令を受けることがあります。

建築のプロでない人が、建築方の細かい基準を理解するのは難しいでしょう。リノベーションだけでなく、まだ、法の整備が追いついていない小屋を建てる時なども、プロに手伝ってもらいながら施工を進める方が無難です。

時にはプロとの連携も必要

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Self-Renovation/藤木の家(川﨑義則設計所)

上記のメリット、デメリットを踏まえると、リノベーションを全て自分の手で行うことが必ずしもメリットになるとは言えません。

「自分が過ごす空間を自分の手でつくってみたい」「施工やDIYの技術を身に付けたい」「リノベーション費用を抑えたい」という強い意思と目的がなければ、職人さんや設計士などのプロに工程の一部、もしくはすべてを頼んでしまうのも良いかもしれません。

たとえば、デザインにはこだわりたいから、設計図を設計士に頼む。費用を抑えるために、職人さんの施工を手伝う。職人さんを雇い、技術を教えてもらいながら施工する。など、様々な方法を選ぶことができます。

近年ではセルフリノベーションを希望する施主さんも多いので、柔軟に対応してくれる設計士さんや内装業者さんも多いはず。どのように関わることができそうか、まずはプロに相談してみるのがおすすめです。

セルフリノベーションの三種の神器

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ゲストハウス 横浜・野毛(Lods|一級建築士事務所)

もし、自分でリノベーションをする、もしくはリノベーションに多少なりとも関わるならば、必要な道具は何でしょうか?施工の目的によって様々ですが、基本的には以下の道具を揃えておくと便利でしょう。

・インパクトドライバー
電動のドライバーで、機種によっては簡単に穴を開けることができます。リノベーションの最中は木材を固定するためにビスを打つことが多いので、必須の道具です。

コード付きのものと、バッテリー式のものがあり、コード付きは比較的安価でパワーが落ちない反面、コードが届く範囲までしか使えません。一方、バッテリー式は、どこでも使える反面、少し高価でバッテリーが切れると施工が進まなくなってしまいます。

・電動ノコギリ
木材を使う場合、役に立つのが電動ノコギリです。ノコギリを使ってもいいのですが、太い木材を切る時には時間も体力も必要になります。

電動ノコギリは手で持って使えるハンディタイプのものと、据え置き型のものがありますが、小規模なリノベーションならば、おすすめはハンディタイプのもの。電動ノコギリは強力な分、怪我をしやすいので、扱う際は説明書などをよく読み注意しましょう。

・ゴム引き手袋
木のささくれや金属片など、施工現場には怪我の原因になるものが数多くあります。特に危ないのが手です。また、塗料を使うこともあるため、手が汚れる恐れもあります。作業中は必ず手袋をはめるようにしましょう。

おすすめは、ゴム引きの手袋。ゴムでコーティングされているので、重い建材も持ちやすく、滑ることがありません。

このほか、壁を塗る場合や、床を張り替える場合など、施工の目的によってその都度必要なものが出てきます。使う道具が分からない場合は、ホームセンターの店員さんに施工内容を伝えて相談してみると良いでしょう。

終わりがない世界へようこそ

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ゲストハウス 横浜・野毛(Lods|一級建築士事務所)

実は、この記事でご紹介したことはセルフリノベーションのほんの一例です。

というのも、ただ単に組み立てるだけではなく、いかにきれいに施工するか、いかに早く施工するかなど、こだわり始めると終わりがない世界だからです。

やり始めたら最後、きっと自分の手を動かすほどに、「次はもっとこうしたい」という欲が出てくることでしょう。それがセルフリノベーションの面白さであり、同時にコワいところでもあるのです。

まずは、きっちり仕上げる必要がある箇所はプロに任せ、遊べる部分は自分でやってみる。そんなバランスで家づくりに関わってみてはいかがでしょう?

少しずつ工具を揃えながら、欲しい場所に棚を設置してみるなど、小さな部分からDIYに向き合ってみるといいかもしれませんね。

Text 鈴木雅矩

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