リビングダイニングをオープンな8 つの小部屋で取り囲んだ大胆な間取り。自由に想像を膨らませてつくり変えていく、楽しみの尽きない住まいが完成。
text_ Makiko Hoshino photograph_ Osamu Kurihara
柏の家
(千葉県柏市)
- 設計
- 山﨑健太郎デザインワークショップ
- 住人データ
- 健二さん(30代)会社員、由美子さん(30代)主婦、心結(こころ)ちゃん
部屋の使い方が最初から決められている、よくある間取りの住宅に違和感があったんです。どうせ建てるなら、他に見たこともないようなオリジナリティのある家にしたいと思いました
と話す施主の戸田健二さん。2年前に千葉県の住宅地に新築した住まいは、まさにこれまでの家の概念を打ち破る造りだ。室内に一歩入ると広がるのは、吹き抜けの大空間。そのまわりを2階建ての4棟で囲っている。8つある小部屋は、キッチンと寝室、バスルーム以外、完全なフリースペース。今は奥さまの由美子さんのアトリエ、健二さんの趣味部屋、洋服の収納スペースなどにしているが、将来、子ども部屋にしてもよし、手作りの作品を飾るギャラリーやゲストルームにしてもよし。発想次第で可能性は無限に広がっている。
設計を試みた建築家の山﨑健太郎さんが、「未完の家」と名付けるこの住まい。
暮らしの変化を柔軟に受けとめる”余白”をつくることで、施主が楽しみながら住まいを変えていけるようにしました(山﨑さん)
ご夫妻と同じように、”型にとらわれない家”への思いを抱えていたため、自然と意気投合。2年もの歳月をかけて話し合いを重ねた末、このユニークな形に辿り着いた。
8つある部屋の壁を取り払ったことも、大きなポイントだ。
どの部屋にいても見晴らしがよく、家族の顔が見えます。思い思いのことをしながらも、孤立せずにいられるのがいいですね(由美子さん)
1階は各部屋がリビングダイニングと直結しているため、主要動線であるバスルームと寝室への移動がスムーズ。ワンルームで暮らすかのように、ストレスなく生活できる。
「のびやかで気持ちのいい空間にしたい」というのも、ご夫妻の条件だった。そのために山﨑さんが配慮したのは、窓の配置と大きさだ。4棟の2階建て構造物の間には、天井まである大きな窓を設置。陽光がたっぷり差し込むようにした。吹き抜けと視線の抜けるオープンな8つの小部屋との相乗効果で、広がりが生まれている。建築面積は約20坪と決して広くはないのに開放感があるのは、この工夫があるからだ。
家で過ごすことが格段に多くなったというご夫妻。イメージを膨らませる楽しさと可能性を秘めたクリエイティブな住まいに大満足している。
専門家プロフィール
1976年千葉県生まれ。2002年工学院大学大学院建築学専攻修了。2008年山﨑健太郎デザインワークショップ設立。2014年工学院大学非常勤講師。2015年日本建築学会作品選集新人賞受賞。2015年AR Emerging Architecture Awards(ロンドン)。2015年グッドデザイン賞 + 未来づくりデザイン賞。
山﨑健太郎デザインワークショップ
- 住所
- 東京都中央区東日本橋3・12・7鈴森ビル4F
- TEL
- 03・6661・9898
- FAX
- 03・6661・9899
- URL
- ykdw.org
〈物件名〉柏の家〈所在地〉千葉県柏市〈居住者構成〉夫婦+ 子供1 人〈用途地域〉第1種低層住宅住居専用地域〈建物規模〉地上2 階建て〈主要構造〉木造〈敷地面積〉181.20㎡〈建築面積〉69.59㎡〈床面積〉1 階 67.515㎡、2 階 39.258㎡、合計106.77㎡〈建蔽率〉38.41%(許容60%)〈容積率〉58.92%( 許容150%)〈設計〉山﨑健太郎デザインワークショップ〈施工〉べステック・オフィス〈構造設計〉田畠隆志+ 田畑 孝幸/ ASD 〈設計期間〉14 ヶ月〈工事期間〉6 ヶ月〈竣工〉2013 年
※この記事はLiVES Vol.79に掲載されたものを転載しています。
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