LDK と洗濯室は別々。浴室と玄関だけ共有する部分分離型。吹き抜けや階段で立体的に空間をつなげ、開放感と関係性を生み出す。
text_ Yasuko Murata photograph_ Osamu Kurihara
通町の家
(群馬県高崎市)
- 設計
- 小阿瀬直建築設計事務所[SNARK]+OUVI
- 住人データ
- 夫(36歳)会社員、妻(34歳)会社員、長女(0歳)、母(66歳)
コンパクトな敷地に建つ、建坪13坪の木造3階建て。9ヶ月のお子さまを持つAさんご夫妻と、ご主人のお母さまが暮らす二世帯住宅だ。共通の玄関を入ると、1階にはキッチンを備えるお母さまの部屋と、共用の浴室。2階と3階にAさんご家族の空間がある。
二世帯をすごく近いお隣さんのようにできればいいなと思って、お母さまの部屋はワンルームマンション、A さんの住まいは一軒家を建てるような感覚で設計しました。その上で玄関、階段、通路などは大きめにつくり、広く感じられることを最優先に考えました
そう話すのは設計者の小阿瀬直さん。限りある面積の中で、LDKとトイレ、洗濯スペースをそれぞれの世帯に設ける、部分分離型とした。さらに、中央に設けた階段と吹き抜けで1階から3階までをつなぎ、世帯間のプライバシーを確保しながら、声や気配が通じ合う距離感をつくり出している。
この家の敷地は、高崎駅に近い繁華街にあり、もともとはご主人の祖父母の家が建っていた。お母さまにとっては実家だったその家は、築50年以上の木造2階建てで、暗くて狭い雰囲気だったという。
昔の家の印象が強かったので、明るく風通しの良い家にしたかった。完成してみると広々として開放的で、そのギャップに驚きました。全体がつながっているのですが、3階に書斎というもう一つの居場所をつくることができ、想像以上に広がりのある家となりました(ご主人)
空間の中に、必要な要素をコンパクトに収める工夫もある。2階の子ども室と3階の寝室をミニマムな個室とし、それ以外にワンルーム状のLDKと吹き抜けでつながる書斎を配した。洗面はオープンにして、キッチンのワークトップと一体型に。3階の寝室へ向かう通路の壁に収納をまとめたことも、省スペースに貢献している。
階段で空間を切り分けています。設備や収納など、固定しなくてはいけない機能的なものは西側の壁にまとめ、階段を境目としてリビングとダイニングのシンプルさと広さを強調しました(小阿瀬さん)
Aさんご家族の食卓には、料理好きなお母さまが、毎日のようにお鍋を持って差し入れに来るという。理想的な〝スープの冷めない〞距離を叶えた二世帯住宅だ。
専門家プロフィール
1981年生まれ。2008年 小阿瀬直建築設計事務所[SNARK]設立。住宅、集合住宅の建築設計から内装、プロダクトまで幅広くものづくりを手掛ける。群馬県内と東京都内で活動中。
小阿瀬直建築設計事務所[SNARK]
- 住所
- 群馬県高崎市田町53・2 2F
- TEL
- 027・384・2268
- info@su-70.jp
- URL
- www.snark.cc
〈物件名〉通町の家〈所在地〉群馬県高崎市〈居住者構成〉母+夫婦+子供1人〈用途地域〉商業地域(準防火地域)〈建物規模〉地上3階建て〈主要構造〉木造(準耐火)〈敷地面積〉83.17 ㎡〈建築面積〉44.99㎡〈床面積〉1階 43.32㎡、2階 41.63㎡、3階23.64 ㎡、合計108.59 ㎡〈建蔽率〉54.09%(許容80%)〈容積率〉130.56%(許容240%)〈設計〉小阿瀬直建築設計事務所[SNARK]+ OUVI〈施工〉宮下工業〈構造設計〉OUVI〈設計期間〉12ヶ月〈工事期間〉8ヶ月〈竣工〉2014年〈総工費〉2,500万円
※この記事はLiVES Vol.79に掲載されたものを転載しています。
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